富士山眺望阻害の最も大きな要因は、富士山眺望軸上に屹立する建設物のボリュームであり、高さである。主要幹線沿いの高容積率指定区域において、主として中高層マンションの建設が行われており、この沿道は指定容積率も500−600%となっている。また、諏訪台からの距離と、建設物の建つ標高地点によっても影響が異なり、一律な都市計画規制と即地的な距離およぴ標高地点との組み合わせに依存する。
眺望保全は都市計画の目標として十分成立可能な内容を持つと考えられるが、直接的にこのような規制を行う都市計画制度は存在していない。特に富士山眺望のように、水平視角範囲内を地域地区制度のなかで位置づける方策はない。諏訪台から 3km ほど離れた本郷通りの場合、最も眺望阻害の可能性が高いこと、およびある程度の広がりをもった範囲が水平視角範囲内になっているため、地区計画により高さの最高限度を定めることは可能と考えられる。しかし、地区計画の規制一本槍では地元の理解を待ることは困難と考えられる。同様に、都市計画決定の手続きのなかで富士山眺望のための規制で相当厳しい規制をかけることについて、審議会等ないしは審議会に持っていくまでの部内において説明の論理か明解に立てられる必要がある。公平な自己実現の確保に関する保障を伴っていない規制は、富士山眺望のコンセンサスが広範に得られている状況ではじめて可能になるものと想定される。その場合でも、補助事業や各種助成措置によって、厳しい制限を緩和する方策が用意される必要があると考えられる。