甦れ! トロリーバス 


 トロリーバスという乗り物をご存じであろうか? 日本語では「無軌条電車」といって、車体の形そのものは普通のディーゼルエンジンバスに似ているが、昆虫の触角のような2本のポールが屋根についていて、道路の上に張られた2本の電線から電気を得て走る「電気動力バス」である(電化路線の踏切を通過するために、ディーゼルエンジンを補助動力としたタイプもあった)。

 かつては新時代の乗り物として期待され、東京・横浜・川崎・大阪・京都などの大都市の一部で見られた交通機関であった。
 しかし、ディーゼルエンジンのバスよりも運行コストが高いうえ、電線に束縛されているために道路を走る際の自由度が低く、おまけに路面電車よりも大量輸送ができないうえ、路面電車同様に道路上に張られた電線が街の美観を損ねるという欠点があって、昭和40年代前半に続々と姿を消してしまい、今では黒部ダム付近のアルペンルートに2路線があるだけとなってしまった。
 かつては都会を走っていたトロリーバスが今では黒部の山中を走っているのは、路線の大半が長大トンネルなので排気ガスがトンネル内にこもらないようにするためだろう。水力発電をするダムがすぐそばにあるので、動力である電気には事欠かないという事情もあるかもしれない。

 都会のトロリーバスが姿を消した背景には、動力源である変電所を当時各地で撤去が進んでいた路面電車と兼用していて、トロリーバスのために変電所を残せないという事情があったようだ。言ってみれば、トロリーバスは路面電車と「心中」させられたようなかっこうである。

 それから時代は下り、今では世界的に環境問題に関心が集まっている。排ガスを出さずに乗り降りが楽で、環境にもお年寄りにも優しい路面電車が見直され、都市部のバスには低公害タイプが登場している。
 しかし、低公害タイプのディーゼルエンジンバスを増やすよりも、思い切ってトロリーバスを復活させてみたらどうかと思う。何しろ路面電車同様に電気で走るから、排ガスはゼロである。路面電車のように道路にレールを敷く必要がないから、建設費も安く済むであろう。バス停も今までのものがそのまま流用できるはずである。

 問題は・・・・
 1.「道路上の電線が街の美観を損ねる」
 2.「小回りがきかない」
 3.「電化鉄道路線の踏切をどう超えるか」

 ・・・・の3点であるが、1については道路の端のみに電線を張るようにしてやれば、ある程度は目立たなくなるであろう。2については対応が難しいが、電線に接するポールを長くしたりすることで解決できるかもしれない。3については、以前と違って今では鉄道路線の高架化・地下化が進んでいるから、トロリーバスの路線設定によっては踏切を通らずに済むだろう。

 トヨタのプリウスに代表されるようなハイブリッドカーの技術は年々高まってきているので、近い将来「バッテリーを動力とし、ポールとトロリーが無いトロリーバス」なんてものができるかもしれない。そうなると、トロリーバスという名称そのものを変えなくてはいけないが(^^;

 ディーゼルエンジンのバスよりも遙かに低公害で、地下鉄やモノレールよりも建設費が安くて乗り降りしやすいトロリーバスが、路面電車と共に復権する日は来るであろうか?

 2000.9.16