あなたが好き…だけど……







ここは一条の部屋・・・・の寝室。そこでは、真昼間から大の男二人がベットの上で見詰め合って いた。
「ちょっと待って下さい・・・?」
上から圧し掛かる一条を懸命に押し上げようとしながら雄介は、一寸疑問に思ったことを尋ね てみた。
「なんだ?」
一方、一条は自分の邪魔をされてその端整な顔をしかめながら答えた。
「この体勢からいくと・・もしかして俺が下ってことですよね?」
沈黙。一条はフゥ〜ッ・・・・とため息を付く。
「それ以外に何があるっていうんだ? ・・まさか、俺にのっかるつもりだったのか?」
さも当然という一条のセリフに雄介が焦る。
「お、俺より全然綺麗な顔して何言ってんですか!! ヴィジュアル的に一条さんの方が下で しょ」
「・・おまえ、それは俺をねじ伏せてから言うんだな。こんなに細くって俺を押し倒せるとで も思っていたのか?」
雄介の腰を撫でる。
「俺は普通です。」
ベットの上で、密着して交す会話でもないような。


悩んで、悩んで告白した。
報われるとは微塵も考えてはいなかった。世間一般に受け入れられる物じゃないとわかってい たし。ただ、言わなければ胸が張り裂けそうだったので、玉砕するつもりで打ち明けた。
「俺も・・・・好きだ」
といわれたときには天にものぼる気持ちだった。
・・・・だが、二人の間には広くて深くて流れの速い川が流れていたので。ソコを乗り越えて二人 が幸せになるには渡る橋は狭すぎて。どちらかが犠牲にならなければならないはめになってい たのだ。


「警察官の体力舐めるなよ」
「わー!! ズルイ!!」
はっきり言って、雄介がいくらクウガでも戦闘技術においてはズブの素人同然。柔道・剣道と 身体を鍛える事を怠らない一条に手も足もでない。まして、上から体重をかけられて乗っから れていられてはどうしようもない。アッというまに手をネクタイで後ろに括られてしまった。 まして足まで固められてピクリとも動かない。その間にフラチな手があちこち悪戯をはじめ る。
「どうした?俺に乗っかりたいんじゃないのか?」
面白そうな一条を恨めしそうに見上げる。そのまま唇が寄せられる。互いに見つめあったまま のキス。
「ん・・。」
軽く触れるキスから徐々に深く舌を搦めあう。お互いを瞳の中に止めたまま、逸らしてしまえ ば消えてしまうのではないかと畏れているのかのように。
やがて一条が覆い被さって来ると、雄介の視界は一条に遮られ暗くなってしまう。ゆっくり雄 介は目を閉じた。互いの舌を激しく絡ませあい、雄介は一条から送り込まれる唾液を懸命に 飲み込んだ。
「雄介・・・。」
漸く雄介を口付けから開放すると、ボーっとしている雄介の顔中にキスを降らす。洋服のスソ から手を差し込もうとした瞬間、我に返った雄介が身体を捻って一条の下から抜け出した。
「ちょっと待ったぁ!! 危うくながされちゃう所じゃないですかっ!!」
チッ・・と、うまくは流されてくれなかった雄介に舌打ちをする。互いに両想いなのはよかっ たが、こんな事になるとは一条だって計算外だった。それは雄介にしても同じ事で。
(一条さんてば予想外だよ〜!!)
雄介は焦っていた。あんなに綺麗な顔してイケイケだとは。ストイックに見える一条はまるっ きり何も知らないように見えたのに。
(しかも強すぎ)
本当ならば体勢は逆なはずだったのに。このままでは押し切られる可能性もある。なんてっ たって、後ろ手に縛られたネクタイはどんな結び方をしてるのか緩みもしない。冒険をして、 世界をあちこち回った自分の方がいろんな意味において経験は豊富なつもりだったが、実は、 一条の方が・・・・もしかしたら上手かも知れない。
それに、雄介は自分がスッゴイ面食いだって事を自覚している。しかも一条の顔は、そりゃあ もう雄介の好みのタイプ、バッチリ理想の顔なのだ。その顔で、
「なぁ? 五代」
なんて、そんなふうにはんなりと微笑んで、お願いされちゃったら。
「そんな顔したってダメですからね」
・・・しょうがないかな・・・・って思ってしまいそうになる自分を叱咤する。恐ろしいのはそんな ふうに思ってしまうって事を一条も知っているということだ。
「なにが、なぁ?なんですか、こういうのはちゃんと話し合ってからにしましょ?」
何分状況は雄介に不利すぎる。折角、一条の下から脱出したのに足首を捕られて引き戻されて しまった。
「痛くしないから・・・」
一条の極上の微笑、が、だまされないぞ、と下っ腹に力を入れる。
「やっ!!!です」
「・・・・・・・なんで、そんなに嫌かな」
「一条さん、自分のモンの大きさってもの、わかってます?」
「小さいか?」
「おおっきいんです!!」
「なら、いいじゃないか。世間一般では大きい方が喜ばれるんだぞ?」
「そんなの突っ込まれるほうの身にもなってくださいよ!! 痛いに決まってるじゃないです か!!」
偶々検査の時に、偶然目撃してしまったソレはあまりにも立派な息子さんで、ちょっと羨まし いなんて思ってしまった雄介である。
「じゃあ、雄介は俺に痛い想いをさせるつもりなのか?」
「一条さんも痛くするってことですよね」
「・・・・・・揚げ足とるとは可愛くないぞ」
むっとする一条に雄介は微笑んでみせる。
「一条さん、俺は普通サイズだからきっと平気です」
「馬鹿だな、俺にはソレを補ってもなおあまりあるテクニックと言うものがある」
「・・・・・・・自分で言いますか?」
「死ぬッ・・・て言うほど良い目をみさせてやるからな」
「わーっ!! わーっ!! 待った!!」
なんとか逃げる。
「そうじゃないでしょ!!」
「そうか?」
雄介だけに判る一条のおねだりの微笑み。
ズルイ。そんな顔で笑うなんて。雄介がグッとつまる。そのスキを一条は見逃がさない。
「俺は雄介に入れたい。お前に包まれてイキたい。」
「・・・・・」
「・・・・そのかわり、お前は俺の口の中でイカせてやる。・・・ほら」
と、一条は自分の口を開き雄介に見せた。覗くピンク色の舌を丸めて見せる。雄介の視線が釘 付けになるのを感じて追い討ちをかける。
「・・・お前のを飲んでやる・・・」
雄介が顔を伏せる。耳が真赤になっていた。
「なぁ・・・だから、犯させてくれ。」
まるっきり鬼蓄なセリフ。なんて人だ、これでも刑事なのか?!・・・なんて思ってもやばく なっている。ココを脱出する方法はただ一つしかなかった。
「・・・・こんな格好・・・で、手が、痛いのに・・・・」
呟くような言葉。甘えを含んだ瞳で下から見上げてくる雄介。ちょっと尖った唇に潤んだ瞳が 一条の股間を直撃する。
「・・・腕、解いて・・ほしいです」
雄介の方から唇を寄せる。
「雄介・・・」
すっかりおとなしくなった雄介の手のネクタイを解く。雄介は手を擦るとチョット恥ずかしげ に一条をみて笑った。
「・・・・一条さん?」
「ん?」
「・・・・・ゴメンナサイ!!」
バッ・・・・とベッドを飛び降り叫ぶ。
「変身!!」
そのまま窓を開けジャンプ。外には主人の危機を察したのかゴウラムがいた。
「五代!!」
「ゴメンナサイ!!」
あっ、という間に、雄介を連れてゴウラムは遠離る。こうなっては一条にはどうにも追い様が ない。
「あいつ・・・」
遠離る姿を見つめながら一条が呟く。ココで逃げるのは反則だろう。準備万端な自分の息子を どうしろっていうんだろうか。
「・・・・犯ってやる・・・・」
思わず漏れた呟き。
―――――― 絶対、犯ってやる。今度は手加減無しだ!!!
ここで俺から逃げたことを後悔させてやるぜ、と一条が思ったかどうか。どっちにしろ雄介は 自分で自分の首を締めたに過ぎなかったのだけど。

それから暫く、未確認との戦闘終了後、猛スピードで現場を去る雄介の姿が見られたらしい。


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