拙者の好きな「駅」 


 鉄道ファンが列車で旅する目的はいろいろだろう。まだ乗ったことのない路線の乗り潰しに燃える人・珍しい車両や最新型の車両に乗る人・いろいろな車両や鉄道施設の写真を撮る人・駅弁や駅ソバを食べ歩く人・硬券切符や駅スタンプを蒐集する人・・・・ひと口に鉄道ファンといっても様々なタイプの「人種」がいて、興味がどれかひとつに偏っているということはまず無いし、どれが正当派ということもない。いくつかのタイプを掛け持ちしている人が大半である。

 かくいう拙者は「乗り潰し」と「写真撮影」をするとともに、「駅巡り」に興味がある。駅とはいっても、新宿のような都会のマンモス駅や、新興ニュータウンにできたような実用本位の駅には全く興味がない

 拙者が惹かれるのは、ローカル線の鄙びた田舎駅である。年期が入った木造駅舎に1〜2人ほどの駅員がいて、むろん自動改札や自動券売機などなく、列車の発車時刻が近づくと出札口が開いて駅員が硬券切符を手売りする。列車交換可能な駅では、タブレットキャリアを肩にかけた駅員がホームを小走りし、ポイント操作をするレバーを動かすと、駅のはずれにある腕木信号機がカタンと音をたてる・・・・といった風景の駅が一番好きである。

 あとは、田んぼや山間部にポツンとたたずむ「ホーム一本だけの無人駅」というのもいい。といっても、国鉄・JRから転換した第3セクター路線によく見られるような、ホームを鉄骨で組んだ新設駅は味気ない。やはり、長年の風雪に耐えてきて、天然のウェザリングが施されていて、路線の開業当初から設置されているような古い駅がいい。
 たいていは、苔むした側壁のホーム上に簡素な待合室が載っているだけで、駅名標も多くて2つ。付近の名所案内板も無いことが多い。駅に接する道も幹線道路ではなく、クルマ1台がやっと通れるような細い道であることが多く、中には獣道みたいな道路を通らないといけないケースもある。

 最近は路線のCTC化や列車のワンマン化に伴って駅の無人化が進み、駅員が常駐しているローカル線の駅は、徐々に少なくなっている。昔ながらの駅舎が残っているのはまだいい方で、中には廃車になった貨車や車掌車を活用した味気ない建物?にとって替わられた駅もある。近い将来、駅員がいる駅は幹線のみになってしまうのかもしれないのかなと思うと、ちょっと寂しい気がする。
 

2000.5.13