プロポーズ





「プロポーズですか? したことはないですけど、されたことならありますよ」

 とある午後のティータイム。定例と化した検査の後のお茶の時間にふとそんな話題になった のは、やはり悪魔の導きだろうか。
「おいおい、本当かぁ」
「本当ですよ」
「怪しい」
「嘘じゃないですよ。歩美ちゃんでしょう、友里ちゃんでしょう、それと裕幸に愛ちゃん、そ れから修作に恵美ちゃんに綾香ちゃんに翔太、あとは……」
 どうして男の子の名前ので入ってるのかはお約束ということで。
 とにかくはてしなく並べられてゆく名前に、室内の温度がみるみうちに下がってゆく。
 警戒警報発令。言い忘れていたが、その場には恐怖の暴走刑事・一条薫も同席していたの だ。
「水穂ちゃんに大樹に若葉ちゃん、それから……」
「ちょぉっと待て、五代」
「なんですか?」
 室内に立ち込める暗雲に、まったく気付かない雄介は、やはり大物だろう。
 まぁ傍で見ている分にはおもしろいが、一応ここは椿に与えられている個室なのだ。器物破 損は遠慮したい。
「オチの予想は付くんだが、一応、聞いておくぞ。その子たちの平均年齢は?」
「ん〜〜6歳ぐらいかなぁ」
「てことだから、頭を冷やせ、一条。こいつの妹さんが幼稚園の保母さんやってることはおま えも知ってんだろう」
「俺は別に」
 言葉とは裏腹に、あっという間に室内の暗雲が晴れてゆく。つくづく解りやすいやつだ。
「おまえもあんまりこいつを刺激するなよ、こいつの性格はもう身にしみてるんだろ」
「ははは……」

 
 さて、ここで問題です。
 雄介にプロポーズした面々の平均年齢は6歳です。
 では、一般に3,4歳から6歳までの三年保育である幼稚園児の平均年齢はいくつでしょ う?

 この矛盾に気付いた一条が雄介に詰め寄るのはまた後日。


TOPへ    小説TOPへ