久二男さんの木尽くし日記 その88



エゴイストではないエゴノキ
05/8/16

エゴノキ<チシャノキ>エゴノキ科

丘陵から山地の平坦部や谷間の緩斜面に生育、公園などにも植えられているな。

今は過ぎた初夏の頃、枝いっぱい清楚に咲くこの方の白い花は艶やかな新緑に美しく映えて、目を奪っていたはずだよ。もっとも、エゴノキ科はいっぱいの白い花がうつむいて咲く様子が美しいといわれ、欧米ではいくつかの種類が「シルヴァ・ベル」や「スノーツリー」と呼ばれて栽培される。杖などにも使われたほかに、子どものお手玉の中身にも入れていたけど今はどうかな。

幹はそれほど太くなりません。萠芽(ボウガ)更新で根元から何本も出て株立ちする。10月頃砲弾形で褐色の果実をつける。実がえぐいから、あるいは轆轤(ろくろ)でえぐったからの名。

果皮にはエゴサポニンが含まれ石鹸の代用にもしたし、麻酔効果があるのですりつぶして川に流して、魚毒として魚とりにも使ったよ。勿論人には害は無い。実は花の美しさよりも、樹脂の有用性のほうが有名だと。薬品や化粧品の防腐剤、芳香剤として重要な役割を持つ「安息香」は、エゴノキ属のいくつかの種から得られる樹脂がかたまったものです。安息香はインドネシアのスマトラ島が主産地。ヨーロッパに持ち込まれたのは14世紀前半、その防腐性は18世紀末には充分認識されていたという。

「本草綱目」を著した明末の医師・李時珍は「この香は悪を退け、諸邪を安息する。故にかく名付けたのである」と述べて安息香の甘く神秘的な香りを表現しています。中世末期のアラビア人は安息香を「ルバン・ジャウィ」と呼んだ。「ルバン」はサンスクリット語で乳香のこと、「ジャウィ」は「ジャワの」という意味。

散り際がまた見事、昨日まで満開だった木の下が真っ白な花で埋め尽くされるよ。

えご散りて渚のごとく寄らしむる(皆吉爽雨)

散り際のほうが印象的なのか、この方は散っているさまを詠み込んだものが多いと。

小泉の引き際もこうあって欲しいな。確実に訪れるんだから。小泉のところにこのエゴノキを植えよう、しかし安息を彼に与えはしないけどね。

それではまた。被害をもたらさない大雨よ降れ。木々は大喜びだぞ。





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