第二話『発端』

『大気圏突入まで後10分です。・・・・プルツー様?』
サイデイはプルツーがぼーっとしてるようにみえたので念を押した。

『え?・・ああ、わかってる。地球か・・・。』
プルツーは窓の方に目をやった。
(そういえばこうやって意識があるまま地球に降下するのは初めてだな。あれが地球・・。)
地球の重力の井戸から脱出する時も、景色など気にしていなかったプルツーにとって宇宙から見る地球はひど
く物珍しく思えた。だが別に奇麗とかいった感情は起こらなかった。

『これから行くところは極地方だから、初めてのプルツーには辛いかもね。覚悟しとくよーに♪』
年下の子が周りに全くいないメイファにとってプルツーは妹のように感じられた。だが実際はプルツーの方が先
に生まれているので、この感覚は奇妙と言えば奇妙であったが、同年代ということに変わりはない。メイファは普段
は見せない快活な表情をしていた。はしゃいでいることに自分でも気づく。

『了解、メイファ様。』
苦笑しながらプルツーは答えた。

『もう!メイファでいいって言ってるでしょ!』

『はっはっは、メイファ様もアクシズ育ちなのですからツー様のご心配をなさってる場合ではありませんぞ。』
途中で合流したベルム=ハウエルはそのやりとりを嬉しそうに見ていた。

『私はこれで3度目なんですからね。嫌でも慣れるわ。』

(もうすぐ地球か・・・。前目覚めた時は地球、今回はコロニー、・・・?)
『そうだ、メイファに聞こうと思ってて忘れてた事があったんだけどいいかな?』

『なに?』

『・・・私はなんでコールドスリープされていたんだ?いつから?どこで?』

『それは・・・・わからないわ。』
メイファの表情がわずかにかたくなる。

『!!?どういうことだ?』

『実を言うとコールドスリープ処理を施したのは私達ネオジオンじゃないの。そもそもあなたはヌーベルエゥーゴ
が同盟の証にって、ネオジオンにとって重要な人物を渡すということで連れて来られたの。その時はすでにコー
ルドスリープされていたわ。』

『ヌーベルエゥーゴが私を?なんで?聞かなかったのか?』

『タウ=リンは・・・あなたの乗っていた定期船に事故があって宇宙を漂流している所を発見したと言ってたの。』

『フー・・ン。その事故があったのはいつなんだ?』

『さあ・・?聞いてないから・・。そういえば疑問にも思わなかったわ。』

『・・・・・・じゃあなんで連中は私をコールドスリープにした?』

『プルフォウ達もコールドスリープさせてるんだからその方が都合がいいだろう?って。』

『そう・・・。』
(妙だな・・。なんでフォウ達をしってるんだ?それにテロリストが船を救助?おかしな話だ。なにかある・・な。)

『間もなく大気圏に入ります。』
船はすでに突入コースに入っていた。

(くっ・・重力か・・・いやな感覚だ・・・・。慣れるものじゃないな。)

『見てプルツー、地球が真っ赤に見える・・。』

『燃えているみたいだ・・・。』

それから約15分後、船は北極のヌーベルエゥーゴの基地「ゼブラ」に到着していた。

『長旅ごくろうさま。こっちの準備はあらかた片付いてるぜ。あとは待つだけだ。』
そう言って一行を出迎えたのがヌーベルエゥーゴの首謀者、タウ=リンという男であった。
『おや・・・?ククク・・・、プルツー様か。お元気そうでなによりだ。こういう所は初めてかい?まだ目覚めて間も
ないんだろ?せいぜいここの寒さでまたコールドスリープしないように気をつけな。』

(こいつが・・・タウ=リン。プレッシャーを感じる・・。危険だな。)
プルツーは明らかにこの男から悪意を感じた。

『タウ=リン!!無礼だぞ!』
ベルム=ハウエルと同じく途中で合流したウモンはこのタウ=リンという男が正直好きではなかった。信用して
はならないという彼の直感がそうさせるのだ。

『フン・・・。そうカリカリすんなって。作戦内容は把握しているな?今から大統領機をミサイルで攻撃する。月で
の例の作戦の前に連邦を混乱させとくのが目的だ。いい目くらましになる。』

『護衛機の数は?ミサイルで確実に大統領機を撃墜できるのか?』

『この作戦は成功しようが失敗しようがたいした問題じゃないのさ。ようは連中をひっかき回せやいいわけだか
らな。地球連邦の大統領なんぞ所詮はお飾りだ。かわりはいくらでもいる。どいつがサル山の頂上にいようと
些細な問題なのさ。そういうことだ、わかったかいお嬢ちゃん。』

『・・・・・・・・』
プルツーは無表情で小さくうなずいた。

『さて・・・と、そろそろ頃合いだ。派手に花火をあげるとするか。あんたらはここで見物でもしてな。』
そう言い残してタウ=リンは基地の一室から出ていった。

『ではタウ=リンのお手並みを拝見させてもらうとするか。』
ウモンは苦々しげに言った。

『そうね・・・・。』

『しかしメイファ様、本当にあやつのような得体の知れない男に任せてよろしいのですか。』
ハウエルは明らかに不服そうな表情と口調をしている。

『このような作戦は私達ネオジオンよりもテロリストの得意とするところでしょう。今は・・・彼らのすることを見て
いましょう。』

-『大統領機捕捉!!状況を開始する。ミサイル発射準備!ホーミングは発射管1、2番ハンズフリー、3番アン
 チレーダービームライダー。4、5、6番全て有線誘導後パッシヴホーミング。7、8番同じく誘導後アクティブホ
 ーミングに移行。・・・発射!!!』-
長距離ミサイルが大統領機に向かって一斉に発射された。

 

同時刻、大統領機無線

-『なに!?ミサイル攻撃だと!!?どこからだ!?』

-『わかりません!!北の方角から・・・うわぁ!!』

-『隊長機やられました!!』

-『至急救援を要請しろ!!』

-『もうしています!上空護衛中のベクトラ所属の2機が今大気圏突入してこちらに向かっています!!』

-『ミサイル第二波、来ます!!』

『大統領機を確認!』
タクナ=S=アンダースンにとって、初陣がまさかこのような形でおこるとは思いもよらなかった。

-『ミサイルの第二陣が来ている!何とかしてくれ!!』

『空軍機は?』
タイラント少尉はいたって冷静だった。

-『被弾して帰投した。』

『准尉、ミサイルは思考型かもしれん。俺が進路を横切る。こちらについてこないのを撃墜しろ!』

『了解!』

 

北極基地「ゼブラ」

-『ミサイル墜とされました。』

『ちっ。かまわんヴォルテールを出せ。クソ虫供にはいい目くらましだ。』

『あれがヴォルテール・・・。何の意思も感じられない。サイココントロールシステムでもない・・。無人機!?もう
実現していたのか・・。』
プルツーは11年という時の流れを改めて認識した。
(無人機・・・ファントム・・・、気持ちが悪い!亡霊が動かしてるみたいだ・・・。)

-『もうすぐ目標はダブリン上空になります。』

(ダブリン!!私がサイコガンダムmkUで・・・。コロニーの落ちてきた街・・そう・・あそこにいるの・・。わかる・・
わかるよ。誰かが戦っている・・。このプレッシャー・・誰なんだ?少しだけ・・ジュドーに似てる・・。)
プルツーはそこにいるタクナ=S=アンダースンの気配を気にした。

 

それから約10分たった後・・・

ー『ヴォルテール、やられました!』

『フン!作戦、終了・・だな。まあいい。もうじきだ・・・。クソ虫連中に一泡ふかせるのはな!!』

宇宙世紀0099年7月12日、月は何も知らずただ優しき光をたたえるのみである。

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