駅弁へのこだわり


 旅と言えば駅弁・・・・というのは昔も今も変わらないようである。マイカーや飛行機を利用して旅する人が増え、鉄道利用者は昔ほど多くはなくなったけれど、毎日のように新作駅弁が登場している。春先や秋口によく放送される駅弁特集のテレビ番組や、有名デパートで開催される駅弁フェアなども好評のようである。海外の鉄道には駅弁というものはほとんど無いそうで、もしかしたら駅弁というのは日本独特の食文化かもしれない。

 かくいう拙者も、旅に出れば最低1つは駅弁を食べるようにしている。その場合、どこにでもあるような幕の内タイプは極力避けて、その土地の名物などを使ったり、包装紙や容器に工夫を凝らしたものを選ぶようにしている。

  ところがその駅弁も、最近様変わりしているようである。かつての駅弁のスタイルといえば、薄い木の板で組んだものに薄い木の板のフタを載せ、包装紙と割り箸を細いヒモで縛ったものが定番であった。
 しかし最近は森林資源の保全のためか、焼却可能なプラスチックや紙製の容器が増えてきたように感じる。包装紙が無くなって、容器そのものと一体化されているのもある。容器がコンビニ弁当みたいなものでは、誠につまらない。

 森林資源は大切にしなければいけないが、かといって駅弁のフタを開けたときにほのかに漂う木の香りは捨てがたい。あの香りがあってこそ、駅弁と言えるのではないかと思うくらいである。ワガママなようであるが、どんなに中味が美味くても、拙者はプラスチックや紙の容器に入った駅弁はあまり好きでは無い。「木の香りがする駅弁」は、いつもでも残って欲しいと願っている。

2000.5.3