04.12.23(THU) | 子持山(大タルミコース) | 子持山 |
子持山への登山は、唐沢の7号橋の駐車場から獅子岩(大黒岩)経由で登るのが、まあ標準コースである。昨年の暮れも妻と二人で獅子岩まで行ったが、そのとき貰った子持村のパンフレットに大タルミコースが記載されていたので、いつか歩いてみたいと思っていた。大タルミコースは唐沢を源流まで詰めて、獅子岩の真下の谷を向いの西側の尾根(大タルミ)に登り、その尾根伝いに柳木ヶ峰で獅子岩のコースと合流して山頂に向うコースである。今回は一人でその大タルミコースから登り、獅子岩コースを下った。 | |
コース:7号橋駐車場10:20→大タルミ11:25-11:30→柳木ヶ峰12:00→山頂12:20-12:30→柳木ヶ峰12:45→獅子岩分岐13:05→7号橋駐車場13:40 (所要時間3時間20分) 赤城ICから赤城側の急坂を下って利根川を渡り右折で国道17号に入る。すぐ次の信号を左折して子持山側の急坂を上り、高台に出たあたりで農免道路の案内にしたがって右折する。後は子持神社の大鳥居まで道なりである。鳥居で右折して狭い林道をひたすら走れば7号橋駐車場に達する。この間コンビニはない。 トイレは林道の途中および7号橋の駐車場にある。携帯は駐車場は圏外だが尾根に出れば通信可能である。 |
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子持山山頂部(左端が柳木ヶ峰) |
既に10時を過ぎていたので駐車場には5〜6台の車が駐車していた。7号橋の登山口で登山届けを出して、登山口には入らず林道を沢の上流に向う。すぐ8号橋を渡って巨大な岩壁や清流を楽しみながら、400m程歩くと林道終点で、そこから山道らしくなる。なだらかな足元のしっかりした道で、一ヶ月以上歩かなかった身体が山歩きモードに戻るまでのんびり歩く。 沢沿いに杉の植林地と落葉した広葉樹林が交錯した中を歩いていると、空中に細かい埃りのようなものが無数に浮遊し、まさかスギ花粉?と少々心配になる。後で大きめなのを手のひらに受けたら何と風花だった。快晴なのに、谷川岳を越えた細かい雪がここまで来ている。 |
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足元の草むらに、白い残雪のようなものがあるのでのぞいたら、シモバシラだった。紛らわしいがシモバシラはシソ科の多年草で、茎の内部の水分が、枯れた茎の裂け目から凍りながら滲み出すので、面白い形の氷のオブジェが出来る。残念ながら日当たりで時間も遅いので、融けてしまってあまり発達したものはなかったが、運がよければ特大の立派なものが見られるかもしれない。 | |||
シモバシラ |
30分ほど歩くと、獅子岩が六本木タワーのようにそそり立っているのが見えてくるが、雑木の枝の切れるところがなく、コース上から全貌を心行くまで眺める事は出来ない。 |
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谷底から見た獅子岩(大黒岩) | 侵食されずに残った岩脈の壁 |
獅子岩の谷底は広く明るい雑木の沢である。勾配も緩やかで歩きやすく、登頂だけを目指すなら、獅子岩まで暗く狭い沢を登る獅子岩コースより、こちらの方が山歩きのいい気分が味わえる。 花の百名山の田中澄江さんの”花と歴史の山旅”を読むと、子持山で遭難しかけた様子を悔しそうに弁明していて面白い。”子持山登山は稜線を歩くこと、これが迷わないコツ” と書いてあるが、彼女が歩いた二十何年か前に比べれば、今はこの沢の道も大変良く整備されていて、ここで迷う心配はないと思う。所々に道標があり一人でも心強い。 誰もいない沢で熊よけの鈴を鳴らす。寝てる熊を起こすことになりそうだが、同行二人の気分である。 |
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谷底の道:これから登る柳木ヶ峰のピークが見えてくる |
沢のどんずまりの柳木ヶ峰の崖の下を、トラバース気味に巻くと大タルミ峠へ抜ける。落葉樹林の中のほっとできる気持ちのいい尾根である。右に獅子岩、左遠くに浅間の噴煙も見えるが、いずれも雑木の枝越しである。 来る時コンビニに寄り損なって、食べるものがないのでポットの紅茶と、非常食のカロリーメートでひと休み。すぐに柳木ヶ峰の登りに掛かる。 この登りは標高差200mの直登で、このコースで一番険しい所で心配したが、登山道がしっかりしていて要所にはロープも有るので、赤城の黒檜山の直登と比べてもさほど苦労はない。少なくとも田中澄江さんが書いた、”登っては滑り登っては滑り、支えにと頼む木の根は、力を入れるとはじからポキポキ折れた。” と言うような状況ではない。ただ表面の霜が解けてぬるぬるで滑りやすところや、かなり高い崖際のところがあり、慎重に登る必要はある。 |
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大タルミ峠と獅子岩 |
勾配が緩んでくると柳木ヶ峰の山頂である。下から見ると三角形のピークだが、登ってみると子持山山頂への雑木の中の尾根の一部で、ピークと言うほどのものでもない。道標と小さな祠がそれらしさを示すだけである。 ほんのわずか、なだらかな尾根を歩いたあと険しい岩場を登る。普通ミックスと言えば岩と氷だが、岩と霜の解けた黒土の、ドロドロのミックスでは洒落にもならない。しかしここからの展望はなかなかで、赤城山、榛名山、その長い裾野の間を流れる利根川と、渋川から前橋、高崎と続く市街地から関東平野を一望できる。 |
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獅子岩と渋川付近の利根川 |
山頂は雑木に囲まれ、それほど気分のいい山頂とは言えない。それは中央にある三角形の大きな露岩のせいかも知れない。その露岩の上に、十二山神と書かれた黒御影石の碑が建てられている。見晴らしは以前より良くなっているが、この日は谷川岳から押し寄せる雪雲が赤城の黒檜山の上までかかっていて、さほどの展望は得られなかった。 日本で十二神といえば、単純に十二神将立像などで知られる、仏を守る12人の武神のことかと思っていたら、田中澄江さんは”お十二様とは何か。コンサイスの「日本山名辞典」に十二ヶ岳の名は4つ、12人の子を持つ女神との説もあるが、江戸幕府のきびしい禁教時代に、隠れキリシタンたちは、十二と名のつく神社詣りをした。キリストの12人の弟子になぞらえて。上州沼田から鬼石にかけては関東キリシタンの多かった所である。”と書いている。 |
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子持山山頂 |
ちなみに大タルミから柳木ヶ峰に登らず、尾根を逆に辿ると十二と言う名の1018mのピークがある。また子持山の隣は小野子山、その隣は十二ヶ岳である。探せばまだ十二と言う山名や地名が近くに在るのかも知れない。 またギリシャ神話のオリンポスの神々も十二神である。ギリシャ神話、キリスト教、仏教に共通する十二の神々、まるっきり関係ないようでいて、案外根は一つなのかもしれない。 山頂でも紅茶と残りのカロリーメートでひと休みして、早々に下る。柳木ヶ峰までの登りではほとんど人に遇わなかったが、下りでは15人程の人たちに出会った。下りは獅子岩経由でほとんど休まず下ってきた。獅子岩には登らなかった。 |
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獅子岩頭部 |
昨年の暮れ獅子岩まで登った時、屏風岩への分岐にある、円珠尼の歌碑の歌を紹介したが、円珠さんについては知らなかった。今年ひょんなことからインターネットで”きりえ沼田カルタ”を見たら、円珠姫、子持の紅葉 うたによむ というきりえの札があり、円珠姫について少し知れた。 円珠姫は幼名小柳、永正(室町末期 1504〜1521)の頃、沼田氏の一族川田四郎幸の娘として生まれ、後剃髪して小庵をつくり、和歌に親しむ。名を円珠と改め、厩橋城主滝川一益の和歌の師も勤めた。墓は下川田町遷流寺。とある。
お姫様であったことは確かであったが、中央からゆえあって上州の地(の果て)に流されてきた、といったイメージは当たってなかった。しかし長い時間を旅し、流され、その果てに月の鏡に旅の始めを映してみる心境に、そう差はないと言えるのかもしれない。 |
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