アンケート

ア)第1回アンケート調査  調査日 1993年12月3日 調査者 千葉・水田・岩佐

・対象地域

・アンケート結果(回収率・属性以外は富士見坂に関わる箇所の抜枠〉
○回収率36.0% (回収72/配布200)
A 34.3%(回収12/配布35)
B 35.3%(回収30/配布85)
C 37.5%(回収30/配布80)

○属性

□職業

会社員 公務員 自営業 画家 教員 主婦 学生 自由業 無職 無回答
A(崖下) 1 0 4 0 1 3 2 0 1 0
B(尾根道沿い) 4 2 4 1 0 6 1 4 5 3
C(坂下) 1 0 5 0 1 7 0 1 6 9
合計 6 2 13 1 2 16 3 5 12 12

□居住年数

  10年未満 10〜19年 20〜29年 30〜39年 40〜49年 50年以上 先祖から 無回答
A(崖下) 3 0 1 1 6 0 1 0
B(尾根道沿い) 4 5 1 7 5 4 1 3
C(坂下) 2 3 0 4 7 8 3 3
合計 9 8 2 12 18 12 5 6

□年齢

  10〜19才 20〜29才 30〜39才 40〜49才 50〜59才 60〜69才 70才以上 無回答
A(崖下) 1 2 0 2 4 2 1 0
B(尾根道沿い) 0 2 3 2 6 11 4 2
C(坂下) 0 0 4 4 5 8 6 3
合計 1 4 7 8 15 21 11 5

□性別

  無回答
A(崖下) 5 7 0
B(尾根道沿い) 17 12 1
C(坂下) 9 18 3
合計 31 37 4

<訪れる頻度>

問. 「富士見坂」をどのくらいの割合で訪れますか(または通りますか)。

□ 1.ほとんど毎日 2.週に1,2回 3.月に1,2回 4.ぽとんど行かない 5.富士見坂を知らない

□ 1〜3.とお答えの方、どのような時、どのような目的でそこを訪れますか。

□散歩の途中/通勤・通学(駅へ行く)途中/富士山を見に行く・写真を撮る/近所だから/買い物の途中/町内の連絡・他家の訪問/バイク・車で通る/仕事の都合で/自宅が富士見坂を見渡せる場戸にある/長寿会/帰宅時
・富士山が望める地というのがマンション購入の大きな決め手(富士見坂マンション住人)
・富士山が見えたら毎日散歩
・ラジオ体操の帰りに、今日は富士山が見えるかしらと眺めるのが楽しみ
・早朝空気がすんでいるときなど、富士山が見えそうな時に行きたくなる
・目的のあるなしに関わらず、谷中周辺は静かな寺町で、外人を案内したり散歩したりするのによいところだったが、周りにふさわしくないビルがふえすぎた。

<風景との関わり>

問. 富士山が見えるかどうか気になりますか。
  1.気になる 2.たまに気になる 3.ほとんど気にならない

※富士見坂からの風景、特に富士山に関心のある人は多く、全体の9割近くの人が宮士山が見えるかどうか気になると回答している。

<風景を見て感じること>

問. 「富士見坂」からの風景を見てどのように感じますか。あなたの感覚に近いものの数字に○をおつけください。また、それについて特に理由があれば( )内にお書きください。

<解放感>

理由
1(古い町並みを見られる・高い建物が少ない・高台から山の手の風景・中心に富士山・冬季の雪富士・風の吹く晴れた日の富士・視界が広々)
2(坂上・高低の差が大きい・広々としている・遠く富士がみられる)
3(広々とした空間・遠方まで見られる・タ日が美しい・遠望が狭まった・邪魔な建物がある・ビルが多い・一方が赤煉瓦塀、他方は桜並木)
4(ビルが多く見える・周囲が建物ばかり)
5(高層ビルが増えてきた・道幅が狭い)
6(高層ビルの連立・富士山が影になってきた)
7(せせこましい・不忍通りのビルの乱立)

※「解放感を感じる」と答えた人は68.1%で、その多くは、理由として「視界が開けている」ことをあげている。諏方神社からの風景に比べると目の前に広がる空間は狭いが、「高低の差があること」「遠方まで見られること」が、一つの大きな要因にはなるようである。また、「富士山」を「風の吹く晴れた日の」「山の手の風景の中心に」など、大きな風景の中でとらえているのも印象的であった。「解放感を感じない」・「閉塞感を感じる」と答えた人の多くは、高層ビルの連立によって風景が狭まってきた」ことを指摘している。ここでも、「やや解放感を感じる」と答えている人の中にも、相対的な解放感の滅少をあげている人が見られた。

<地形の感受>

問. 地形のうねり(一度下がってまた上がっている)を感じますか。
 1.非常に感じる 2.かなり感じる 3.やや感じる 4.感じない

※地形のうねりを感じている人は84%でかなり多いと言えるが、感じないという回答も少なからず見られた。

<富士見坂への親近感>

問. 自分の町、または親しみのある地域の風景と感じますか
 1.非常に感じる 2.かなり感じる 3.やや感じる 4.感じない

1.(富士山を望む坂としての感激・朝な夕なに富士を望み、静かでこんないい所はない・ほかにこういうところは少ない・60年も住んでいるので外から帰るとホットする・富士は子供の頃から変わっていない・越してきたときの富士(いつでも良く見えた)のため・生まれ育った場所・夫の親(仏画家の笹島月山)が住んでいた・静か・谷中を始め文京方面が見える・風景も住民も自然体・先住民の古い歴史の上にある・赤煉瓦塀、桜並木が写生の対象となる)
2.(古い煉瓦塀など昔を感じる・人情がある・桜や新緑が楽しみ・子供の頃から慣れ親しんでいる風景)
3.(ふるさととして愛着をもてないのは寂しい・高層ビルが良く見え、不思議な感じ)
4.(昔のような壮重な雰囲気が失われた・ホコリっぽく雑である・(戦前を知る者として)情緒がなくなった)

※高層ビルの連立に不快感を覚えながらも、この風景に愛着を感じている人は多い。「非常に感じる」が29%、「かなり感じる」が31%、「やや感じる」が28%であった。「諏方神社」からの風景に比ベ、ずっと変わらないものとして「富士山」があることは、風景に対する愛着に大きな影響を与えていると考えられる。また、坂の周辺の小さなスケールでの「煉瓦塀」「桜」といった風景も、親しみのある風景の一部となっている。

<何を見ているか>

問. 「富士見坂」からの風景で、特に目にとまるもの、印象深い風景がありましたらお書きください。

1.物理的に目だつもの
・高層ビルが一種異様な感じ、狭苦しい
・高いビルが立ち並んで景色がよく見えない
・マンション群が壁のよう
・建設中のビルのクレーン
・サンシャインが気になる
・空が濁っている

2.個人的な感情移入・昔の思い出
・特に風景を意識して見ないが、富士山が見えるか関心がある
・富士山より他に目当てない
・真冬の白い富士
・冠雪の富士山に朝日が当たり輝くお山を見ると、その日一日良いことがありそう
・タ焼けの中の黒富士は心がなごむ
・富士山が見えるときは家の三階へ行き、物思いにふける
・タ焼けの富士山のシルエット、刻々と色が変化する
・強風のあと夕焼けが美しい。空のいろをみている。きもの(?)には自然のいろが映える
・雨上がりの天気の朝の富士
・街の彼方にくっきりと朝富士、タ富士のそびえ立つ風景がいちばん
・太陽が富士の真上に落ちた時頂上から光が差し、印象に残っている
・建物の中からではなく自然の状態の中で富士が見られる
・富士山が見えると安堵する
・下っている坂と富士山がよいバランス
・昔は、晴れた日は毎日富士山が見えた
・雲一つないときの空の下の富士山(昔)
・まだ邪魔な建物ができる前、冬の日の朝の富士山
・ひと昔前の下町の面影が残っている
・沈む太陽
・タ焼け
・稲妻
・タ焼けの千駄木方面の陰影とくぼみの明るさの対比
・本郷台の緑、「大名銀杏」の色づきが楽しみ
・対向の文京区
・屋根と夕日または夕方の空模様は日本画の景色のようだったが今は違う
・心暖まる家並み
・都会とは思えない静かさを感じる
・古い煉瓦塀に愛着を感じる
・春のボタン桜
・初夏の若葉
・秋の豆柿の実
・お寺と森
・ちょうど富士山をふさぐような場所に建てられた高層ビルのデリカシーの欠如
・あと一本で富士山がみられなくなる

※非常に多くの記述が見られた。多くの人がここからの風景を目に焼き付けているようである。しかも、手前の「煉瓦塀」や「桜」から、「眼下の家並み」「谷を挟んだ向こう側の斜面地の大名銀杏」やその「地形のうねり」、そして「空をバックにした富士山」と、いくつものスケールで風景をとらえている。それは、「下っている坂と富士山がよいバランス」という意見にも表れている。また、それぞれの描写、特に富士山に関するものが克明であり、その風景を見て「心がなごむ」「物思いにふける」というように、感覚の部分にまで深く入り込んできている。不忍通り沿いの高層マンションは、そのちようど間に立ちはだかるものとして、目に止まるのである。

<風景の変化についての是非>

問. 「富士見坂」は、都内では富士山の見える唯一の富士見坂であると言われていますが、近年、不忍通り沿いの建物の高層化によって、富士山が見えにくくなっています。見晴らしが利かなくなってきていることについてどう思いますか

1.できればこの風景を残してほしい 2.やむを得ない 3.どうも思わない 4.その他

・絶対に残して欲しい。熱こもってます
・残念だ、都市計画の無能、不忍通りの高さ制限

「やむを得ない」と答えながら、「富士山が見えなくなる建物は絶対建てないこと」と書いている人もあった。

問. 風景がどのように変わったと感じますか。いくつでもお書きください。

@否定的、嫌悪感
・高層ビルが増えた(新宿、池袋、不忍通り沿い)
・空気が悪くなった(富士山が見える回数が減った)
・排気ガスで空が濁っている
・爽快感がなくなった
・富士山がビルの間から見える
・富士の裾が短くなった
・眺望が狭くなった、空間がなく狭苦しい
・コンクリートジャングルの町に変身
・家並みもビルに変わり、2階建てが3階4階建てになり広い通り沿いはぽとんどビルとなり、冷たさを感じる
・木が少なくなり、ビルが建ち並んでいる、瓦屋根の家がなくなり、でこぼこになった
・ゴチャゴチャしていや
・高層のため風景とマッチしない
・不忍通り沿いの高層建築が増し、形も不統一、風景といわれるようなものではない

Aノスタルジー
・富士山が遠くなった
・緑が減った
・煉瓦塀が半分コンクリートになった
・寺町の情緒が薄れた
・趣きがなくなった
・富士見坂マンションが建ち、坂の上から桜が見えなくなった
・雪の日に子供がそり遊びをする風景が見られなくなった
・本郷の尾根に日が入るまで家から見えたが、ビルラッシュで見えなくなった。 日暮れが早く感じられる
・須藤公園の緑、大銀杏が見えなくなった

Bまちなみ、都市開発に対する意識
・町全体の設計がされていない
・不忍通り沿いのビル建設を規制すべき
・眺望権を世論で制限して(認めて?)欲しい

Cその他
・本郷、白山あたりにビルが増え、富士見坂付近でも富士山が見える場所が少なくなった
・タ焼けダンダンから富士山が見えなくなったのは残念
・同じような地形で、七面坂があり、30〜35年前、冬の登校時によく富士山を見た
・富士見坂の幅でしか富士山がみられなくなったのは残念
・約30年前、第一日暮里小学校の正門に建つと富士山がはっきり見えた
・諏方神社の前からも富士山が見えた
・富士見坂から富士山が消えていく現実を考えてほしい。必ずしも高層ビルを建てることが良いとは思わない。日本人であるなら富士を見て心がなごむとかホッとするとかの思いがある。むしろ昔のようなせいせいする美しい風景とはあまり違ってしまったので、もっとも悪い例として、いろんな人たちに見せるべきでしょう。そういう意味でうす汚い今の風景を残したら如何ですか(詩人)
・都市にいて富士山を見るのはぜいたくだと思う。見晴らしが利かなくなっていることはやむを得ない
・富士見坂の名前が近所でも良く知られるようになったのはこの10年程のこと
・前は筑波山が見え、東の日の出、西の日の入りまで見えた。今は見えないが、尾根にあるので双方が見える貴重なところ
・不忍通りを都電が走るのが家の二階から見え、のんびりゆったりしていた
・他所に比べて変化は緩やか、自分の体を傾けて富士を見る感じ(画家)
・ここ5年ほどは余り大きな変化はない
・富士見坂からの眺望は、みえる景色があまり心が落ちつくという類ではないが、空間が広がっているという点(空が広くみえる)でよい

※「煉瓦塀が半分コンクリートになった」「本郷台地の須藤公園の緑が見えなくなった」「富士山の裾が短くなった」というように、「印象深い風景」の中であがっていたものが、それぞれのスケールにおいて脅かされている印象を受ける。そして、全体としては「高層のため風景とマッチしない」「コンクリ一トジャングルの町に変身」という、風景に対する半分投げやりな感情につながっている。また、付近にあった富士山を望める場所がだんだんに減ってきていることをあげている人も多く、近年の都市空間の変化が、富士見坂から富士山が見える見えないというだけの間題ではないということを実感している人が多いことが伺える。「不忍通り沿いのビル建設を規制してほしい」という意見も、このようなところからでてきているのであろう。しかし、このような状況にあって、「富士見坂」においては富士山の意味が増大し、それだけは守ってほしいとする意見が非常に多かった。「富士見坂」から「富士山が見える」ということは人々の大きな心の拠り所となっており、ビルがその風景の中に建ち上がってきても、人をひきつけてやまないことも確かである。一方では、一部ではあるが、「都市において富士山を見ることはぜいたく」とし、見晴らしが利かなくなっていることについてもやむを得ないという意見も見られた。

く(超)高層ビルからの眺めについて>

問 「諏方神社」「富士見坂」のような台地の上からの風景と比べて、(超)高層ビルなどからの風景についてどう思われますか。

@地に足がついていない
・地に足がついていないようで落ちつかない(45男)
・地に足がついてない風景は興味ない。ビクトリア滝やスイスの氷河を上空から眺めるのとは訳が違う(55男)
・スベース等の問題からか、自然なムダがなく、ランドスケ一プはひらけても安心感、安定感は得られない(23男)
・富士見坂の場合自然の恩恵を感じるが、ビルの場合、人工の力(技術)を感じくつろげない(そこから見える景色が自然が多けれぱ別かも)(30代女)
・足を地につけて眺める風景が人の心を和ませる(66男・建築家)
・大地に足をつけて見ることは、ビルの窓からみる風景より全然解放感がある(59女)

A生活のにおいがしない
・台地からの風景は人の往む街の暖かさを感じるが、ビルからの風景は大都会の大きさを感じるだけで、自分の生活に身近かなものを感じない、喧噪の巷としか感じない(68男・建築技師)
・巨大都市東京
・情緒がない(64女・66女)
・見晴らしはよいが、親しみを感じない(42女)
・身近な美しい風景は、生活の中にとけ込む(67男・建設)
・諏方神社、富士見坂からの風景はロマンがあり、その地域に住む人の生活のにおいが感じられる。映画『東京物語』の一シーンを見ている感じ。これに反し、新宿超高層ビルから見る東京は超過密の怪物都市を見る感じ(71男)
・キレイなことはキレイだが、ギスギスしたイメージ(17女)
・人間の歴史があり、汗や脂のしみこんだ台地からの眺めとは全然違う(65男・画家〉
・眺めは良いけどつまらない。車と自転車とでは体感速度が違う。それと同じ。(23男)

B自然を感じない
・ガラス越しなので、風を感じることができないのはさみしい(38女)
・窓越しに見るより外気にふれながら見ている方が気持ちいい(29女)
・自然な風景はやっぱり最高!(22女)
・諏方神社などは、昔は自分の背丈と同じ位置に風景が映り一つの絵のように感じたが、高層から見ると小さな虫のようだと思う(72女)
・空気が違う(51男)
・自然との調和がある神社や坂は伝統ある風景を見るのに最適(56女)

Cその他
・あまり気持ちの良いものではない(48女)
・いやです(83女)
・小さなマッチ箱のような建物がかなり遠くまで見えるが、空が汚い(44女)
・西新宿あたりの高層ビル街は「大都会」という気がする(ここは都心ではあるが大都会という気はしない)(58女)
・起居の様がないが、眺望としては良好(77男)
・それはそれで美しい(35女)
・それぞれの良さがある(70女)
・関東一円の風景を見ることができ、また違ったおもむき(58男)
・東京のシンボリックな風景(60男)
・パノラマ的で楽しい面がある(72男)
・上野飛鳥山台地と西本郷台地の谷間がみえて良い、高層ビルを見ずにすむ(?女)
・この土地の風景は高層ビルからみると落ちついて住みやすい(50女)
・どこも同じになってしまった(62女)
・時の流れ(59女・64男)
・超高層ビルに行ったことがないのでわからない(67男)
・何も感じない(64女)

※高層ビルからの眺望については、「地に足がついていない」「生活のにおいがしない」「自然との関わりがない」という意見が多く見られた。また、「好きではない」という直接的な回答もあった。さらに、それだけにとどまらず、台地の上からの眺望について「諏方神社などは、昔は自分の背丈と同じ位置に風景が映り一つの絵のように感じた」「身近な美しい風景は生活の中にとけ込む」といった記述も見られ、この地域の人々が、地に足をつけた場所からの眺望を、自分の生活の一部としていかに深く体験しているかが伺える。

イ) 第2回アンケート調査 調査日 1994年10月20日 調査者 千葉・岩佐・川本
対象地域(第1回目のB,C地域を含む。図2−17参照)

・アンケート結果(回収率・属性以外は富士見坂に関連する箇所の抜粋)

○回収率20.0%(回収60/配布300)
上野台地部19.0%(回収19/配布100)
低地部21.0%(回収21/配布100)
本郷台地部20.0%(回収20/配布100)

○属性

□職業

  会社員 公務員 自営業 画家 教員 主婦 学生 自由業 無職 無回答
上野台地部 2 0 7 1 0 4 0 1 4 0
低地部 3 0 3 0 0 7 0 0 4 4
本郷台地部 6 0 4 0 2 4 0 1 2 1
合計 11 0 14 1 2 15 0 2 10 5

□居住年数

  0〜10年 11〜20年 21〜30年 31〜40年 41〜50年 51〜60年 61〜70年 無回答
上野台地部 3 2 4 3 5 1 1 0
低地部 1 5 1 3 4 0 4 3
本郷台地部 4 2 3 5 2 2 1 1
合計 8 9 8 11 11 3 6 4

□年齢

  〜30才 31〜40才 41〜50才 51〜60才 61〜70才 71〜80才 81〜90才 無回答
上野台地部 1 2 0 7 8 1 0 0
低地部 0 2 6 1 6 2 1 3
本郷台地部 3 0 3 4 5 4 0 1
合計 4 4 9 12 19 7 1 4

□性別

  無回答
上野台地部 9 10 0
低地部 10 9 2
本郷台地部 12 8 0
合計 31 27 2

<富士見坂の認知度>

対象地域内にある主な坂について、以下の方法で認知の度合いを調べた。
アンケート回答における坂の名前について
「名前、場所とも知っている」………・(a)
「名前だけ知っている」………・……・(b)
「知らない」・…・・………………・……・(c)
とする。あるひとつの施設や坂の名前を認知している人の数を「認知人数」とし(N)で表す。
N(人)=〔(a)の人数〕+〔(b)の人数〕*1/2
また、認知人数Nの居住地別の割合を「認知人数」としPで表す。
P(%)=N/〔居住地別人数〕*100  集計結果は 表2-6 のようになる。

表2-6 富士見坂の認知度

集計結果

本郷台地部居住者 低地部居住者 上野台地部居住者
a b N P a b N P a b N P
地蔵坂 2 4 4 20.0 4 2 5 23.8 6 3 7.5 39.5
富士見坂 11 5 13.5 67.5 16 1 16.5 78.6 19 0 19 100.0
夕焼けダンダン 6 1 6.5 32.5 14 1 14.5 69.0 18 0 18 94.7
七面坂 4 5 6.5 32.5 13 2 14 66.7 17 0 17 89.5
もみじ坂 1 5 3.5 17.5 4 3 5.5 26.2 10 4 12 63.2
芋坂 4 4 6 30.0 9 3 10.5 50.0 15 3 16.5 86.8
三崎坂 11 2 12 60.0 19 1 19.5 92.9 19 0 19 100.0
あかぢ坂 1 3 2.5 12.5 7 1 7.5 35.7 9 2 10 52.6
蛍坂 0 6 3 15.0 15 1 15.5 73.8 15 4 17 89.5
三浦坂 0 3 1.5 7.5 7 2 8 38.1 9 2 10 52.6
善光寺坂 2 3 3.5 17.5 9 3 10.5 50.0 12 2 13 68.4
アトリエ坂 2 3 3.5 17.5 2 2 3 14.3 2 4 4 21.1
新坂(S坂) 4 1 4.5 22.5 6 3 7.5 35.7 5 1 5.5 28.9
動坂 19 1 19.5 97.5 21 0 21 100.0 14 5 16.5 86.8
むじな坂 4 3 5.5 27.5 5 2 6 28.6 6 5 8.5 44.7
狸坂 11 2 12 60.0 13 2 14 66.7 7 5 9.5 50.0
大給坂 12 1 12.5 62.5 11 1 11.5 54.8 4 3 5.5 28.9
団子坂 20 0 20 100.0 21 0 21 100.0 18 1 18.5 97.4
解剖坂 1 1 1.5 7.5 5 2 6 28.6 1 3 2.5 13.2
根津裏門坂 11 0 11 55.0 17 0 17 81.0 9 3 10.5 55.3
弥生坂 12 4 14 70.0 11 3 12.5 59.5 13 2 14 73.7

※「富士見坂」の認知度は非常に高く、上野台地部居住者では100%を示している。これはこの地域で有名な「三崎坂」「動坂」「団子坂」に匹敵する値である。後の三つの坂は、道幅も比較的あり(片側一車線・対面通行)、交通量も多いため従来からよく知られていた。これらに比ベ「富士見坂」は短く小さな坂で、道幅も狭く(一方通行)、それと知らなければ気がつかずに通り過ぎてしまうような目立たないところにある。
 こうした小さな坂は、その近所で知られることはあっても、離れたところでは認知度が低いのが通常である。にもかかわらず、低地部居住者で8割、やや離れている本郷台地部居住者でも7割近くの認知度を示しているということは、やはりこの坂が“富士山が見える”ということで、強い印象を与えている結果に他ならない。地元はもとより、一般の人々の富士山に対する関心の高さを示したものと言えるだろう。

く不忍通り高層化の影響、およぴ高層化に対し感じたことに対する自由回答>

<高層化によって受けた影響>

@ 上野台地部居住者
・自分の領域が狭くなった気がする。
・低地の空気が汚れた気がする。
・富士見坂からみる富士山がビルの隙間からかろうじて見えるだけのものになってしまったのが悲しい。
・現在はまだ家から富士山が見えるが高層化のためにまもなく見えなくなりそうだ。
・10年以上前は家の2階から不忍通りの向こう側に東京大学安田講堂や日本医科大学付属病院棟が目立って見えたが、現在は不忍通り沿いのマンションのためにわかりにくくなり、上野台地と本郷台地の間の低地が埋まって浅くなったように見える。富士山は当然見えなくなった。(諏訪通り沿い居住者)
・1階から富士山が見えていたが高層ビルのためにいつの間にか見えなくなった。2階からとても良く見えていた富士山も、今年の夏建ったビルのために見えなくなってしまい残念だ。(諏訪通り沿い居住者)
・西日暮里の高台地から富士山が見えにくくなった。
・家からの眺望が悪くなったのも残念だが、富士見坂からの富士山の眺めが大変悪くなった。ビルに挟まれたせせこましい富士山を見ると悲しくなる。そのうちだんだん見えなくなり、近いうちに全く見えなくなりそうな気がする。
・15年位前から急に高層化した。25年位前はタ焼けダンダンからも富士山が見えた。40年位前は諏方神社から筑波山や赤城山もきれいに見えた。(現在は見えない)

A低地部居住者
・高層化の行き過ぎによって種々の障害が起きた。
・寒さのひどいときのビル風が身にしみる。
・見通しが悪くなった。
・かつては物千しから上野の五重塔や隅田川の花火が見えたが、今は全く見えなくなった。(根津神社、根津小学校そば居住者)
・風が変わり音がまわる。
・眺めが悪くなった。
・旧住民が追い出され、地価は高騰し、住宅費が高騰し、眺望がなくなった。
・地価が高騰し、日照時間が変化し、ビル風が強くなった。
・軒下の鉢に日もあたらず風通しも悪くなって住みにくい環境になった。

B本郷台地部居住者
・上野の森が見えなくなった。(根津小学校の西側居住者2名)
・ビルの谷間は風が強く暗い。(他4名)
・ビルの建設中に鉄錆が民家に降り注ぐ。
・不忍通り沿いに10階建てのマンションが林立して見通しが悪くなった。
・日照時間が変わった。
・以前は自宅から谷中の杜や上野広小路のネオンも見えたがこの4〜5年で全く見えなくなった。(汐見小学校の西側居住者)

※全体的に、高層化に伴い見えていたものが見えなくなったことを感じている人が多い。 特に上野台地部居住者は富士山が見えにくくなっていることを痛切に感じており、高層化によって眺望が悪くなっていることを実感している。また、台地間の低地が高層化によって埋まって見えるということから、高層化により地形が把握できなくなると感じている人がいることがわかる。

く高層化に対し感じたこと>

@上野台地部居住者
・不忍通りに行くとマンションなどの高層ビルが多く息がつまる。
・昔の面影が消えてしまい淋しい。
・このあたりは江戸につながる数少ない街であるから高層化ば残念だ。
・著しく見苦しい。
・新しく変わるのは淋しい。
・親しめる町よりほど遠い感じになった。
・高層化はこの町にはそぐわない。
・昔からのその場所特有の人情、風物、それなりの美しさを奪う醜悪な町並みとなった。
・昔の渋さがなくなった。
・景観が悪くなり散歩の楽しみが減った。
・不忍通りは歩いても面白くないので、裏の商店街を好んで通る。
・不忍通り沿いの開発は都市空間の前進とはいいがたい。
・町並みが汚く映る。
・高層化に反対ではないが、ビルの高さの不統一が町並みに落ち着きをなくしている。
・高層化も時代の波。若千の景観の変化もやむを得ない。
・近代的できれいになったが町の特徴がなくなった。
・いつの間にか新しい建物ができて、以前はそこに何があったか考える。
・高層化は時代とともに仕方のないことだが残念だ。
・一見、街の外見は綺麗になったようだが、街の活性化につながっているとは思えない。
・不忍通りはあまり歩かないので、マンション等が建ち並んでも生活環境には余り影響していない。
・気がついたらマンションが多く建っていた。
・不忍通り沿いの場所によって高層化の進み具合が違うので、高層化が両側に進んでいけば更に立派に見えるだろう。
・高層化の進んでいる池之端と根津の境界付近は開発の谷間となっており、木造2階建ての古い家や空き地がありイメージダウンである。
・住宅事情の悪い東京ではマンションやアパートも必要だ。

A低地部居住者
・景観に潤いがなくなった。
・不忍通りは都電時代でも狭苦しい道路だったのに、ビルの乱立と交通渋滞でよけい狭苦しく感じる。
・通りが淋しくなった。
・不忍通りに都電が走っていた頃の道幅と変わりがないのに高層ビルができたので狭い感じ、圧迫感がする。
・不忍通りに生活に必要な商店が少なくなった。
・不忍通りは息苦しいほど狭苦しい。
・以前と比べ町並みがすごく変わってきた。高層化によってすっきりとした町並みになったとはいえないし、何かでこぼことしたまとまりのない町並みになった。
・人が住む下町の温かさがなくなった。
・住み慣れた人々を追い出して建てた高層ビルは高額のため空き室となり、高層化を計画した土地もバブルがはじけて空き地となっている。このような状態を見ると腹が立つ。
・高層化といっても戦前の建物が多く街全体の景観は良くない。
・建物の高さに比べ車道や歩道が狭く通りにくい。高層化によってそれがますます目立つようになり、高い壁が重くのしかかってくる錯覚に陥ることがある。
・下町といってもビルの谷間では実感のない形だけの下町になってしまう。
・バランスのとれない自己主張ばかりしているデザインのビルが増えた。
・町並み、景観が変化した。
・不忍通りから離れたところに住んでいるので居住生活上さしたる影響はないが、景観上は大いに変わった。
・高層化は土地税制や経済効率性や民度の低さからくる仕方のない必然的な結果だと思う。
・住民を追い出す地上げには反対だが、等価交換をし、旧住民がまたそのビルに戻ってくるというならば、火災などの災害を防ぐという点や建物がきれいになるという点において高層化には賛成である。
・戦前の老朽化した木造建造物がビル化したことは街に美観を与えた。
・町並みが綺麗になった。
・戦前のオンボロ木造家屋がなくなり美観を呈するようになった。
・住人のインテリ層が増えた。
・高層化に伴い通りが綺麗になって歩きよくなった。

B本郷台地部居住者
・高い建物ばかりで息がつまりそう。
・高層化が計画的でないように思う。(他1名)
・高層マンションが乱立していると感じる。
・夜になるとビル陰から何か出てきそうで気味が悪い。
・高層化によって不忍通りが何となく歩きにくく、つまらなくなったので余り使わなくなった。
・親しみがなくなった。
・継ぎ足したようなビルが並んで昔の町並みの良さが壊されて残念である。
・マンション住民と旧住民の交流が少ない。
・高層化はやむを得ないと思うが余りに無計画だ。(他2名)
・せっかく下町と山の手の良い雰囲気を残していたのに、高層化によってただの都会の街並みになってしまうのはもったいない。
・坂の名前の意味が失われてしまってきている。
・不忍通り沿いはバブルの時から高層化して見苦しくなった。
・高層化は主として不忍通り沿いの低地なので、台地に住んでいる者には余り気にならないと思う。
・不忍通りに面しているところが変わったが、裏の方は大きく変わりていない。(他1名)
・坂の上に住んでいるので根津の低地とは少し違い、ビル以外には景観もそんなに変わったと思わない所が残っている。
・高層化は不忍通りのことだけではないし、時代の流れだと思う。
・景観は損なわれたが別に気にならない。
・外観上良くなった。(他1名)
・高層化が進んで街並みは綺麗になった。(他l名)
・道路幅が拡大されたことによって町並みは大分良くなったと思う。
・高層化は土地の有効利用ができるのでよいと思う。

※全体的に不忍通り沿いの高層化を良くないと感じている人が多いが、逆に良いことだと感じている人もいる。しかし高層化は良いことだという意見は、専ら不忍通り一帯が整備されたことに対してであり、視覚を遮っている高層ビルに対しての肯定的意見とは言い難い。また、高層化を時代の波と受けとめ、仕方がないことと感じている人が少なくないことから、進む高層化に対する住民の無力さを嘆いていることがうかがえる。


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