いつのまにか少年は より 


「恋〜〜〜!? 俺にそんなことをしてる暇なんてないね、そんなこときくなんて、もしかして暇なの? ハボック少尉」


「なんていうんですよ? これが子供のいうことですかね」
 ここはイーストシティ、東方司令部のある一室のお茶のひと時での会話。
 仕事の効率を高めるためにも定期的な休息は必要である。という某司令官の主張のもとここ東方司令部では緊急事態が発生していない限り(含む、デスクワーク嫌いの上司が仕事を溜め込んでいるとき←副官)、昼休み以外に午後に一度15分ほどの休憩が設けられていた。通称、『午後ティー』(まぁ主に男性の占める割合の多い兵士の間では簡単に『茶の時間だぞ〜』で、すまされてはいたが)。
 司令官のいないのを幸いに、ちゃっかりホークアイの入れるお茶のご相伴に預かっていたのはジャン・ハボック少尉。つい先日の年下の国家錬金術師との会話を回想し、深い溜息ととも愚痴って見せるのに、ホークアイは慣れているのか、表情ひとつかえず、紅茶を飲んでいる。
 いつもは人がいる司令部も、全員ではらっているのだが―――多分そろそろ戻ってくるころだろう、と思われるのだが―――時間はきっちり守るもの、とホークアイはお茶の準備を始め、その恩恵に預かれたのが、たまたま残っていたハボックだったのである。
 なにせそのきっちりした性格も相まって、ホークアイの入れるお茶はまさしく絶品・・・!ものなのである。
「そう? 彼には一刻も早くかなえたい目標があるんですもの。他の事に目が向かなくても仕方ないでしょう」
「そりゃそうですけど!」
 幾分乱雑にカップを置いてしまい、ホークアイに睨まれてしまったハボックは多少ひるんだものの、それでもやっぱり愚痴をこぼさずには入られなかった。
「そりゃわかってますよ。それをかなえるために頑張っているのは重々承知しています。けどね、過ぎていく時は戻らないんですよ。ただ、張り詰めたまんまでいたら何時か切れちゃいますよ」
「ハボック少尉・・・・」
「すこし、ほんの少しだけゆとりがあるといいと思うんですよね・・・」
「それが恋?」
 なにかあまりに安易な考えに思われてしまって、でもハボックらしい考え方にホークアイは思わず噴き出してしまった。
「ちょっと・・・・酷くないですか?」
「いえ、心のゆとり=恋愛、なんだと思ったら」
「・・・・いや、別にただ恋愛に結び付けているわけじゃないんですよ。ただ、誰かを思う心、っていうのはその人の励みになるでしょう」
 空になったハボックのカップに二杯目のお茶をいれてやる。
「そんなものかしらね」
「そうですよ!・・・ってか、ホークアイ中尉はそんな風に思ったことはないんですか?」
「いえ、そんなことはないわ。そんなことはない、のだけれど・・・・普段、それも男としていかがなものか、な見本を間近でみているから、アレを見てしまうと他の男も同じに思えてしまって・・・・」
「ちょっと! あれは特別ですよ、特別。一般の人間と一緒にしないで下さい」
「そうね、ごめんなさい」


 ここで言われている『特別な男』とは。
 勿論、我らが司令官 “炎の錬金術師 ロイ・マスタング大佐”の事である。
 彼は非常に有能で、顔よし! 頭よし! それなりの地位もあって金もある、そんな数々の美点持っている素晴らしい男、であるはずなのだが。
 たった一つのその点だけで全てがチャラになり、さらにはマイナスイメージを与えてしまうような、そんな問題を抱えていたりするのである。

Qes1  その問題とはなにか
Ans   性格が悪いということです




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