博雅の鴨葱レポート





「こんな都、滅びてもいいではないか。博雅」
そう言って笑う晴明に博雅は言葉を失って立ち尽くした。


「別に誰が帝になろうと構わないではないか」
その言葉は晴明が本当にそう思っているだけに始末に終えない・・・・!!と博雅は心の中で髪をかきむしってしまった。
晴明にとっては全くそのとおりで。
別に都に住んでいなくても本当に構わないのだ。
晴明ならば何処でだって生きていけるだろう。
自分とて道尊と同じようなものだ、といったけれど、はっきり言って道尊より性質(たち)が悪い。
まだ権力に固執している道尊の方がよっぽど人間らしいし、感情的に理解できる部分が全くないわけでもない。

だがしかし、今回ばかりはそういうわけにはいかないのだ。
博雅にとってはコレが最後のチャンスだったりするのだ。
決意も新たに、なおも晴明を説得しようとして先を制された。
「第一、博雅は何故今の帝にそんなに拘るのだ」
「別に・・・・・・拘っている訳じゃない」
心底不思議だ、といったような晴明に尋ねられて博雅はゆっくりと口を開いた。
なんといえばいいのだろうか。
「今の帝に治められて・・・・・都は十分平和じゃないか・・・・これがもし道尊が帝になったとしたら・・・」
「・・・・」
「この平和な世が崩れてしまうかもしれない・・・・・戦が起きるかも知れない」
「・・・・・それも運命さ、博雅」
晴明の静かな言葉に博雅が顔を上げた。
「もしこの世がそうなる運命ならば、いまここで抗ったとていずれそうなるだろう。もし、今の帝がこの世に必要とされている なら俺が出るまでもなくそのように進んでいくさ」
なんの抑揚もない晴明の言葉が博雅の胸にささった。
「博雅。お前はここにいればよい」
「晴明・・・!」
「俺は知っているぞ。お前は闘ったり争ったりすることが嫌いなはずだ」
「!」
晴明のその何もかもを見通したような視線に晒されて博雅は言葉を失った。
「ここにいればよい。他人の命を奪う事も奪われる事もない」
「でも! かわりに・・・・なんの関係もない命が失われるかもしれないじゃないか!!」
晴明の言葉はとても魅力的に博雅に届いた。ずっと奏していられるならどれだけ幸せだろう。でも。
「・・・・俺は・・・そんなのは嫌だ」
俯いてしまった博雅を晴明がじっと見つめている。
その、晴明の視線を感じながら博雅は手を開いたり閉じたりしながらなんとか言葉を綴った。
晴明に自分の気持ちを理解して欲しくて。
「俺は懸命に生きている人々が愛しいと思う。だから・・・生まれたばかりの命や・・・懸命に生きていこうとしているのを理不 尽に奪われるのを見るのは嫌だ」
「博雅・・・・」
「好きな人達だっている。父や母や乳母・・友人達・・・」
「・・・・・・・」
「お前にはそういう存在はいないのか?」

と、晴明にふった後に。

(ああ――――――――っ!!! だから俺は浅はかだというんだ――――――!!)

博雅が自分の頭を何度もなぐる。

「愛しい者がいるかと俺に聞くのか?博雅よ」
「う・・いや、別に無理に答えないでもいい!」
そういって視線を逸らしたが自分の頬が熱くなっていくのを博雅は感じていた。


何時頃からか、博雅は目の前のこの男の事を好きになっている自分に気付いていた。
それは、友としてではなく。
男が女をいとおしい、と思うように。

もっと、正直に言ってしまえば、目の前の男が欲しいのだと思う。

晴明に見つめられることに何時からか悦びを感じるようになっていた。
不思議な事にその視線に晒されるとなにやら居心地がわるいのだが・・・困った事にけっして嫌とは思っていない自分に気 付いてしまった。

いつから、体の奥が熱くなって・・・疼くように変化してしまった。

自分が色恋沙汰に疎い朴念仁だという事は十分に承知していた。
はっきりいって初めての相手は結婚する人だとも思っていたりもしたときもあったぐらいだ・・・今もそういえなくもない。
それは勿論、どこぞの姫君だと思っていたのに。
なのに、晴明の事をそういった意味で好きだと気付いたときに、なんの違和感もなく、ああ・・そうなのか、と納得してしまっ た自分がいた。慌てるでもなく、心の奥深い処にその気持ちがストン・・と落ちた。
そして晴明を見ている内に、本当に時たまだけれど、もしかしたら晴明もそう思ってるかもしれない、などと期待できるとき も、ほんっっとうに!! 極まれに!!!!・・・・・・思っちゃったりするときもあるようになって。

(で、でもそれは俺の思い違いかもしれないし! 普通に考えたらそんな事あるわけ無いし・・・!!)

と、何度そうして自分を納得させてきただろうか。
これは自分の願望だと。
願望がそう思わせていると。
第一晴明は朝廷では女御達や姫達に凄く人気があったりする。
陰陽師としての資質に優れ、歌を読み、雅を解していて。
冷めたようなその態度というのがクールだと評判だし。
ましてや尾テイ骨直下型のその声といったら。

博雅付きの女房達が噂しているのをチラッと聞いたのだが、聞いてどっぷり博雅は落ち込んだのだ。
あまりにも自分と違いすぎるから。

でも、目の前で望月の君が命を絶ったとき。
晴明が一晩中傍にいてくれてどれだけ嬉しかったか。

――――――― その晩の事は今でも忘れられない思い出となり博雅を支えていてくれる。

その優しさに触れて。
自分の、望月の君に抱いていた思いは憧れだったと今ならわかる。
晴明には・・違う。
触れてほしいと、自分だけ見ていて欲しいと思っている自分がいる。

だから、その気持ちはずっと封印するつもりだった。
告げずにおこうと思ったのに千載一遇のチャンスが訪れた事に気付いてしまったのだ。
こんなふうに確かめるようにしか気持ちを告げることの出来ない弱い自分が嫌だけれど、どうせ命を落とすのなら気持ち を伝えておきたかった。



意を決して顔をあげる。
「その、晴明・・・・話しておきたいことがあるんだが・・・・・」
「・・・なんだ?」
「その・・・あの、多分、このままで言ったら都は戦になるだろう?」
「・・・だろうな」
「そうしたら・・・俺は闘わなければならないだろうし・・・俺もそのつもりだ」
晴明が博雅の言葉を黙って聞いている。
「・・・あの、な・・・その先刻の話なんだが・・・俺にも・・愛しく思う者がいる・・・訳だ」
「愛しい?」
博雅の言葉に晴明が眉間にシワを寄せた。
柱にもたれさせていた体を起こし、博雅を見つめる。その視線がきつくなっている事に博雅は気付いていない。

だって自分の事で精一杯だから。

「う・・・まあ、そのなんだ。俺としては・・・打ち明けるつもりはなかったんだが・・・こうしていざ闘いに赴くとなると俺も何時命 を落とすかわからないだろう?」
「・・・お前は俺が死なせんよ」
さらりともの凄い事を言われて博雅が真っ赤になって口をひらく。
「・・・いいから、黙って聞いてくれって!」
晴明はなんの気なしにいった言葉だろうけど博雅にとってはどんな睦言より甘く聞こえて恥ずかしくて・・嬉しくって。
それだけで満足してしまいそうな自分をなんとか奮い立たせる
「それは戦でなくても同じということに気付いたんだ・・・」
「・・・・」
「何時人は死ぬかわからないから・・・俺は後悔のないように生きようと決めた」
「・・・そうか」
「死ぬ事を思えば、嫌われてしまったらどうしよう、なんて考えているのが馬鹿らしくなった・・・だってそうだろう、俺達は生 きているのだから何度もやり直しが効くのだし頑張ることができる」
「・・・・」
「だから、な・・・・・・その、俺は生きて戻れたら告白する事にした」
「そうか・・・・・・・・・・お前は本当に良い漢だなぁ・・・・・」
そう呟いた晴明の言葉に深い愛情を感じて博雅に少し勇気が沸いた。
口でこんな事を言いつつも博雅はとっくに死を覚悟していた。
道尊ともし合間見えることになったら、命を落すのは間違いなく自分だと博雅は知っていた。
帝を護るのが自分の役目だと信じているからこそ、なんの役には立てなくてもいざとなったら盾になるつもりだった。

晴明と道尊の呪のやりとりをみて、なんの力もない自分では相手になるまい。

相手ができるのは。
道尊に勝つ事ができるのは晴明だけだ。
だから、もし晴明がたってくれるのなら自分はなんの悔いもなく死ぬ事が出来る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この、気持ちを打ち明けて。
ならば晴明の負担にはならないだろうから。


「で・・・博雅にそこまで思いを寄せられているのは何処の姫なのだ?」
ぼんやり自分の物思いに浸っていて、晴明にかけられた言葉にとっさに反応できなくって、つい正直にポロっともらしてし まった。
「姫ではないのだ・・・・・・」
「・・・・・・姫ではない?」

晴明に聞き返されて。
バクン!!!と博雅に心臓が跳ねた。

一気に鼓動が早くなっていくのを自分の体の中で感じている。
本当はもうちょっと上手く誤魔化すつもりだったのに、つい正直に言ってしまったのではもう後戻りが出来なかった。
背筋を汗が伝い落ちるのを掌にも汗がにじんでいる。
顔はきっと真っ赤になっているだろうし握った手も震えて力が入らない。

でも。
ここまで来たら言わねばならないから。

「そ、そうだ!! ひっ・・・姫では・・・ないのだ!」
声がひっくり返ってしまって博雅は慌てて咳払いをする。
「姫じゃない? ・・・・ではどこぞの女房か・・?」
博雅は黙って首をふった。
「・・・・ならば・・・・・都で見染めた娘・・・・・か?」
「・・・・違う・・・」
博雅の答えに晴明が顔をしかめた。
「博雅? どうした・・・」
「・・おっ・・・俺が、好きなのは・・・男なのだ!!」


(嗚呼―――――――っ!!! もっと他に言いようがっっ!!!)
博雅が心の中で頭を抱え込んだ。


沈黙が漂う。
しばしして。

「お・・・とこ?」
晴明の確認するような低〜い声が聞こえ博雅は口から心臓が飛び出しそうな気持ちを味わった。
「・・・・しょっ・・しょうがないではないか!! 気づいたらいつの間にか好きになってたんだ・・・・・!!」
「・・・・・・・・ほう」
晴明の声のトーンが落ちる。

晴明の周りから一気に冷気が噴出しはじめたのを博雅は自分の気持ちを纏めるのに精一杯で気付かない。

「おかしいと思うか? ・・・・・晴明は・・・・俺の事・・・軽蔑するか? ・・・・・俺だって自分がどうかなってしまったと思っ た・・・」
懸命に声が震えるのを抑えようとするのだ、どうにもこうにも出来なくて唾を何度も飲み込んだ。
「いつからそう思ったかわからないんだが・・・・・・なんか・・・・その・・・・そいつの傍にいたいと思うようになったのだ」
「傍に・・・・?」
聞き返してきた晴明に博雅は小さく頷いた。
張り裂けそうな胸を押さえて告白する。
「本当は俺なんか必要ではないのかもしれない・・・でも、俺にはそいつが・・・高くそびえる山の頂点にたった一人で立っ て・・・そして天をじっと見つめている・・・・・そんなように見えてならないんだ」

それはずっと博雅が思っていた事。
あまりにも強大な力を持ちすぎるがゆえに、人とかけ離れてしまって。
あまりにもおおきな孤独に包まれてしまっているからこそ、その孤独に気付いていないような。
「・・・傍に・・・いてやりたい・・・いや・・・・・・・俺が側に居たいんだ・・・・・・・」
「・・・そこまで博雅におもわれるとは・・・・幸せな男だ・・・・・」
晴明の小さな呟きを聞いて博雅がバッ!と顔を上げた。
「本当にそう思うか!?」
「ああ・・羨ましいよ・・・」
同情や慰めなどではなく、心底そう思っている響きが感じられて博雅は勇気づけられた。
「お・・俺は・・その・・・その男が望めばなんだが・・・・・その・・・なにをされてもいいかな、なんて・・・・・・・・」

「・・・・ほう」

晴明が目を細めた。
周辺の冷気が今度は重くなったようだ。

だが、博雅はここまで言ってるのに気付いてくれない晴明にやきもきするばかりで、周囲のことが全然目に入っていない。

晴明が全然気付いていない様子や嫉妬の炎を燃やしまくりだったりしていることもわかってないのだ。


「さて…博雅がそんな風に思う漢は誰であろうなぁ・・・・」
その言葉の後に"殺す!"なんて物騒な考えが浮かんでいるとは博雅は気付きもしない。

とうとうきた質問に、博雅が完全に強張ってしまった。
喉が詰まってしまったようで声が出なくなっている。
そう来るかな、とは思っていたが本当に来られてはやっぱり困ってしまう。
なんといっていいかわからなくって黙っていたら晴明から聞いてきた。

「俺が知っている漢なのか?」
晴明の問いに無言でブンブンと頷く。
「・・・・」
再び晴明が黙って考え込んでしまった。
どうやら判っていないらしい晴明を(いい加減気付け!!)と心の中で張り倒す。
できるなら自分で完全に言う前に晴明に気付いて欲しかったのに!!・・・なんて甘えた考えがチラッと脳裏をも走ったけ れど。
「そっ・・そっ・・その!!」
どもりながらも何とか話しだす。
声が上ずっているのだが晴明は笑いもせずに優しく聞き返してくれた事が博雅を勇気付けた。
「ん?」
「俺が! ・・・一番辛かったとき! ・・・・ずっと・・・・傍にいてくれたのだ・・・・・・・・」
語尾がドンドン小さくなってしまう博雅の言葉に晴明の顔が変わった。

「博雅・・・・?」
「・・・・意地悪な漢なのだが・・・・・・・・とても・・・優しくて・・・」
座っていた晴明が立ち上がって。
「・・・・・・・・・・・・そいつが・・・望むなら・・・・俺の全てをやっても、いいと・・・・・・・」
「本当・・・なのか? ・・・博雅」
何度も頷く博雅に晴明が手を差し伸べようとしたとき―――――――――――――――。

事態は急転した。


「晴明様!!」
今まで黙って見ていた蜜虫が声を上げた。
手にした花がしおれている。

「将軍塚の結界が破られたのだ」

「・・・チッ・・・」
密虫は晴明のその小さな舌打ちを聴かなかったことにした。


「それでも未だ立たぬと言うのか!」
すがりつくような博雅の声に晴明が頷いた。
「・・・・判った・・・お前の為に行こう」
博雅が嬉しそうに笑う。

実はこのとき。
突然降りかかった事の重大さに博雅の頭の中から自分の告白のことがスッカリ消え去っていたのだ。



そして、全てが終わって。

「人の心は鬼にも仏にもなるのだな・・・・」
濡れ縁で晴明と酒を酌み交わしながらそう呟いた博雅は道尊と晴明の闘いに思いをはせていた。
あんなに恨みに凝り固まっていた早良親王の怨霊も結局は青音の彼を思う心に姿を変えた。

青音の魂を宿したときに、青音には全て見えていた事を知った。
自分が道尊に狙われている事も命を落とす事も。
ただ早良親王に会う為に全てに青音は黙っていたのだ。
泰山府君の儀を行わせ命を博雅に移させる為に。
けれど人を思う心を知った今なら青音の気持ちが理解できる。
許す事も今ならできるから、晴明には何も言わないで黙っているつもりだった。

もしあの戦いで晴明が命を落としていたら・・・。

自分とて愛しい人を思い怨霊となってしまったかもしれないから。
博雅は早良親王と青音があの世で幸せになれるようにそっと祈っていた。
(・・・・・しかし・・・なんか、俺忘れてるような・・・・・・・・・・)
そんな事を考えながら。



「で、博雅」
「なんだ?」
杯を置いた晴明が顔を上げた。
「博雅は思いを打ち明けられたのか?」

ブ―――――――――――――――――ッ!!!!!!!!!

博雅の口から勢いよく吹き出された酒を袖でよけて。

「汚いな、何をあせっている」
ゲホゲホと咽て言葉もでない博雅に近寄り背中を撫でる。
「なっ・・なにを突然・・・!」
漸く落ち着いた博雅が何とか顔を上げて・・・・・・・固まってしまった。
何時の間にか抱きかかえられるようにして晴明が間近に接近していたからだ。
「突然ではないだろう」
「ちょ・・・ちょっと待て」
真っ赤になって晴明をどかそうとした手を反対にとられる。
博雅は本当に忘れていたのだ。
あの時は死を覚悟したからこそ言えたのだし、気持ちには嘘偽りはないけれど、今こうして真昼間に向かい合ってどう、と いうのは又話が違う。

「待てん」
そんな博雅の考えを見抜いているのか、晴明は目を細めて笑いながら手を口元にそっと運ぶ。

刀や弓を持つ事で硬くなっている自分の手とは違いしなやかで綺麗な指に見惚れて抵抗は出来なかった。
「どうするのだ・・? 博雅・・・」
低く囁かれて博雅の体が震える。
力が抜けた手の甲に晴明の冷たい唇を感じて腰が砕けてしまった。
体を支えていられず、思わず晴明の腕にもたれてしまったのだが、自分より小柄なはずの晴明はビクともせず博雅を抱き とめた。

何の香を焚き染めているのか、いい香りに包まれてぼうっとしてくる。

「博雅? ・・・言ってはくれないのか?」

顎を持ち上げられ小さく震えるのを押さえきれず。
自分の唇に吐息が掛かった瞬間。
其処がどこかを思い出した。

「まてっ!!」

慌てて体を捻り晴明の腕から逃れて四つんばいのまま慌てて離れる。
「・・・博雅」
より一段と低くなった声で呼ばれてビクッと硬直した。
「い、今なんどきだと思ってるんだ!! こっ・・・こんな明るい時間に、濡れ縁なんかで・・・!」
なんとか立ち上がろうとして、腰が砕けていることに気付いた博雅があせりながら後ずさる。
それに気付いたのか晴明は面白そうに目を細め立ち上がった。
「では濡れ縁でなければいいのだな?」
「そ、そういうわけじゃ・・・!」
ゆっくりと近寄ってくる晴明を真っ赤になって見上げるものの逃げ様もなく。
でも、どこかでそう出てくれる晴明を嬉しく感じていて。
「ならば明るくなければいいのか?」
晴明が指を慣らすと御簾が落ちて部屋を密室に変えた。
何もかも照らしてしまう明るい太陽の光は御簾を通して二人を包む薄茶の光へと形を変えた。
少し位置を変えて御簾を落としただけなのに、淫靡な感じを醸し出したような気がして、博雅は一気に身体が熱くなる。
「博雅・・・・これでもまだ・・・俺を焦らすつもりなのか・・・・・?」
後から抱きこまれて、耳元で優しく囁かれる。
柔らかく耳を噛まれ博雅は背筋に電流が走って。

「せい・・・・・め・・・ぇ」
博雅の小さく晴明の名を呼ぶ声と衣擦れの音が響く。


後は―――――――――――――――。








すっかり事が終わった後。
博雅を腕の中に抱きながら。


「で、博雅、告白はしてくれないのか?」


そんな風に囁く晴明に顔を真っ赤にする博雅という光景が見れて、すっかり密虫を楽しませた平和な昼下がりのことでし た。




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