『ち』 は畜生(ちくしょう)  より 


「五代?」
ここで、いや、なんていえない。
五代は心の中で溜息をつく。一条とするのはいやじゃない、っていうか、一条以外とこんなこと、もうしたくない。でも、発情期の時は、いやなのだ。愛情とか、そんなものより欲望だけに染まってしまいそうな自分がいる。その行為が愛の為ではなくて、欲まみれの、どろどろとしたそんなものになってしまうから・・・・嫌われてしまうのがいやだから。
だから、一条とだけは、したくなかったのに。
でも。
自分を上目遣いで見つめてくる一条の視線から逃れられない。こんな魅力的な男に誰が逆らえるというんだろう。
五代は小さく唇を舐めて、一条の手を握り返した。



いつもより、敏感になっている。
五代は、一条の腕に抱かれながら自分の体の変化を感じていた。
一条の手が背中をなぞるだけで、痺れが身体を走る。洋服の上からさすられる肌が熱くなっていく。
なぞられた後がちりちりと刺激されて。
五代は小さく溜息をついた。
「・・・・やけに、敏感だな」
耳元で囁かれて、首をすくめる。
耳に吹きまれた暖かい吐息に鼓膜を撫でられたようで、びくん、と五代は身体を震わせた。耳は、五代の弱点のうちのひとつだ。耳から首筋にかけては、特に敏感で、いつもソコを責められると、尾?骨から力が抜けていってしまうような感じに襲われてしまう。
今も、擽ったくって腰をもぞもぞさせたら、一条にくすり、と笑われてしまった。
「発情期のせいなのか?」
「・・・・さあ」
顎をすくわれて、口付けられた。
一条の唇が、五代の唇を揉み解す。鼻がぶつからないように、顔の角度を変えながら、一条は閉じられた唇を解いていく。
「・・・ン・・・・・」
鼻から抜ける甘い声を漏らしてしまい、五代はきゅ、と目を閉じた。視界が闇に閉ざされたせいで、ほかの感覚が研ぎ澄まされていく。一条の舌が忍び込んできて、五
代の歯をこじ開けてくる。舌に絡みついた瞬間、普段だったら気にもしないはずの音が、頭の中で大きく響いてしまった。
ちゅる・・・・くちゅ・・・・・と、その音がやけに淫靡に聞こえて、思わず舌を引っ込めてしまったが、一条は得に焦る事もなく、ゆっくりと堪能することに決めたようだ。
熱い、柔らかな塊が五代の口の中をゆっくりと這い回る。歯列の裏側や、頬の横側を、敏感な上顎の裏側の襞を嘗め回していく。くすぐったいような、痺れるような、もどかしい刺激が口内に溢れていく。そこから発生した甘い痺れは、うなじに流れこみ、背骨を伝い降りて、尾?骨にたまっていく。
「んぅ・・・・・・」
身体の内側から熱が広がっていくのを、抑えようとして、きゅ、と内股に力を込める。
「・・・っ・・・・!」
突然、一条に尻を鷲掴みにされて、身体を跳ねさせた。キスに酔いしれていた頭が、一瞬にしてクリアになる。
五代の身体を弄っていた一条の手が、いつのまにか下に降りてきて、その大きな両手で、ジーンズの上から尻を鷲掴みにしているのだ。
「ほんとに、小さな、尻だな」
唇を触れ合わせたまま、一条が囁く。む、と小さく眉間に皺を寄せた五代の反論は、再び一条の唇に覆われてしまったせいで、外には漏れなかった。
「んー・・・・・・っ」
女の柔らかな肉に包まれた尻と違って、男の尻は小さくて硬いほうだろう。それでも、一条は自分の手にすっぽり嵌ってしまう、この五代の尻が好きなのだ。力を込めてもんでも指先に押し返してくる弾力がいい。
「ン・・・ぅ・・・・・」
手を伸ばせば、腿と尻の境い目にまで、手が伸びる。本当に、すっぽりと嵌ってしまうのだ。硬いジーンズの上から、尻の割れ目をぐいぐい、と指先で押すと、尻に緊張感が漲り、左右の肉で一条の指を挟んでこばもうとするのだが、それすらも、一条にとっては堪らないぐらいだ。
ジーンズは硬いから、多少力を込めてもそんなに食い込むことは出来ないが、五代は触れるか触れないか、ギリギリの加減で擦られて、は、と熱い溜息をついた。
狼に変身すると、小さな尾?骨が尻尾に変わる。その部分は人より敏感にできていて、普段、軽くなぞられるだけでも腰が砕けてしまうのに。
一条に、戯れるようにして刺激されるそこが、熱くて、むずむずして、内側から膨張しているような感じがする。
じん・・・・とした、なにかが全身に広がり、力が抜けていくのは、いつもの事、だけど、今回はそれがいつもより強い。




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