華やかな週末 1 より 


〜 月曜日 〜


着替えたOダギリは店内を見回して呟いた。
「今日って、月曜だよねぇ・・・」
「ああ」
「なのに、なんでこんな混んでるのかな・・・」
仕事初めのこの夜に出歩く人間は少ないらしく、Oダギリが勤めるディマンシュも・・・と思ったのだが、それには当てはまらなかったようだ。
ぼんやりとカウンターに腰掛けてカクテルグラスを手にしているOダギリは呟いた。
「それはそれでいいんじゃないの?」
「ま・・・ね」
体のラインにフィットしたデザインスーツを着込んだOダギリは内心不思議に思う。店が繁盛するのはいいことだが、なぜかいつもこの店は満員御礼状態なのだ。
時計は既に12時を回っているが、華やかな時間はこれからだ、とばかりに店には人が溢れ返っている――――不景気なはずなのに。そんなことを考えているOダギリは店を訪れる人達が自分を目当てにしているとはこれっぽっちも思わないのだ。
それには、訳があるのだけれど。
「それにしても今日の格好はいいじゃん」
隣に座るI藤 H明に誉められて、Oダギリはへへ、と頭を掻いた。
I藤はOダギリと同じ様にスカウトされてきた青年だ。Oダギリと違いがっしりとした体躯をしている。それなのに妙に仕草がかわいらしいのだ。ずば抜けてハンサム・・・というわけではないが、なんというか愛らしいのだ。声だって美声だ。耳元で囁かれてウットリする女性は何人もいる。それなのにI藤のイメージといえばやんちゃ≠セ。思わず構わずにはいられない・・・と、母性本能を擽るタイプ、といえるだろう。
I藤をみているとOダギリはゴールデンレトリバーをついつい連想してしまうのだ。
もちろん人気でいえばOダギリに次いだ位置をキープしているのだが、特に奢ることもなく、ホスト特有のがっついた雰囲気もなく、かえってそれが受けていたりするのだが・・・これまた彼特有の理由があったりする。
「そういう格好してると芸能人みたいじゃん」
「そっかな・・・もらいもんなんだけど」
「ああ、オーナー」
納得したI藤にOダギリは頷いた。
「それにしてもOダギリの趣味をよく知ってるよね、あの人」
「うん、ま、ね」
といってポッ、と顔を赤くしたOダギリを見ながらI藤は感心していた。
細身のOダギリはよくデザインスーツを好んで着用する。
普通のタイプだとOダギリが細すぎて決まらないのだ。広めな肩幅に閉まった細い腰。そしてそれに続くスラッとした足のライン。足が長く見えるかどうかには、まず腰の位置が高い事、次に膝下が膝上より長いことがあげられる。Oダギリはその2点を克服してなお余りあるものがあるのだ。一昔前に己の脚に保険金をかけた芸能人がいたが、オダギリとて十分それはあてはあまるのではないか・・・と周りの人間には囁かれていたりするのだ。
本人は気づいていないようだが。だから今回も着ているデザインスーツのラインは、女からみれば恨みたくなるほどの見事な体のラインを浮き彫りにしている。
少し広めな肩幅の下にある縊れたウエスト、小さくてキュットしまったヒップ、真っ直ぐな足のライン。首の周りから胸元にかけてを真っ白なファーが取り囲んでいると、とてもホストには見えなかった。
まったくオーナーはOダギリをよく知っている。そこに私情が絡み捲りなのは誰でも知っているのだが、はたしてオーナーとしてそれはどうよ、とちょっと不思議に思ったりもするのだが・・・・Oダギリがいいならいいだろう、とI藤は考えるのをやめてしまう。
「や〜ん・・・幻のラティアス≠ニラティオス≠ェ並んでる〜!」
「まじまじ!」
「あー! ほんとだー!! カメラもって来ればよかった〜!!」

カクテルバーにいるOダギリとI藤に気づいた常連達がひそやかに嬌声を上げる。他の人達もそれに気づいたのかザワザワと店内が騒がしくなっていく。

「ね、ね、何、その・・・ラティ・・・とかって」
初めて店に連れてこられたのか、会話の内容が掴めないでいる女性がうっとりと彼らを見つめている友人の膝を叩く。
「ん? 幻のポケモンのことなんだけど、滅多に手がはいらないのよ」
「・・・・ポケモンって・・・・」
「それぐらい希少なのよ! 捕まえるなんて事できないの。だから、それにかけてんの」
「そうそう、ちょうレアなのよ!」
「・・・だって、そこにいるじゃない」
訳がわからず指差した女性に、友人はちちち、と指をふってみせた。
「違うのよ、彼らはもう指名されてるの」
「え? ・・・だれも居ないけど・・・・」
「違うって、予約されているのよ! 月曜日は・・・・そうね、そろそろ来るわよ」
時計をみた彼女がそういった瞬間、扉が開いて。



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