ことわざ実証体験記























我々の社会生活の中で
実体験することによって
初めて分かる事はないだろうか?




日本だけでなく世界各国に存在する

ことわざ


これは、後生の人々の教訓になるように
先代の方々が実体験を元に学び、
我々に残してくれた
貴重な財産と言えるであろう。





今回はその「ことわざ」を

実体験と共に
学びたいと思う









今回、実体験して学んだ「ことわざ」。









「一寸先は闇」

〜Who can read the future ?〜

















時は2002年12月16日の 大安

場所は草津温泉である。





草津の町の中心には「湯畑」と言う所がある。

温泉が湧き出ている所で、
お湯が何本にも分かれて流れており
最後は滝となって落ち、湯煙を立てている。
町の象徴的場所で、有名観光スポットである。





時間にして午後6時くらいであったろうか。



私はその滝の前にあって
坂道の途中に位置する焼鳥屋の前にいた。


温泉に入った後のビールは格別に美味い。

その、ビールの美味しさを更に際立たせる
焼き鳥

まさに、それが焼き上がるのを
今か今かと待っていたのであった。

どうでもいい話だが、ネギマとつくねを注文していた。
(私にとっては譲れない事だが)







そこへ坂道の最上部から現れた

おじいちゃん

(以下、船木さん(仮名)とする)



実は今回の主人公は私ではなく
この船木さんなのだ。







危険な実体験が今、幕を開ける・・・。

















坂の上から、船木じいちゃんはやって来た。



年齢は60過ぎで、
中肉中背の白髪頭。
大きな眼鏡をかけ、
浴衣に草履を身に付けていた。



なぜそこまで彼のことを覚えているのか。



それは彼の連れ歩いている人が
若くて綺麗なお姉ちゃん
だったからである。

60過ぎのじいさんが
30歳程も若い美人を連れていれば、
どう見ても不自然だと思うではないか。

最初は「温泉街で不倫かい?」なんて思ったが
よく凝視してみると、彼女はコンパニオンらしかった。


綺麗なはずだ


私は齢30目前にして
コンパニオンの存在意義を
少しづつ理解し始めており
非常に興味を持つ年頃でもあった。

彼女をじっと見つめていたのは言うまでもない。





しかしその時、突然
船木さんが走り出した


驚く程の急勾配な下り坂で
心踊ってしまったのだろうか。

または、若い女の子と触れ合うことで
気持ちが若返っていたのか。

とにかく酒に酔っていたのは間違いない。


「ワシはまだまだ若いんじゃー」って事を
誇示するかのように走り出す。





私は嫉妬しながら、心の中で叫んだ。


オヤジ!調子に乗るんじゃねー!」





しかしながら、私の横を通り過ぎるときの
彼の少年のように輝く笑顔を見ていたら
その言葉も消え失せた。








38年間勤めた下請け部品工場を
今年の春、無事に円満退社。
長い社会人生活を振り返れば
妻と子供を守るため
ただひたすら働き続けた日々。

そんな自分へのちょっとしたご褒美として
わずかな退職金から温泉旅行をプレゼント。
家族というプレッシャーから解放され、
若いコンパニオンと祝福のひと時を過ごす。

一生懸命、生きてきて良かった。

俺の人生、万歳!

最高の達成感と幸福感が彼を包む。



以上のプロフィールは全て私の予想であるが、
大方間違ってないと思われる。

とにかく都合もいいので(?)
この設定で話を進めるとしよう。






そんな幸福の絶頂にいる彼にとって
恐れるものは皆無であった。






100万ドルの笑顔のまま
急勾配の下り坂を駆け抜けていく





















幸福の絶頂を駆け抜けてゆく彼。






しかし、彼には大きな誤算があった



まず第一に、坂道が急勾配だった事。

第二に、彼の気持ちは若返っていたが
体までは若返っていなかった事。

第三に、酔っ払っていた事。

第四に、非常に動きにくい物を
身に付けていた事。






そう。



彼は温泉街に相応しく
浴衣に草履姿であった。





浴衣は通常の衣服よりも開脚しづらく

そして、草履は明らかに走行不適切。








羽根を伸ばそうと思って来た温泉だが
皮肉にも、この浴衣と草履が悪夢を呼んだ。











浴衣と草履で
スピードアップ






船木さん は60歳の常識を覆す速度を記録





そして風となる






しかしそのスピードに
60を超える老体が耐えられる訳もなく、


足がもつれた







そして










テイクオフ























「ふなきぃ〜〜〜!!!」











そんな訳ないと思うでしょ?

本当に写真のまんま飛びました







まさに










ひとりラージヒル











バッケンレコードは微妙だが
飛型点は満点だったろう






小さな新記録が、ここに生まれた・・・


















かつて、飛ぶという行為は人類の夢であった。





西暦1903年12月17日
ライト兄弟が人類初のフライトを成功させた。

だが

もしも、世界で初めて飛行機を発明したと言われる

故人・二宮忠八

この飛翔する船木さんと巡り会っていたならば
人類史上初めてフライトに成功したのは
二宮忠八、彼だったかも知れない。







それ程に芸術的なフライト







船木さんの少年時代からの
「パイロットになりたい」という夢が
今、現実のものとなった。

(これも憶測)







迫り来る危険も知らず
笑顔のままで飛んでゆく

船木さん


なぜ、笑顔のままなのか

なぜ、美しい飛型を保てるのか

なぜ、彼は受身を取らずに飛び続けるのか






彼は酔っ払っていた。

通常の判断が不可能な程に。



当然、自分が飛んでいるなど
夢にも思わなかったであろう










そのまま









顔面で不時着











私は急いで駆け寄った。

「大丈夫ですか!!」

それに対して船木さん

「大丈夫れ〜す・・・」




大丈夫でない





着地した時点でメガネは木っ端微塵。
割れたメガネの破片で額を切ってしまっている。



顔面、血だらけであった。



それでも、彼はコンパニオンと共に
飲みに行く事を諦めきれずに
「大丈夫」を連呼

気持ちは痛いほど分かるけど


無理だって




あれだけのビッグフライトをしながら
額の傷だけで済んだ事だけでも奇跡なのだ。





コンパニオンのお姉ちゃん達にとっても
いい迷惑だったろう。

船木さんを酔わせるためにサービスを奮発して
やっと勝ち取った「ご指名お持ち帰り」。

これからが稼ぎ時だったはず・・・。

彼女達の悲しむ表情の裏には
そんな事情も、あるいはあったかも知れない。



とりあえず私は彼をなだめながらも
すぐに救急車を手配するようコンパニオンに指示した。







人口7,587人の小さな町に
救急車のサイレンが鳴り響く。









こうして彼は病院へ
夢と共に去っていった・・・
















メガネ砕けて夢砕ける









コンパニオンの夢も砕ける









湯畑で夢砕け







まさに

天国から地獄







「一寸先は闇」

である






















彼は旅行から帰宅したとき
妻に対して何と言い訳したのだろうか









気になるので考えてみた。









パターン1


「ちょっと、おとうさん!
どうしたんですか?!その怪我!」

ひとりラージヒルしたなんて
間違っても言えない


おじいちゃん
「ちょっとな・・・」


「ちょっとじゃありませんよ!
どうしたら、そんな事になるんですか!」

おじいちゃん
「うるさい!!放っておいてくれぃ!!!」


逆ギレする





パターン2


「おとうさん・・・。
もっとちゃんと食べなくちゃ
身体に良くありませんよ。」

おじいちゃん
「食欲が無いんじゃ・・・。」


「今日はお父さんの大好きなカニですよ。
お店の人の話だと、このカニは今日、
北海道から飛行機で運んできたばかりだって。」

おじいちゃん
「今は飛行機の話は聞きとぅない・・・」


へこむ







その他、

普通に白を切る、

何も語らない等、

複数のパターンが予想される。



しかし

たとえその事件が

奥さんに対する
生涯たった一つの
隠し事であったとしても

永遠に話すことなく
闇に葬り去るのは間違いない









こんな悲惨な物語ではあるが
そんな中、ちゃっかり得した人間がいる。




救急車が来るという混乱状態の中
私は焼鳥屋の兄ちゃんを発見。

私の頼んだ焼き鳥を持ったまま、
野次馬の中に混じって、
何が起こったのか見物していた。

私は尋ねた。
「兄ちゃん。それ俺の。いくら?」

焼鳥屋の兄ちゃんは
私の方を見向きもせずに答える。

「800円です」

お客などまったく興味のない様子。

私はすぐに800円を渡して
その場を去った。




本当は900円なのに





漁夫の利というか
棚から牡丹餅というべきか・・・







とにかく

「ことわざ」

を実体験で学ぶ事ができた
貴重な一日であった。





今回、実体験で学んだ「ことわざ」



一寸先は闇



の教訓は















コンパニオン最高










皆さんも、この教訓や「ことわざ」から
一つでも学ぶ事がありましたか?

皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。










次回の「ことわざ実証体験記」は

覆水盆に返らず

〜It is no use crying over spilt milk.〜


です。お楽しみに!








(ないない)







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