○荒川区
・前区長がしきりに「山(=高み:筆者注)が欲しい」と言っていた。荒川区は景観上あまり明確なイメージがない。
・「日暮里富士見坂」が本当に唯一残っているものだとは、良くは知らなかった。区でも各種報告で一応取り上げてはいるが、大事にすると言う理念的な段階にとどまる。
・荒川区だけが直接利益を受けるような形になるので、区から文京区には積極的には言いにくい面がある。こうした中立的な立場からの活動は区としても結構なことと考える。
・富士見坂の研究成果が纏まったら文京区に働き掛けて、文京区のなかでシンボジウムのようなものをやったらどうか。
・都レベルでの動きもあると良い。
できれば何か行動を起こしたい。荒川区だけではなく東京都全体の貴重な財産ということで、区議会に富士見坂眺望保全の請願を出す用意をしている。採択されれば東京都に働き掛けてゆく。ただ、東京都の景観条例は大きなくくりであって、富士見坂のような場合がどこまで対象となるのか。
・こうした住民の説得のためにも富士見坂のことを広く一般に知らせておくことが必要で、荒川区広報の作業などを早めに進めておいた方が良い。先ず荒川区報レベルで取り上げ、地元の反応などの様子を見ながら、三大紙等マスメディアに流してゆくというように段階的に行うのが良いだろう。
○台東区
・保全のために制限をかけることになれば、住民がどこまで納得・合意するかが問題。富士山が見えるということにどこまで価値を見出だせるか。
・ヴィスタが通るところは通常なら低層のまま推移する場所だから、そのままにしていればいいのかも知れないが、すずらん通りが問題になれぱ最終的に地域に話しは伝わる。
・よみせ通り沿道は、地城の居住環境からみて高層建築は適さず、基本的には中低層が相応しいといえる。建て替えの際、敷地が大きくならなければ、実際には日照その他で4・5階どまりではないか。
・実際は、文京の不忍通り・本郷通りの問題が困難だろう。
・実際に窓口となる立場からすれば具体的な高さの限度が明らかになっていないと困るが、現段階では正確な測量に基くものでなくとも高さについて何パターンか出ていれば良いのではないか。
・荒川区は、保全ということで富士見坂の位置付けをより鮮明にしてくれたほうが協カしやすい。
・荒川区が保全活動の後援をするということになれぱ、周囲も便宜を図ろうと言うことになり、マスコミも乗り易くなるだろう。
・荒川区で請願が採択されたとしても、荒川区のために台東区を規制するのかという意見は出てくるだろう。
・世論を盛り上げて、建てる側が何となく建てづらくなるような雰囲気に持って行くという方法はある。
・特に危ない場所を一坪地主とかナショナル・トラストみたいに買い上げる。土地そのものを買えない場合でも容積を部分的に買い取り、これを契機に世論を喚起するというのも有り得る。
○文京区
・区としても景観上「地形」の尊重・「坂」からの眺望の大切さを謳っているが、主に坂下までの範囲であり、このスケールは視野にはなかった。
・景観法令だけで高さの規制というのは難しいが、行政指導等、現状で可能な範囲で保全の方向で考えてゆきたい。景観については、区景観条例制定・事前協議制度の導入・景観ガイドライン作成等を検討中である。
・景観条例は98.12制定、99.7施行の予定で、条例の景観重要建築物等という項目に拠れば景観資源を守るための中高層建築の事前協議など指導がやりやすくなる(制定されると施行前でも説明会などを行うため、ある程度は効果が生じる)。現在、区の計画的観点からの指導に対して、地域当事者は概ね協カ的であるが、離れた荒川区の地点のためにどこまで協力してくれるかということになると、予測は難しい。
・景観条例は強制的なものとは異なるが、この富士山への眺望軸について、文京区のほうで保全すべきものとしてきちんと位置づけができれば、一般の中高層以外の特別中高層建築物のようなものとして濃密に事前の協議が取れるかも知れない。そのためには、荒川区だけでなくて広く人々が共有する財産だから文京区としても残してゆきたいという考えに立つ必要がある。
・木密事業(木造密集地域における居住環境改良事業)などの対象地域と重なるのであれぱ、用地買収してコミュニティ住宅にするというのも考えられる。
・文京区の人にももっと知ってもらうため、まちなみウオッチングなどの際に富士見坂にいくということはできる。
○三区共通
・地域的、場所的に地区計画等の規制をかけても違和感のないところならいいが、不忍通りのような幹線道路沿いを5,6階に低く押さえる、しかも全域にかけるのではなくヴィスタ付近だけというのはなかなか合意をとるのが難しい。
・指導要網では最終的な強制力がなく、弱い。
※ 各区により、富士見坂の眺望保全に対し積極的、協力的な検討・提言が行われた。現行制度上、困難であることを承知の上で、このような意見交換ができたことは今後の保全活動に際し、非常に有意義である。
数回にわたる意見交換会の席上では、この他富士見坂に関わる事例、例えぱ高層建築が出来ることに対する周辺住民の反応などについて、各区での様子等も話し合われた。殊に、富士見坂に近い台東区谷中三崎坂における、高層マンションの建設計画に際し、寺町の景観破壊であるとする、住民の反対運動の行方は、富士見坂の保全にも影響が大きく、注目してゆかなければならない。
三区及び研究者によるこの意見交換会は、今後も保全の実現に向け定期的に開催してゆくことで合意を得ている。