はじめての……《1》






「なにぃ、お前まだシたこと無いのか!?」
「声が大きいですよ!椿さんてば!!」
「・・・・・」
それは、珍しく男3人で酒を飲み交わしていた日の出来事だった。


「だってよ、お前何歳になったんだよ・・・・・」
呆れたような声を出す椿を真っ赤になった雄介が睨む。
「いっときますけど、全然チャンスが無かったって言うわけじゃないんですからね!・・・た だ、なんか一寸違うかなって」
「ちょっと違うって?」
「・・・・・・この人じゃない、っていうか、その、俺が最後まで、してもいいなぁ、って思うの は・・・・」
「かぁ〜! なに乙女ちっくなこと言ってんだか! 途中でやめるなんて相手も可愛そう に・・・」
椿のからかいに五代がムキになった。
「いいじゃないですか! 椿さんと俺とは違うんですから!」
一条と椿の学生時代の話が出たときに嫌な予感はしたのだ。
なにしろオットコマエなお二方だ、そりゃあもう華やかな事だったろうと思ったのだが
・・・・・・・・・想像以上のものだった。
確かに、男として一寸は羨ましいと思った雄介ではあるが、セックスに対する考え方は人それ ぞれだからどんな経験をしてもいいと思っている。
そして、雄介はは世界中を回る父からことあるごとに聞いていた母との恋愛話を聞いてそう 思っていた。
「そうだぞ、五代。人それぞれだからな」
「一条さん・・・・、そうですよね!」
優しく微笑まれて思わず五代は一条に擦り寄っていった。
・・・・・・・・ちょっと酔いが回り始めているのかも知れない。
「・・・・ええかっこしい」
「なにか、言ったか? 椿」
「別に」
ニッコリ笑って答える。
「で、なんでそう思ったか教えろよ」
「やです」
椿のおねだりに即答する。
「俺が悪かったからさぁ、反省してる」
「・・・・・」
「な、五代、教えてくれないか」
とびっきりの笑顔で一条が言えば五代は一寸赤くなりながらも話し始めた。
「あのですね、父親と旅行してたときに夜になると時々話してくれたんですけど、・・・・うちの 父って孤児だったんですって」
「え・・・・」
「一人で育ったから、愛情に餓えていたって言ってました。悪い事もいっぱいしたって」
「・・・・・」
「でも、おやっさんにあって、世界中を巡るようになって、写真と出会って、自分で色々考え るようになれたら今まで自分がどんな酷い事をしてたか判ったんですって」
「だから、その罪滅ぼしっていうか自分は家族は持つつもりが無かったっていってました。で も母に会って世界が180度かわったなんていうんですよ。なんってったって出会ったときに雷 落ちたなんて、言うんですから」
ハハハと五代が照れたように笑った。
「いろいろ悩んだんですって。でも、離れたら死んでしまう、って思ったって。結ばれたとき には天国に行ったようだったって」
「・・・・・」
「そうして授かったお前達はお父さんの宝物だって、何回も聞かされたんです。だから、なん かいろいろ考えちゃって・・・」
「そうか、素敵な人だったんだな」
「悪い、茶化したりなんかして、そんな風に考えていたんだな」
椿も素直に頭を下げた。
「あ、やだなあ、もう。やめてくださいって。俺がお子様な考えなんですから」
「そんな事は無いぞ!」
「女の子にも言われましたよ。外国の子の方がオープンですからね。性にたいしては」
「それなりに経験はしてるんだな、五代も」
「まあ、付き合ったことはありますから。でも・・・・」
ちょっと言いよどむ五代の先を黙って促す。
「それこそ女々しいって、言われるかもしれないんですけど、きっと判ると思うんです。俺の 全てを捧げてもいいって人に会ったら。そうしたら、そのときはって・・・・」
項まで真っ赤にして俯きがちな五代は、そこまで言うとバッと立ちあがった。
「なにいってるんでしょう、俺って。へへ、ビール取ってきますね」
はにかんだ笑顔をみせてとキッチンへ姿を消した。
奇妙な沈黙があたりを支配する。
「・・・・一条」
「・・・・なんだ」
眼が合う。どうやら、考えている事は同じらしい。
男達は一瞬にして判り合ったのだった!!
「ふ、どうやら同じなようだな」」
「やはり、おまえは心友。となると・・・・アレしかあるまい」
「そうだな」
椿と一条は肩膝を立てて向かい合った。
「「ジャンケン ホイ!!」」
二人の声がピッタリと重なった。
「「ホイ!!」」
「「ホイ!!」」
「「ホイ!!!」」
「よっっしゃあ!!」
「あああああ!!ちくしょう!!」
どうやら勝負は付いたらしい。一条がガッツポーズを決め、椿が頭を抱えた。
「悪いな、椿。1番、と言う事で」
「ちぇ、ほんとにいざって言うときは強いよなぁ・・・・」
椿が口を尖らす。
「・・・・・・どうしたんですか?」
もどってきた五代が手にビールを抱えて首を傾げる。
「あ、なんでもないんだ」
「そうそう、さ、飲もうぜ」
「・・・・はあ」
不思議そうな顔をする五代は、その自分の表情が相手にどんな風に写っているかなんて思って もいなかった。



話に花が咲きドンドンビールが空いていく。
五代の顔がほんのりピンク色になっていくのに対して二人の顔色は変わりもしない。
五代の眼がトロン・・・・としてきたころ、椿と一条の視線が絡み、椿が五代に擦り寄った。
「ところで、五代、さっきの話なんだが・・」
「はぇ?」
一瞬何の事かわからずポヤンと聞き返す。
「人生の先輩として助言するが」
あくまでも真面目な表情を崩さない。
「お前、やり方は知ってるんだろうな」
「・・・・・・! 知ってますよう!!」
五代の顔が更に赤くなる。
「知ってるだけじゃ駄目なんだぞ? アレは結構重労働なんだからな?」
真面目な椿の表情に、五代は思わず一条を見る。
「そうだな、俺も最初は凄く大変だったな」
「ええ! 一条さんも?」
真面目に一条に言われてちょっと五代の心がぐらついた。
「五代が大分夢を持ってるようだから言っておくが、お前が思うように相手も思ってるぞ」
「なにをですか?」
「素敵な体験」
椿に言われて、普段なら考えもしない事がだんだん不安になってきた。
はっきり言って酒のせいでもあるが、何しろ一条が真面目な表情で会話に参加していると言う 点も在る。
なんてったって、五代の中で一条と言えばスマートな"白馬に乗った王子"のようなイメージが 在る。
(――――――― 『知らないって、恐ろしい』、とは椿後日談。)
その一条が大変だったって・・・・
「女の子は素敵なリードを望むからな、お前の父親だって、経験は積んでたんだろ?」
「・・・・多分」
「だから、優しくできたんだと思うぞ?な、一条?」
「そうだな、とかく女性は男性にスマートなリードを望みがちだな」
経験豊富な二人に言われると五代の心の中の不安がドンドン大きくなってきた。
「そこでだ」
「え?」
「先刻の詫びも含めて、俺等が教えよう!」
「・・・・なにをですか?」
「HOW TO SEX!!」
ドガッ!
「いてえ!」
「下品だぞ、椿」
にっこり笑う一条の蹴りが椿の後頭部に綺麗に決まった。
「・・・ともかく、どうしたら困らないか練習しておいたほうがいいだろう?」
「そう、俺等男だから女性と経験した事にはならないからさ」
二人にあれよあれよと話を進められて五代の口を挟む隙が無い。
「で、でも、練習っていったって、どうやって・・・」
五代のセリフは・・・・・二人の罠にはまったも同然のセリフだった。



「まずは取っ掛かりとも言えるキスからだな」
「取っ掛かりって・・・・」
「これはな、馬鹿にできないんだぞ」
「え・・・・」
「キスの上手下手は女にとっては大事なことだからな、ここで躓くとまず点数が半分減点され る」
「半分て・・・・」
椿の言う事を今いち馬鹿にできないかも、何て思ってしまう五代はもうすっかりドツボには まっている。
「そこでだ、大体シチェーションが似ているからな、この場を利用しよう」
「シチェーションテて?」
「そうだな。大体軽く食事をして、酒を飲んだりしてから部屋なりホテルに行くのがパターン が多いからな」
一条に言われて五代がそうだったっけかな・・・・と自分の過去を振り返る。
「で、五代、一条にキスしてみな」
「はあ・・・って、ええええええ!!?」
椿の言った事を理解して五代が叫ぶ。
「ななななななんで、いいいい一条さんに、キスを・・・・・・」
「いや、一条の顔の方がまだ抵抗無いだろ」
椿に言われて一条を見る。
そりゃあ、どちらかといえば椿はハンサム、一条は綺麗、だから一条の方がまだ抵抗は少ない ような気がしないでもない。

「で、でも、一条さんは平気なんですか?」
「ああ、俺で役に立てることがあるなら何でもするぞ、こんな事ぐらいしかできないがな」
「・・・・・一条さん」
上手い・・・・・と思わず椿は呟く。
「さ、とりあえずしてみろって」
椿に促されて五代は戸惑ったものの漸く腹を決めたようだった。
(うん、どうせ、最後までやる訳じゃないし、・・・確かにちょっと知りたいような気がする し! キスぐらい!)
「判りました! じゃ・・・」
一条の前に膝立ちになる。肩に手を置くと一条が軽く眼を伏せた。
(うわあ、睫毛長い!!)
その美しい顔立ちに一瞬見とれる。軽く顎に手を添え心持ち持ち上げると五代はそっと唇を寄 せた。
触れた瞬間に五代に方がピクッと反応してしまった。
暖かく柔らかな、でも過去の女性達とのキスとは違う唇の感触で、一寸強めに唇を押し付ける と一条の唇が薄く開いた。
五代の中で一条が急に生身の人間として実感されて、慌てて離れてしまう。
「どうした?」
「うわっ!」
耳元で椿に低く掠れた声で囁かれ思わず首を竦める。
「やや、やめてくださいよ!もう」
「なんだ、耳が感じるのか」
「違いますって! ・・ちょっとくすぐったかったんです!!」
耳を抑えて真っ赤になっている五代をふうん、と見やると椿は一条に尋ねた。
「で?」
「・・・・・甘くみて、40点」
「ええええ!!」
五代が叫ぶ。あんな恥ずかしい思いをしたのに、その点数とは!!
「・・・しょうがないな、一条、一度見本を見せたほうがいいんじゃないか?」
椿が溜息を付きつつ言う。
「そうだな、自分で体験したほうがいいか」
「五代、今から一条が満点なキスってヤツを見せてくれるから体で覚えるんだぞ」
え?、というまもなく一条に抱き寄せられる。
腰を抱えられて胡座をかいていた一条の膝の上を跨がされて抱きかかえられる。
「え?え?」
力強い腕にしっかりと抱きかかえられてしまい、身動きができなくなる。
まず頬にキスされた。次に顎に、鼻先に、まぶたに、かすめるようなキスが降ってくる。
その優しいキスに五代の身体から力が抜けた。
唇が重なる。軽く何度も啄ばむようなキスが送られる。くすぐったくなって思わず息が漏れ た。
「・・・ふっ・・」
もちろん一条がそれを見逃す筈も無く、唇がしっかりと重なり合った。
「ん!!」
驚いて、閉じようとしたが頤をしっかりと抑えられ唇を閉じる事ができなくなっていた。
顔の角度を少しずつ変えてキスが深くなる。
「ん、ん、んっぅ・・・・」
侵入した一条の舌が逃げ惑う五代の舌を絡め取ったとき背筋を走った感覚に五代の身体が震え た。
「・・・どうした五代」
「んん!!」
後から耳元で吐息とともに椿に囁かれ五代が眼を開く。
一条と瞳があった。
見られている・・・・・、一条のその瞳に自分の表情が見られていたと思うと恥ずかしくなって ギュッっと眼を閉じる。
「五代は耳が弱いんだ・・・」
「!!んん・・・・」
舌を絡め取られても、口が塞がれているから声も上げられない。
後から椿に抱きしめられ一条と椿に挿まれる形になった五代は身体を動かす事ができないのを もどかしく感じる。
そのとき、ピチャ・・・と耳の中から濡れた音がして、思わず腰から力が抜けてしまった。
椿の舌が五代の弱い部分を舐めまわしたのだ。
今では一条の、キスというよりは激しい接吻に翻弄されてしまって。
背筋を這い上がってくるムズ痒いような熱い感覚が五代の思考を奪う。
「・・・ぅふ・・・んっ!・・・・はぁ・・・んぅ・・・・」
椿の唇が耳元と首筋を道順を変えながら何度もゆっくりと上下する。
一条の手が背中から、お尻、脚へのラインをゆっくりと辿る。
何時のまにか椿の手が五代と一条に間に入り込み五代の身体を弄っていた。
イヤイヤというふうに弱く首を振っても逃げられなかった。
「・・・こんな、ふうに、触ってやるんだ・・・・。嫌じゃ、無いだろ・・・・」
椿に囁かれてぼんやり考える。
一条に座れる舌がジンジンと痺れているようなのに、嫌じゃない。椿の手の感触も。
・・・・・嫌じゃない。
口の中に溢れた一条の唾液だって飲み込むのになんの抵抗も感じていないのを五代は不思議に 思った。
「・・・ふぁ・・・・」
漸く話されて大きく息を吸い込んだ。
「ああっ・・・・!」
椿の指がTシャツの上から五代の胸の蕾を軽く引っかいた。
「どうした?・・・」
今度は一条に耳元で囁かれて思わずシャツを握り締めた。
「やあ、あ・・・なん、でぇ・・・・!」
つま先で何度も戯れるように椿の指がソコを引っかいたり摘んだりして。
そのたびに五代の身体が跳ねる。
「好きだ、五代・・・」
「・・・な、ずっと、俺達といよう・・・・」
「・・・・なにも、考えないで、感じてくれ」
「五代・・・・」
ぼんやりとした頭で五代は一条と椿の言葉を聞いていた。




自分達の腕の中で翻弄される五代という存在がいとおしかった。
一人で戦いに立ち向かおうとする彼を放っては置けないだけだと思っていたのに。
何時の間にかその魂を愛しいと思っていた。
そうしたら、身体も全てが欲しくなった。
己のものにしたい、とは思っていたけど手は出せなかった。
だけど、まだ誰にも染まっていないと判ったときには心は決まった。
自分のモノにする、と。
無垢な身体を自分達を教え込ませて、他に眼など向けさせないと決めた。
幸せにできる自信も在る。他もどんな人間よりも。
だから。



「好きだ、五代・・・・」
他のことなど考えられないような快楽を与えて、自分達の色に染めてしまおう。





う〜ん、一応リクエストに答えたつもりが前後編になってしまった。いや、後編はただやって るだけなんですが。
ねえ、このラインなら表にのっかる?
鬼畜な獣共だが愛はあるのよ!!
ねえ、こんなんでいいのかしら。いいんなら後編も書くけど、本当に鬼畜な人達なのよう!?
そしてやってるだけなんですよう!いいの?               BY樹

ありがとう、樹さん、感謝☆ 続き、待ってるわ☆☆☆(ひかる)


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