2002年秋 東京国際映画祭

作品名 ポイント
THREE

アジアの風
部門
韓国のキム・ジウン(回憶)
タイのノンスィー・ニブミット(輪廻)
香港のピーター・チャン(回家)
オムニバス映画の難しいところは全部の作品のテンション・クオリティが同じでないということだ。同じでなくても複数のものを同時に見せる事によって特別な効果があったり、違うものを見たことによって逆に1本の作品では見えなかったものが見えてくるなど、それなりに面白い効果があるといいのだが、この場合はそのあたりは成功しているとは言い難いと思う。
「このように違う国同士の作品をあわせることにより、違う国の映画に興味を持ち、それが市場の拡大につながり、しいてはそれが映画の品質を上げることになる。云々」ということをティーチ・インでピーターがいっていた。それはそれでいいのだが、作品同士がもう少しお互い影響を持ち合っていたほうがより広がりがあったように思う。

韓国のキム・ジウン(回憶)
はじまって直ぐに内容が全部判ってしまうのはどうかと思う。40分弱という短い時間のなかで話を広げすぎて、収集が付かなくなることを恐れたのかもしれないが、カメラアングルや音楽だけに頼りすぎていたのがなんとも寂しい。

タイのノンスィー・ニブミット(輪廻)
タイの古典に対する知識がないため、どうしてもだからどうしたの?そうなんだで終わってしまう。
人形に乗り移った霊の悲しさや業のようなものを感じ取れなかったのは、観客側の私の問題か?

香港のピーター・チャン(回家)
申し訳ないが前の2本が引き立て役になってしまっている。
短い時間のなかでもこれだけの話が描けるということを証明した作品。
親子の愛、夫婦の愛
夫婦の愛はとても献身的なものに思えるが、自分勝手で身勝手でやがては破滅に向かっていく。しかしだからこそ悲しくもあり美しくもある。そのあたりがよく描かれていると思う。
クリストファー・ドイルのカメラワークも気に入った。
ウォン・カーワイ作品で見せたような先を急ぐ感じは息をひそめ、かなり落ち着いた雰囲気になっていたが、守りにはいった感じがなかったのが良かった。古いアパートの廊下の場面などは、昔だったらもっとせっかちにとっていたと思うが、なめるようなカメラの動きが怖かった。

黎明(レオン・ライ)
これは黎明(レオン・ライ)の演技力というより、ピーターの演出力の賜物だろう。
あれだけ普段と違う姿を見せながら、あれだけ違和感がないというのは素晴らしい。

この3本で共通することといったらどの作品にも7歳前後の子どもが出演することだろう。
このなかでは性悪説を思い出させるタイの子役の笑顔が怖い。
そして香港の子役の可愛らしさが光る。
恋人
コンペティション
広西省が舞台の素朴な愛の物語だと思って90分のんびり観ていたら、最後の最後に踏絵ともいえるあっと驚く描写が待っていた。
これを裏切られたと思うのか、笑って許すかこれは本当に個人の嗜好の問題だ。
作り手側はこれを善しとしたのだが、そこに行くまでかなりな葛藤があったと思える。
でもこれで行こうと腹をきめたのだから仕方ない。
私自身は笑って受け入れようと思う。3人の恋物語、誰か一人身を引かなくてはいけないという辛い選択を、フィクションという優しさをもって描こうとしたのだと思っている。
(障害者同士の恋愛というのを意識することはあまりなかった。自然の中ではどんなことも特別なことではなく思えてくる。)

ドン・ジエ→これから@至福のときが公開される期待の女優。鈴木あみを清楚にした感じか

タオ・ホン→千秋を田舎娘にした感じか

上映後のティーチ・イン
主演の二人 監督の受け答えが丁寧で好感が持てた。
オーバー・ザ・レインボー

協賛企画
コリアン・シネマ
ウィーク2002
イ・ジョンジェ演じるテレビ局の気象情報キャスターが交通事故にあったことにより、ある部分の記憶が欠落。自分の愛する人、愛した人は誰なのかを探すという、過去を振り返り未来に繋げていこうとする、変形タイムスリップ物といった趣の作品。
記憶の欠落というのはどうしようもない喪失感を伴うと思うのだが、そのあたりには割とさらっと描かれ、中心はあくまでもイ・ジョンジェ演じるジンスと彼の大学時代の同級生(チャン・ジニョン演じるヨニ)の恋物語。とても気持ちのいいラブコメになっていると思うが、ジンスの喪失感があまり描かれていないことが物語を軽めにしていることも確か。
記憶を辿るうちに過去ではなく、今を活きようと思い始めるジンス。彼の職業が過去ではなく、未来を語る天気予報キャスターという設定なのも面白い。欲をいうなら、今はどんどん過去になっていき、未来はどんどん今になっていくという時間の流れをもっと感じさせる展開だったらよかったのにと思う。
(そういう展開だったのかもしれないが、私が解らなかっただけか?)

題名にもなっている@オーバー・ザ・レインボーが主題歌だった@オズ魔法使い。
虹の彼方にあると思っていた夢が、自分の身近にあることに気が付く少女の話だったが、この物語も、ジョンジェの持つ柔らかな感じが上手く生かされた、身近にある幸せを探し出す物語だったことにほっとする。

チャン・ジニョン
岡村孝子に似ているな〜一度気になりだすとそればかり目についてしまい自分でも苦笑。

上映後
9割方埋まった会場に感激した監督から予定外の挨拶があり。
トランスポーター
特別招待
作品
チラシより
プロの運び屋の3つのルール
1.質問はしない
2.依頼品をあけない
3・その2つのルールを破った時は死

プロの運び屋の仕事ぶりを描いている場面や後半のバス駐車場場面での乱闘シーンなどは、テンポもよくかなり面白く観られるが、スー・チーと父親のエピソードがかなり陳腐なのが残念。でも2時間弱それなりに楽しいことは確か。
主演のジェイスン・ステイサムのマッチョぶりもなかなかであるが、時々彼がスティーブン・セガールに見えてしまったことも確か。
スー・チー はハリウッド進出第1作だが、必要以上に上げる悲鳴にちょっと辟易する。
そして彼女の初登場シーン
(トランクに押し込められた彼女にジェイスン・ステイサムがストローでジュースを飲ませるシーン まるでミルク飲み人形のようである)は、製作者サイドがスー・チーに何を求めているかがとても良くわかるシーンだ。

上映前の舞台挨拶
あまりに短く本当の挨拶だけだった。肉付きがいいリュック・ベッソンと比べ、スー・チーがお人形さんのように立っていたのが印象的。
密愛
アジアの風
部門
上映後のティーチ・インの質問「劇映画デビュー作に何故この題材(主婦の不倫)を選んだか?」への監督の答え

「ナヌムの家」など日本の従軍慰安婦の問題を描いたドキュメンタリーを撮ってきたことによって、他人からあなたのしていることは正しいと無条件の賞賛を浴びることにとてもプレッシャーを感じるようになった。誰もが簡単に同意するとは言い難い作品を取ることによって、その重圧から開放されたかった。

上映後のティーチ・インの質問「エンドロールのBGMが何故@ドナドナなのか」への監督の答え

主人公の主婦は、総てを失うことによって自分を見つけることが出来、様々なものから開放されます。ただどんな物事にも裏側があります。あえて反対の音楽を使うことによってその開放されたものを表現したかった。

監督ビョン・ヨンジュはどうも極端から極端へ走る性格のようだ。ある意味かなり潔いともいえるだろう。普通の主婦の心の中にある情熱(熱情か?)を描きたかったということだが、それは成功していると思う。残念だったのはラストの破滅の描き方か?安易な破滅の描き方だったように思えた。
ただ「他人から見た破滅がけっして当人にとっては破滅ではない。」というスタンスには共感できるものがあり。
主婦(キム・ユンジン)の不倫相手の医者(イ・ジョンウォン)(韓国のサイモン・ヤムか?)がどうも胡散くさくて好きになれなかった。

上映後のティーチ・イン
無愛想な感じの監督に驚く。(キム・ユンジンに対して女性監督と組んでどうしたか?という質問がでるまで女性だということにも気が付かなかった。(苦笑))実直な感じはするが、反面かなり挑戦的でもあるような気がした。


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