うん知ってる☆





「いてっ!!」
「大丈夫?リョウマ」
牧場の柵を直していたリョウマが声をあげる。
一番側にいた裕太が心配そうに覗き込んだ。


バルバンを倒し、銀河の森も復活した。
本当だったら、すぐにも帰りたかったろうにリョウマ達は裕太の夏休みが終わるまで留まってくれるといった。
今日は、シルバースター牧場の修理を全員で行っている。
その中で、裕太はゴウキとリョウマと一緒に柵を直して回っていた。
何個めかの壊れた柵を直していたときのことだった。
ささくれ立っていた樹の破片がリョウマの指を切ったらしい。
裕太が心配気に覗きこむと丸い血珠が人差し指にできていた。
「痛くない?」
「大丈夫だよ。たいしたことないさ」
その小さな手でリョウマの手を包みこんでいた裕太は、しばしじっと手を見て
「リョウマって・・・・・手が綺麗だね」
と呟いた。
「え?」
「だってさ、手なんかつるつるしてるし、指細いし、もしかしたらサヤ姉ちゃんと同じぐらいなんじゃない?」
「そうか?」
リョウマは笑いながら裕太の問いに答えているが、後で見ているゴウキはハラハラモンである。
「そうだよ、手だって小さいしさ・・・・・怪我の手当てしてるときも思ったんだよね」
「手当て?」
「そうだよ」
兄を助け様とゼイハブに刺されたときのこと。
「そういえば、俺、気付けばあんなとこにいてさ」
「ねぇ? どうしてだろうね?」
くるりと裕太に振り向かれて、話題を振られても
「さ、さあなあ? どうしてだろう?」
としらを切るしかないゴウキである。
「裕太がきてくれなかったら俺、駄目だったかもしれないな」
「へへへ」
「なんの話だ?」
ギクウッッ!!!!!
とはゴウキが硬直した音。
(ああ・・・・・・!! やっぱりきてしまったのか!!)
「あ、兄さん!」
ヒュウガの視線がリョウマの(裕太が両手で握り締めている)手に向けられる。
「リョウマ・・・どうしたんだ」
有無を言わさずリョウマの手を取る。
「怪我をしてるじゃないか・・・・」
「へへ、ちょっと、引っ掛けちゃって」
「マッタク、オッチョコチョイは変わらないな」
柔らかいヒュウガの笑いが篭った声にリョウマが舌を出す。
と、ヒュウガはそのままリョウマの手を口元に持っていくと・・・・・
「に、兄さん、汚いよ」
リョウマの怪我した指をくわえてしまった。
ガタアア!!
「?・・・ゴウキ、どうしたんだよ」
突然つっぷしてしまったゴウキを不思議そうにリョウマが見やる。
「い、いや、ははは、な、なんでもないさ・・・・」
(お前〜〜〜!! 何とも思わないのかあ!? それとも、あたりまえのことなのか〜〜〜??)
普通、弟にはそんな事しない、と突っ込めないゴウキであった。
誰って?・・・・・・・勿論ヒュウガにである。
「さ、血は止まったから・・・・・」
「コレ使って?」
恐いもの知らずは裕太であった。
子供という立場をフルに使い、なんとヒュウガからリョウマの手をうばい自分のポケットからバンドエイドを出すとリョウマの 指に貼り付けた。
「・・・・・・・」
スゥゥッ・・・・・・と、気温が下がったような気がした。
ヒュウガの眼が細められる。
「ありがとう! 裕太、悪いな」
「ううんううん、なんか、リョウマの怪我の手当てするの、僕の役目みたくなっちゃったね!」
(はうわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!)
ゴウキは既にムンク化している。
「はははは、面白い事をいうな、裕太は」
ヒュウガの笑っているのにマジな目が恐い。
「だってそうなんだもんねぇ!」
こちらも只者ではない裕太だったりする。
にっこり笑ってリョウマに確認するという荒業をとって見せた。
「そうだな、なんだかんだ言って裕太には助けられているしな・・・・・」
こちらは、自分の周りでなにが起こっているかまるっきり気付いていないリョウマがしみじみとことばを紡ぐ。
ま、台風の目は穏やかで被害は無いって言うモンね。
「今も、俺がゼイハブにやられたときも裕太が危険を顧みずきてくれたんだよな・・・・」
「!!!」
兄ショックである。
確かに手当てしたのは裕太だったが最初に側にいたのはヒュウガだったのに!!
「リョ・・・・」
「リョウマ!! ちょっといい!?」
ヒュウガの声はサヤに遮られた。
「なんだろ、ちょっといってくる!!」
「ああっ・・・・・・!!」
リョウマが走っていってしまうとソコに残るは裕太とヒュウガ、そして逃げ遅れたゴウキだけだった。
「・・・・・裕太」
「なに? ヒュウガ?」
二人とも満面の笑みを浮かべている。
「俺がリョウマの手当てした事・・・・・」
「うん、知ってる!」
「そうか、なら、なんであんな事言ったのかな?」
「僕はなんにも言ってないよ?」
「?」
「リョウマが眼を覚ましたとき、僕が側にいたからリョウマがかってに思っただけだよ? 僕が助けたって」
「!」 
(恐いよう・・・・・・・・)
逃げたいのに逃げれないゴウキであった。
「そうか・・・・・なら言っておこう。リョウマの怪我な、俺の代わりに手当てして貰ってたすかったよ」
「別にお礼言ってもらわなくってもいいよ」
「?」
「ヒュウガのためじゃなくてリョウマのためだもん!!」
「・・・・・・いや、俺のリョウマのことだからな。例はキッチリしておかないとな?」
「・・・・・」
良く聞くと寒い会話を満面の笑みで行いつつ。
ひゅぅぅぅぅ・・・・・・・・
(さぶい・・・・・・・)
もう二人をどう止めていいかわからないゴウキであった。


どうやら、今ココにリョウマを挟んで壮絶なバトルの火蓋がきって落とされたようだった。



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