おまもり その後(ギャグ編)





ガチッ
撃鉄の起こされる音に、二人は慌てて現実に戻った。
ただならぬ気配に恐る恐る振り向けば案の定、顔はポーカーフェイスのままなのに、背中にブ リザードを背負った一条警部補がドアの前に。
「これはいったい、どういうことなのかな、五代雄介、椿秀一」
「えぇっとぉ……」
おもわず視線が踊ってしまう。
「とりあえず銃をしまったらどうだ。」
「あぁすまんな。つい条件反射で」
「なんの条件反射だ」
「五代(=4号)が襲われているのを見るとついな」
「俺は未確認か」
「どちらも俺と五代の平和な生活を邪魔する害虫という点では同じだな。と、逃げるなよ、五 代」
「あははははは〜」
笑ってごまかす。二人が低レベルな会話をしているうちに、窓から脱出しようとしたのだが、 甘かったらしい。
「で、説明してもらえるんだろうなぁ、五代?」
「え、いや、その」
「椿」
「任せた、五代」
「えぇ〜! そんなひどいですよ、椿さん」
「人を煙に巻くのは得意だろう」
「椿さん程じゃありません」
「人を一条みたいに言うな」
「どうしてそこで俺の名前が出てくる」
「おまえのことだ、どうせ口八丁手八丁で五代を口説いたんだろう」
「人聞きの悪い。誠心誠意を込めて正々堂々口説いたぞ」
「そうかそうか、正々堂々有無を言わさず押し倒したわけだな」
「同意はとった」
「押し倒してからな。それを言ったら、さっきのだって、同意の上だよなぁ、五代」
「えっそれは、その……」
「そうなのか?」
「えぇっとぉ」
「まぁいい。聞かなくてもだいたい予想は付く。さしずめなにか相談に来た五代に、おまえが付け込 んだってとこだろう」
 当らずとも遠からずという言葉に、椿と五代の背中に冷や汗が一筋流れる。
「それで、なにを椿と話してたんだ、雄介」
「ハハハハハ……」
 気が付けば、さりげなく呼び方が変わっていたりして。警戒警報発令。
「まぁいい。ここでは話し辛いだろう。部屋に戻ったらゆっくり聞かせてもらうぞ」
「あ、はい」
 内心助かったと、雄介が息を付く。ビートチェイサーに乗ったら、なんだかんだと理由を付 けて。逃げてしまえばこっちのものだ。───が、
「あぁ五代。帰りは俺の車に乗っていけ」
「え、でも、病院に置きっぱなしじゃ」
「職員用の地下駐車場に移動して、保管しておいて貰えばいい。そのくらいの処理はやってく れるんだろう、椿」
「判った」
そのくらいの労働で済むのなら、たやすいことだ。
「いや、でも。なんかあったら…警察の備品だし」
「大丈夫だ。起動キーはここにあるからな」
 と、どこから出したのか、一条の手にはビートチェイサーの起動キーが。これがなくては雄 介も逃げ様がない。どこまでも用意周到な一条であった。
「だから、自力で押して行ってもらうことになるが、構わないよな、椿」
「……あぁ」
 ここで嫌だなんて言えるものか。
 キーなしでビートチェイサーを動かすのに、どれだけ体力を使うことになるのか。ニッコリ 笑顔の一条の向こうに椿は地獄が見えた気がした。
「じゃあ行こうか、五代」
「い…一条さん」
 しっかりと腰を捕らえられて五代はずりずりと連行されていく。
「まぁ、とりあえず、がんばれよ、五代」
 これからの五代の運命と、自分の労働とを考えて、一人天を仰ぐ椿だった。



 ………そのあと五代くんがどうなったかなんて、とても怖くて書けない私。