PLETWO in U.C.0099  <アナザーワン・ムーンクライシス>

第一話「目覚め」

(寒い・・・。頭痛がする・・・。この不快感・・なんだ・・?どう・・・したんだ私は・・一体・・?)
『・・・・・?』
ゆっくりと目をあけると、見慣れない光景が浮かび、眼前に見知らぬ男が立っていた。

『お目覚めになりましたか?』

『・・・・・・・・』
重力を感じる。だが束縛されている気はしない。
『ここは・・・・コロニー?』
そういうとプルツーは上半身を起こした。

『はい。ここはサイド3のコロニー、旧ジオン公国領区です。あ、紹介が遅れました。私はサイデイと申します。』

『サイド3?ジ・・・オン・・・。』
(私は・・・なんでこんな所にいる?私はクインマンサから・・・ジュドーに、プルに導かれて、グレミーを離れて・・、
裏切ってジュドーの元に行ったんだ。それから・・・ジュドーの危機を感じて、ネェル・アーガマのハイメガ粒子砲
を使って助けて、それで・・・? ・・その後が思い出せない。何故サイド3に私はいるんだ?)

『着る物はこちらに用意してあります。準備が整ったらお呼び下さい。・・では失礼いたします。』
そういってサイデイと名乗る男は部屋から出ていった。

『・・・着る物?』
プルツーは自分が裸なのに今気が付いた。だが別段慌てることはなかった。この年頃では普通気にするものな
のだが、まるで頓着する様子はない。プルツーはそういった娘なのだ。
『私は裸で寝ていたのか?・・・いや違う、これは・・・コールドスリープシステム!?』
(先程の悪寒の原因はこういうことか・・・。だがますますわからない・・。誰が私にコールドスリープを施したんだ
?それにさっきの男・・・軍属だ。それも連邦じゃない。ネオジオン?それとも・・・。)
プルツーは疑問に思いつつも用意された服を着て部屋の外に出た。

『もうよろしいですか?ではこちらへ。』
そういうとサイデイは右に歩き出した。

『今・・・宇宙世紀何年だ?ネオジオンはどうなった?』

『0099年です。0088年の第一次ネオジオン抗争はネオジオンの敗北で幕を閉じました。』

『0099年!!?・・・11年・・。そう・・・。 ・・・?まるで第二次があるような物言いだな。』

『はい、ございます。0093年シャア閣下によって新生ネオジオンが再建されました。アクシズを地球に落とし
地球の寒冷化を試みましたが、直前で軌道が変わり失敗に終わっています・・。シャア閣下も行方不明で・・、
第二次ネオジオン抗争は終結しています。』

『シャア・・・。赤い彗星か・・。グリプス戦役を生き延びていたのか。そうだったな。』

『・・・・・。』

『それで・・お前は何者なんだ?ネオジオンの者か?』

『それは・・・すぐにおわかり頂けますよ。今向かってる所にいる、ある方にお会い頂ければ。』

『そういうことか・・。』
(ネオジオンの残党なら、サイド3は隠れ場所にもってこいだからな・・。皆ジオンを擁護してくれる。連邦が嫌い
な連中ばかりだし・・・。)
『・・・で、なんで私はこんな所でコールドスリープされていたんだ?いつからここにいる?』

『ここでコールドスリープされたのではありません。詳しい事は後程・・・。』
そう言ってサイデイはとある一室の前で立ち止まった。
『こちらでございます。』
サイデイはノックをして扉を開けた。
『サイデイです。ご命令通りお連れしました。』

『ご苦労様、サイデイ。・・・こんにちはプルツー、はじめまして・・かな?』
そう言った少女にプルツーは何処かで見たことがある感じを受けた。そして少女はジオンの制服を着ていた。

(ミネバ・・・ザビ?確かにこの感じ・・・!だがコア3で会った時の不自然さは感じられない・・。あの時のミネバ
は・・?)

『紹介いたします。メイファ=ギルボード様です。』

『・・・・・・・!?』
(どういうことだ?)
プルツーは一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに消した。

『サイデイ。プルツーはもう分かってるみたいよ。ね、プルツー?』
そうメイファと紹介された少女は悪戯っぽく言った。

『はっ・・・。しかし・・。』

『問題があるみたいだな。言わなくてもいい。』
(やはりミネバだ・・・。ということはあの時のは・・別人?)

『いえ、言いましょう。この方は・・・ザビ家の血を受け継ぐ方です。・・・あなたと同じく。』

『!!?』
(私が・・・ザビ家だというのか?グレミーはザビ家の後継者だった・・・。私も?・・いやそんなこと疑問に思った事
もなかった。グレミーと共にいることに不思議だと感じたことも・・・。グレミーがザビ家なら私もザビの血族・・・。
当たり前のはずなのに・・・。どうして・・? ・・!グレミーの人形・・・か。)
プルツーはプルとジュドーの言葉を思い返した。

『プルツー。私達ネオジオンはあまりに弱体化してしまったの。テロリストの力さえ借りなければならないほどに。
だから・・・お願い、協力して!!あなたには・・私と共にザビ家の・・・ジオンの意志を継いで欲しい。』

『私は・・・』

『私からもお願いします。ザビ家による真なるネオジオンの統治はグレミー様の悲願でもあります。』

『グレミー・・・。』
(私は・・・グレミーを裏切ったんだ。ジュドーの元に逃げたんだ。グレミーを1人にして・・・。グレミーさみしいんだ
って・・・気づいたのに・・。頭が痛くて、どうにもならなかったから・・・。だから私は・・。)
プルツーはうつむいて、グレミーのことを考えて悲しくなった。涙は・・・出なかった。

『プルツー?どうしたの?』
メイファは心配そうにそうたずねた。

『そうだね・・・。グレミー、きっと・・喜ぶよね。私はグレミーを助けられなかった・・。いや助けなかったんだ。
だからせめてもの償い・・・しなきゃ・・な。』
そういってプルツーは力なく微笑んだ。

『それじゃあ・・・!』
メイファの顔一杯に喜びの表情が広がる。

『協力してくださるのですね!!?』

『ああ。』

『ありがとう!これで・・希望がみえてきたわ。ヌーベルエゥーゴと共同して例の作戦を実行に移す時がついに来
たのね。兵達もきっとプルツーを歓迎してくれるわ。』

『ヌーベルエゥーゴ?』
その単語はプルツーには奇妙なものに聞こえた。

『グリプス戦役のエゥーゴとは全く関係のない組織よ。MSテロを実行できる数少ないテロ集団なの。』

『あのようなテロリスト連中と共同作戦をとるなど・・・私は今でも反対です。』

『・・戦力が整わない今は・・信じるしかない・・わ。』

『・・・・・・・』
ジオンの理想を誇りに思っているサイデイにとってそれは辛い現実だった。

『そうそうプルツー、・・お礼というわけじゃないけど紹介したい子がいるの。』
メイファは立ち上がるとプルツー達が入って来たのとは反対側のドアの方へ歩き出した。
『入って来て。』
するとドアが開いて、良く知った顔が現れた。

『お久し振りですね、ツー姉様♪』

『プルフォウ!!?どうしてここに?それに見たところ私と同じで・・・。』

『私は自らの希望でコールドスリープしていました。他の皆も・・。私達もメイファ様に協力しているんです。』

『そう・・だったんだ・・。でもなんでコールドスリープを?』

『それは・・ネオジオンは御覧の通り、以前に比べてはるかに縮小しています。メイファ様の偽造の戸籍を作る
だけで手いっぱいで・・とても私達の分までは無理だったんです。いかにここサイド3がジオンの地といえども、
連邦の目から隠れて活動するのには限界があるので。コールドスリープされてたら食料も何も必要としません
からね。それに・・・』

『それに?』

『メイファ様のしようとなさってることはグレミー様の望み。だからグレミー様のためにも、結実させてみせます!』

『そうだな・・』
(ジュドーは何ていうかな・・・。でも、これは私の意志だから・・分かってくれるよね。プル・・・。)

『さて・・と!いつまでもここにいるわけにはいかないから、そろそろ出発しましょう。』

『では、これから地球のゼブラ基地にむかいます。外に車を用意しております。どうぞこちらへ・・・。』
サイデイは窓から外を確認すると、そう言って、皆を案内した。

(でも・・・何だろう、この感じ・・。何か大切なことを忘れてる気がする。空白の11年・・、私はずっとコールドスリー
プされてたんだろうか?それとも・・?だめだ!!思い出せない・・・。重要なことのはずなのに・・。)

 

特に抵抗もなく、プルツー達は地球の北極に位置するゼブラ基地へと一路向かって行った。ヌーベルエゥーゴ
と合流するため・・。時に宇宙世紀0099年6月、第三次ネオジオン抗争の幕開けが徐々に近づきつつあった。

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