EEII/Ueno
Last updated: April 14, 2004

電子工学実験第二

実験の報告書作成に当たって注意すべきこと

報告書指導担当、上野 芳康
(2004年度 昼間コース 水曜日 309号室クラス)

  1. 実験の報告書について
    電子工学実験第二の報告書作成は、実験遂行そのものと同じくらい大事な作業と考えてください。 ほんのわずかな経験しか持っていない皆さんの大半にとって、「実験結果を技術的に報告する(=技術報告書を書く)」ことが「実験そのもの」と同じくらい難しい作業になります。 難しさの比率=50:50、と考えてよいでしょう。

    例えば、トランジスタ特性曲線を正しく測定でき、実験結果を図(場合により表)で示し、それを束ねれば報告書完成ではありません
    • まず、個々の実験結果を文章で説明する。
    • 次に、主な実験結果を考察(=実験結果から何を導き出したか、推定したか、判断したか)する。
    • そして、考察したことを文章で説明する。
    です。ここまで行った報告書が、「技術的な報告書」と呼んでもらえます。技術論文と呼ぶこともできます。 実験結果がどんなに正確でどんなに詳細なものでも図を束ねただけの報告書は「非常に貧しい報告書」、 実験結果を説明しただけの報告書は「貧しい報告書」です。

    「実験結果を説明できたかどうか」及び「実験結果を考察できたかどうか」が、電子工学実験第二の評価基準です。 みなさんに与えられた考察のヒント(問題S)を手がかりに、技術的な価値のある考察を試みてください。


  2. 報告書指導について
    誰にとっても「結果を説明する」「考察する」は、最初のうち、難しい作業です。 自分なりによく考えて図・表・文章を作成し、報告書に整え、提出してください[第1回提出]。

    報告書指導者(私)が、結果を説明する方法、考察の考え方を指導(=後押し)します[指摘事項記入と口頭説明]。 ただし、「説明が無い」「考察が無い」出発点が何も無いと、後押ししようにもできません)

    指摘事項と口頭説明を手がかりに、報告書を加筆・訂正し、再提出してください[第2回提出]。

    最初の報告書のレベル、改訂のレベルに従って、指摘と再提出を数回繰返し、報告書完成とします[受理]。

    電子工学実験第二の報告書作成は、卒業研究さらに工学部卒業の技術者となるために必要不可欠な技術、講義では学べない大事な能力、です。 このため電子工学科では、約20人の学生に1人ずつの教官が報告書指導担当し、マンツーマン指導します。 学生諸君はこの機会を大いに「活用」してください。


  3. 図を作成する
    講義の試験では数式を導き出すことと数値を求めることが大事ですが、実験では必ずしもそうではありません。
    一般に、
    • 実験結果を図(または表)で示すこと
    • 図(または表)を使って実験結果を説明すること
    が重要です。「図」はグラフのことです。図に示しにくい実験結果は、「表」を作成してまとめます。

    図の作成方法は、
    • 参考資料(上巻)、5頁の説明を参照してください。要点は、
      • 図の題名、縦軸の題名・記号・単位、横軸の題名・記号・単位を入れること。
      • グラフ用紙の左端・下端を縦軸・横軸としないこと(図の題名、縦軸・横軸の題名を書く場所が無くなる)。
      • 実際に測定したデータ点を記号(●、◆、■、▲、▼、など)で記入する。
      • データ点を、滑らかな曲線または直線で結ぶ。実線、破線、点線などを使い分けることもできる。
      です。
    • なお、教科書に載っている図の多くは「簡略図」です。教科書に載っている図のように作成すればよいと考えてはいけません。



  4. 図を使って実験結果を説明する
    • 図を使って実験結果を説明する(文章で説明する)ために、図に番号を付けます(グラフ1、グラフ2...ではなく、図1、図2...)。 なお、実験方法などを説明する図も、実験結果を示す図と区別せずに前から順に番号付けします。 表を作成した場合は、同様に、表1、表2...と番号付けします。
    • 実験結果を説明する文章の中で、図の番号を使って図を引用します。例えば、「この実験で測定したダイオードの電流−電圧特性を図3に示す。」「ダイオードの温度を上げると、立上がり電圧がわずかに低下した(図5)」「図7に示したように、XXXをYYYとすると、ZZZ回路が発振し始めた。」と、具体的な結果を指差しながら(=引用しながら)、説明を進めていきます。
    • 図を引用する場合は図番号を記載すればよく、頁番号を加える必要はありません。
    • ちなみに、頁番号は数字だけを記入すればよく、頁の下端中央(または頁の右肩)に記入します。
    • 以上は、技術者と科学者の世界共通ルールです。

      補足
    • 殆どの学生が、初心者ルール(?)に従ってグラフ用紙一杯の巨大な図を描き、小さな誤差、正確さにこだわります。技術者にとって大事なことはむしろ、大きな特徴や傾向をとらえることです。小さな部分の特徴(局所的な特徴)が大事な場合は、その部分を拡大した図を作成します。なお、本格的な技術報告書や技術論文ではA4 1頁に少なくとも2枚、多い場合は5〜6枚の図を描きます。 鉛筆と定規を使って修行中の皆さんでも、下記の図5くらいを目安にしてゆったりと描いてください。

       

  5. 考察する
    「結果」と「考察」の違いが、最初のうち誰でもわかりにくいものです。
    • 「結果」は普遍的なもの、測定対象が同じであれば誰が実験しても同じであるべきものです。
    • 「考察」は、結果を見た実験者が考えたこと、推定したこと、判断したことであり、技術者によって観点や考え方に違いが生じうるものです。
    • 考察内容を説明する文章の中でも必要に応じて図を引用し、具体的に説明することが大事です。
    • なお、分量の多い報告書や論文では、最後に、「結果」と「考察」を短くまとめた「結論」を加えます。


電気通信大学 電子工学専攻/電子工学科 上野芳康