「味噌汁・ご飯」授業を考える
元横浜市立小学校初任者指導教員 野中 信行先生
 各地の研究会では、ごちそう授業を見せていただいています。私はあくまでも「味噌汁・ご飯」授業を提案しています。この「味噌汁・ご飯」授業というネーミングですが、かつて大洗で仲間と研修を行いました。
 一日目の昼ご飯からお刺身がでてごちそうでした。夜もお刺身三昧。次の朝もお刺身。昼もお刺身、そして夜も・・。とうとう3日目の朝にはもうごちそうは食べられないとなりました。
 この時に、ごちそう授業もいいけれど、日常の授業がいかに大切かと思いました。食育ではありません。
 今までの研究授業のあり方は、大半がごちそう授業づくりの時代でした。多くの時間、教材研究をし、分厚い指導案を作成し、1時間のために何カ月もかけて研究授業に臨んできました。
 横浜市でも研究推進校と呼ばれている学校で、学級崩壊が起きてしまいました。すぐごちそう授業をしようとしてきました。土台に学級づくりがないといけないのに違うのです。もはやそのような時代ではないと考えています。
 「味噌汁・ご飯」授業は「ごちそう」授業とは全くベクトルが違います。
 ある人は、授業は『「これだけは何としても教えたい」という内容について、子どもが「学びたい・調べたい・追究したい」と転化することと語られてきました。さらに教材研究は、「何を教えたらよいか」そのエキスをつかむことなので、まず教科書を20回は読む。参考資料や指導書も読む。そして一つの資料について20〜30冊の本を調べていくのです』と。そして『資料と発問・指示を考えるということでは、授業内容を決定し、資料集め、資料の作成を行うのです。発問・指示が浮かび上がるまで、教材研究をしなくてはなりません。』と語っています。
 このように授業を考えている人は誰でしょう。
 社会科で有名な有田和正先生です。普通の先生方は、日常の授業が1000時間以上です。これが現実です。はっきりしているのは、数時間の授業のために「すべてが終わった―、やった―」となってはならないということです。 日常授業をなんとかしないと、子どもたちの学力向上はない。ここをなんとかしようと考えたのが、「味噌汁・ご飯」授業です。 「1時間のために1時間の教材研究」ともいわれています。その考えで行くと1日6時間の授業を行うには、6時間の教材研究の時間をとるのです。しかし、現実は、違います。そんな時間はありません。忙しいのです。 教師の日常に現実を繰りこんだ試みを追求したいと考えたのです。
 目指したいことは、授業をするのが楽しくなったとすることです。今までのごちそう授業とは、基本的に違います。例えば、教材研究の仕方も違ってきます。
 指導案も違ってきます。研究授業用の指導案ではなくなるのです。授業の展開も違ってくるのです。子どもたちの学力保証もきちんとしたいのです。基礎・基本の学力をつけたいのです。これができないとだめです。80点なんてめざしません。今日観ていただいた授業も、内容は70点だと思います。ねらいを決めた70点の授業です。
 日常の授業を2つの視点から考えてみたいと思います。
 1つは、日常の授業を見直してみようということです。多くの先生方が陥っている授業があります。私の親しい人が教頭になって他の職員の授業を観るようになったのだが、「いや―、皆の授業はこれだよ」と言います。それは、おしゃべり授業です。皆、自覚症状がないのです。特に初心者はこのパターンです。ずっとしゃべっている。ときどき質問する。3・4人が発表する。そして先に進むという授業です。
 ではなんでおしゃべり授業ではだめなのでしょうか。考えてみてください。
 1 傍観者が多くなる。2 聞くだけの授業でつまらない。3 しゃべり疲れる。4 発表者が限られる。5 その他、ありますか。みなさん挙手をしてみてください。問題点は、次の3点です。
 1 95%ぐらいしゃべっている。2 ほとんどが傍観者になっている。3 作業や活動がほとんどない。
 意外と3が多いようですね。中には、作業や活動を入れるのですが1時間中、書かせるだけという授業もあります。
 37年間子どもたちの顔を見て楽しい授業を心がけてきました。初任者指導を3年間やって、子どもの目線で見て気付いたことがあります。子どもは面白い授業、楽しい授業は期待していません。何を期待しているか。子ども達はとにかく活動させてほしいということです。授業を後ろから見ていると、傍観者でいるとつらいということが、姿で分かります。
 ここで活動を意識してみました。「聞く」「見る」「読む」「おぼえる」「書く」「話す」「話し合う」「動く」の8つがあると思います。普通、「聞く」「見る」は活動の範疇に入っていません。しかし、言語活動を考えると、「見る」「聞く」も活動といえます。
 おしゃべり授業は、「聞く」と3、4人の「話す」活動だけです。他の子にとって飽きるのは当然です。
 つまり、もっと授業を多様に。「活動」で組み立てたいということです。
 2つ目の視点は、日常授業を授業の原点に戻って考えなおしてみたいということです。原点というと何だと思いますか。
 (会場から)「楽しい」「学力をつけたい」「学ぶ」「勉強する」
 私たちは、インプットとアウトプットで考えていきたいと思います。これが学習の原点といえるのではないかと思います。
 簡単に考えると、例えば自動販売機ではお金を入れるとコーラができます。これと同じように考えるといいと思います。
 インプットは、「聞く」「見る」「読む」「おぼえる」という活動です。「読む」はアウトプットで考えることもできますが、ほとんどがインプットの活動といえるので、インプットとしたいと思います。
 アウトプットは、「書く」「話す」「話し合う」「動く」という活動です。今までの問題点は、インプットがほとんどでアウトプットが少なかった点です。特に「聞く」というインプットでした。中には、プリントを書くというアウトプットもありましたが、インプットなしでアウトプットさせていたということで、入らない子どもがいました。
 皆さんどうですか。いつもインプットしかしてこなかったというのではありませんか。
 初任者がインプットで躓いてしまった漢字の授業があります。子どもは、知識がインプットされないと理解できません。また定着できないのです。5問テストを4日やったら5日目には20問テストをやるとか工夫しないとだめなのです。
 アウトプットの「活動」が授業のポイントを握っているのです。
 私は、「味噌汁・ご飯」授業を次のように考えたいと思っています。3つの定義があります。日常的であること、学力保障をすること、全員参加を図ることです。
 まず、日常的であるということです。短時間で教材研究できる。簡素化した指導案ですむということです。次に多様な活動の組み立てによるものです。
 本日の道徳の授業では、もったいぶってAインプットとしての「足太いね」を出しました。そしてBのアウトプットとして、予想を書かせました。
 さらにCとして話し合い活動を入れました。3年生では話し合いはなかなか難しいと思いますが、3ヶ月くらい積み重ねていくとうまく話し合うことができます。話し合う活動はインプットとアウトプット、両方の活動があります。
 そしてインプットとして「プラス思考」でかんがえてみようと教師から教え、Eのアウトプット「プラス思考で考える」という作業を入れたのです。意識的に5つの活動を入れています。
 活動の多様化で傍観者を作らないということです。本時の感想を見てみると「おもしろかった」「楽しかった」と書いてあります。3年生の語彙はこれくらいです。
 そんな中でAさんは「ここいえばいいんだということが分かりました。やっぱりきつくいうのはだめだと思いました」と書いてあります。
 Oさんは、「プラス思考を教わって良かった。私もプラス思考で頑張ります」と。Rさんは「嬉しかった」と書いています。事前に給食時間等に観察させていただき、Rさんが活躍できたらいいなと意識して授業を行いました。Rさんを包み込んでいくとクラスの中に入っていけると思いました。
 授業では、良好なインプットがあります。見せたいものは見せない。見せる場合はじらして見せることです。「え、なんだろう」「何かおもしろそう」と思わせるのです。でも毎日はできません。本時ではこれをやりました。特別なインプットかもしれません。
 そして良好なアウトプットとして、予想を書く。話し合いをする。プラス思考で考えるという活動を入れたのです。本日の話し合いでは満足ではありませんが、入れてみました。
 アウトプット学習の効用は、知識の定着、思考の整理、論理的思考力が身につく、考える力を養うがあげられます。アウトプットが、すごく大事だと言えます。
 私は、分割法をとりいれた授業展開をめざしていったらと提案しています。7年間横浜の大池小学校という学校で勤務しました。大変な学校で、就学援助をうけている子もたくさんいました。赴任した時には、毎年、3〜4人しか残っていなくて、3年しか勤務しないという先生がたくさんいました。
 そこで、「授業づくりで研究をしよう」と提案しました。アンケートをしたところ、「算数は7割きらい」と出ました。そこでこれに挑戦しようと提案しました。模擬授業をし、全クラスこのようにしようと、全職員が同じやり方で対応していこうとしました。
 繰り上がりの足し算から同じ問題からはいり、復習タイムをし、本時タイム。そして本時の復復習タイムとしました。みんなで一緒にやりました。そうすることにより、子ども達は2年間で落ち着きました。
 こうしていかないと学力保障ができないと思いました。音読を宿題にしていたら上手にならないのです。授業でやらないとスラスラ読めるようにはなりません。基本的なことは学校で身につけないといけないと思います。
 本時目標を1つに絞ることです。本日は、プラス思考を身につけるということでした。具体物を使って、物語を作りました。
 全員参加の授業をめざしたいと思いますが、1時間中全員参加は難しいものです。そこで、最初は5分間だけでも音読で全員参加をしていくといいと思います。音読の指導方法をいくつか知っていますが、要所要所で全員参加を考えていくといいと思います。傍観者をつくらないのです。
 まず手始めに「おしゃべり授業」を克服したいと考えてください。例えば主要発問をして、すぐに3・4人の子どもが手を挙げて発言するというパターンから、主要発問を聞いて予想をノートに書く。列指名で全員が発言するというような方法もあります。活動を入れていく授業に切り替えていくのです。
 指導案も例を示していますが、本時を考えてみるのです。最初はここからスタートしていくといいと思います。そして、一単元をかんがえていくといいのです。
 まず単元目標を書き、この中から具体的な目標を書いていくといいと思います。
 授業では「活動」システムを使っていくといいと思います。4つの型をお示ししたいと思います。
 一つ目は、指名発表型です。2つめは板書発表型。3つ目はグループ発表型。そして4つ目として、ペア発表型があります。
 板書発表型は本時の授業で使ったシステムです。グループ発表型でいうグループは4人が精いっぱいです。5・6人では傍観者が出てしまいます。
 いずれにしても繰り返し行うことです。最初はなかなかうまくいかないと思います。フォローをしないとうまくいきません。どんどんフォローを入れていくのです。ただ見てればいいのではありません。
 とにかく日常授業をきちんとしていくことです。1日1時間は活動を入れていこうと工夫していくのです。普通にできるようになると楽しくなってきます。毎日の授業が楽しくなると授業が変わります。
 札幌市立山の手南小学校では、学力を保障する日常授業の改革というテーマで校内研究を行っています。ノート指導はすごいです。学習規律も全クラスで統一されています。授業規律が必要です。
 ごちそう授業は外せないところがあります。日常授業に還元されるような研究授業が大切だと思います。
 普段の日常授業を変えられるようになると学校が変わるのです。1年間に2〜3時間はごちそう授業も必要です。本当に力量をつけていくことも大事なのです。