奉仕
自己の本質に目覚めかけた人は、人に何かしてあげる事に大きな悦びを発見します。「人に優しくしたい」という、人間の根元的欲求があるからです。できる限り奉仕しようと心に決めると、奉仕されたい人を引き寄せ始めます。「人のためにつくす事は良い事です」と親から、そして教育者から教えられ、その考え方を自我が握りしめたままになっている人は、もうこれ以上自分には出来ないという限界まで依頼が増え続けます。
やがてあなたに対する他人の依頼が限界を超えてくると、あなたはイライラしはじめます。イライラした時の人の思考パターンは誰でも一緒です。その人の「優しくありたい」という気持ちとは裏腹に、「そのくらい自分でやればいいのに」というエゴの思いが脳裏をかすめます。
人に奉仕するという、プラスを追い求め続けている人に現れてくる共通のジレンマです。優しく依頼に応じられない自分の非力を嘆きます。自分の意地悪き思いに愕然とさせられます。こんな落とし穴に落ち込んでもがき苦しんでいる人が、今この時期、たくさんいらっしゃるようです。
ある人は、こんな事ではだめだと更に頑張り、自分を鍛えようと努力し続けますが、いずれにしても限界にぶち当たり、もうどうにもならなくなるまで他人のあなたへの依頼は増え続けてしまうものです。これは努力によって解決できるものではありません。自分を責めてみたところで解決するものでもありません。あなたが頑張れば頑張っただけ相手からの要求もエスカレートしてきます。あなたと相手はひとつだからです。あなたが相手につくそうと思えば思っただけ、相手は同じだけあなたに要求を持ちかけるわけです。創造主としてのあなたがプラスを思えば思っただけその反作用としてマイナスを創りだしているからです。
そこで人は考えます。おかしい、何かがおかしい。良い事をしようとしているのに何で俺は苦しいのだろう。何でお前はそのくらい自分でやらないのだ。そのうち人は依頼されること自体を重荷に感じるようになってくるわけです。人に何か頼まれることに恐怖を感じている人がたくさんいます。苦しくて苦しくて、極限までいった人は考え始めます。どうしてこんな事になってしまうのかと。意識が内側を向き始めます。外にばかり向いていた意識が内側に向き始めるのです。そこからがあなたの真の成熟の時です。
他人から頼まれごとをしたとき、ビクッとする事はありませんか? 特に自分には出来そうもないと思っていることを依頼されたとき、どうしようと混乱するのではありませんか? あなたは本当は何を恐れているのでしょうか? どうして単純に出来ませんと言えないのでしょうか? 人からの要求にどうしてそんなに敏感に反応するのでしょう。あなたに対する要求は全てはあなたのハイヤーセルフが、あなたを神へと導くために起こしている現実にすぎません。
「人助けをすることは良い事である」と握りしめている人は、なかなか他人からの依頼を断ることが出来ません。これも執着です。「良い」と「悪い」を手放しましょう。人に奉仕できなくてもいいのです。それよりももっと大切なことがあります。神はまずあなたが幸せになることを望まれているのです。
教育により、人は正しさを学びます。大切な学びの第一歩です。「して良いこと」と「してはいけない事」を学びます。こうして健全な意識の第一歩を学びます。他人からの賞賛というご褒美にエゴはいい子でいることに満足を覚えるからです。人の意識が外に向かい始めます。
こうして良い子になったエゴは、さらなる賞賛を求め続けます。他人に奉仕したいという自分の動機をチェックしてみて下さい。その動機はどこからきていますか? そうすることが「良いこと」だと判断した結果、行動しているのではありませんか?
「それが良い事だからそうする」、そんな事は当たり前だと考えるかもしれませんが「良い事だから」と判断しているのは誰でしょう。判断とはあなたの心が下すもの。すなわち判断しているのはあなたの自我に他なりません。すなわち純粋動機ではありません。純粋動機とは「ただしたいからそうする」といったものです。すなわちあなたの内なる源からわき上がってくる行動欲求だけが純粋動機と呼ばれます。純粋欲求に従って行動している人に苦しみはありません。そこに比較判断がないからです。
もちろん、良い、悪いの判断の結果、行動することが悪いと言っているわけではありません。まず人は誰でも良いと思ったことから行動を起こしていきます。社会の健全な常識を身につけ、立派な人と呼ばれるようになっていきます。しかしどんな人もこれで終わるわけではありません。この先があるのです。外へ外へと向かっていた意識が内を向く必要があります。次には良いことだと握っていた考え方を手放すことになります。
「奉仕する」という考えを持っていなかった子供が、奉仕する事は良い事だと学び、人に奉仕できるように育っていきます。自分が奉仕家(意識が外側を向いている人)になってくると、次には奉仕できない人を裁きはじめます。そこに奉仕者の葛藤が生じます。そして奉仕しても、しなくてもどちらでも良いのだとニュートラルな考え方になることによって、自分は奉仕家であり続けながら、なおかつ奉仕できない人を裁かなくなってくるわけです。円満な人格者の誕生です。
あなたの思う「人のためにつくしたい」という思いが、つくされたいという人を引きつけます。どちらでもいいのだと手放すことによってあなたは自由になります。あなたの考え方が空っぽになったとき、自我にはもうすることがなくなります。この時、内なる創造の意識がわき上がってくるようになります。あなたに考え方がないとき、深い深いところの意識があなたの肉体という表面に浮上してくるのです。それがあなたを行動に駆り立てるようになってきます。それが純粋動機です。その時あなたは神のごとき働きを始めることでしょう。あなたは自分という個体意識を持ったまま、全体意識としての活動家へと変わります。
そんな人が結果を恐れることはありません。良いと悪いがないからです。ただ起きてくる結果を楽しめるようになってきます。どんな結果をも・・・。良いと思ってしているわけではないから、悪い結果は生じようがないのです。その方が都合がいいと思って取った行動は、うまくいかなかった時には都合が悪くなるわけですから、どうしても結果にこだわります。したい事をしている人に、恐れる結果はないのです。
人は特定の価値観を握ります。まず握るところから始まります。一つの価値観を受け入れると、その考え方に基づいた体験が始まります。その中で良い体験による悦びと、悪い体験による苦しみの両方を学びます。この両極を体験しつくすとその学びが終わるわけです。人は良い体験ばかりを求めますから、まずプラスの体験をして、苦しみの体験が最後に残るのが常のようですが。苦しくて苦しくてどうにもならなくなったとき、「もういいや」と意識がニュートラルへとシフトする事によって、その価値観を卒業します。
握って、手放す、握って、手放す・・・、この永遠の繰りかえしが人生です。手放さないと次のものが握れないからです。これが宇宙の基本法則です。握らないものは体験出来ません。あなたの人生は、あなたが握りしめた価値観によって決まるわけです。そして我々地球人は、もうずいぶん永い間この繰り返しをやってきました。永い永い転生を経ながら、永遠とも思える永い間、このゲームを続けてきたようです。もう三次元世界で味わうべきテーマはやりつくした、そろそろ終わりにしようと考える人達が現れ始めました。もう握るのはよそう、自我は空っぽにしようと・・・。
それもいいかな、と思う人は自分の欲をチェックしてみて下さい。自分はどうなりたいと思っているのか、自分が今、手に入れようとしているものはなんなのか? しばらくその考えの中にいて下さい。自分の欲に焦点を合わせ、そのことに良い、悪い、の判断を入れずに、ただしばらくそこにいてみて下さい。どうぞそのことに時間を割いてみて下さい。心を落ちつかせ「自分の欲・・・」を感じようとしてみて下さい。それを単に観察して下さい。たっぷりと時間をとって。
必ずその正体がわかる時が来るでしょう。「解った」という瞬間が。 その時あなたはこれまで味わった事のない開放感を体験することでしょう。楽しみですね。今、このとき、この時代、これ以上に大切な事はないでしょう。あなたが割くことの出来る全ての時間をこの事に集中してみて下さい。
「私は何をしたいのかわからない」と多くの人が言います。将来何をすればいいか、どう行動すればいいかは考えなくて良いのです。それはあなたが「わかった」と悟った後にやってきます。あなたがした方がいい事は、自分を観察する事だけです。自分の「欲」を観察して下さい。じっくりと、時間をかけて、瞬間瞬間、自分の心を眺めて下さい。自分が今何によって動かされているのかを。意識的にか、無意識的にかは別にして、あなたが判断して取る行動には、全てその源に恐れが横たわっています。その恐れの元を発見して下さい。
観照することによってのみ、その原因がわかります。これは誰でもわかることです。これまでわからなかったという理由だけであきらめないで下さい。果たしてあなたはどれだけの時間をそのことに使ったのでしょうか。あなたは今、自分が生存することを目的とすることにどれほど莫大な時間を費やしているでしょう。その10%でかまいませんから毎日毎日自分の「欲」を感じて下さい。それを眺めて下さい。決意を持って凝視して下さい。必ず解るようになってきます。これは人間の能力には関係ありません。あなたが呼吸をする能力を持っているのと同じほど簡単なことなのです。ただあなたが使おうとしなかった能力なのですから。
私に出来ることは全員に出来ることだと伝えられました。それを受け入れるか否かはあなたの選択です。そのための無限のサポートがもう始まっています。それは決心した人にやってきます。
|