05.03.31(THU) 吉野梅郷・御岳山 奥多摩


 奥多摩や奥秩父は東京近郊の人達の山と割り切っていて、現役の頃は群馬からわざわざ土日の渋滞の中へ出かけていくことはまずなかった。それでも奥秩父はまだ群馬側から直接入る道があるのでたまには出掛けたが、奥多摩へはまったく入ったことがない。最近は圏央道が延びて奥多摩も日帰り圏内に入ったことは分かっていたが、それでも何か行きずらい領域だった。
 ところで妻は、春の花の名所の紹介には必ずと言っていいほど出てくる、吉野梅郷へ一度行ってみようと言う。それならとケーブルカーで簡単に登れる御岳山と玉堂美術館とセットで、奥多摩に出かけてみることにした。


コース:
@ 青梅市梅の公園散策8:00-8:50 
A ケーブルカー滝本駅9:30⇒山頂駅9:50→御岳神社10:30→奥の院11:40→長尾平12:35-12:55→御岳平(山頂駅)13:30⇒滝本駅13:50 (約4時間20分)

 梅の公園は9時開園だが、それより早くても閉鎖されているわけではないので自由に散歩できる。開園後は入園料200円要。

駐車場:
 梅の公園:公園は広々した丘に広がっているが、場所はごちゃごちゃした住宅地の中で、道端が駐車場?で、停めると愛想の悪い近所の爺さん婆さんが現われて、時間に関係なく800円とられる。
 御岳ケーブルカー滝本駅:駐車場は整備された有料駐車場で一日1000円。こちらは愛想がいい。

青梅市梅の公園


 吉野梅郷と言うのだから、他にも見所はあるのかもしれないが、たまたま紹介されていたり案内のあった、青梅市梅の公園に迷い込んだと言うのが、正解かもしれない。それくらい公園は密集した住宅に囲まれている。
 よく手入れされ伸び伸びとした明るい公園は、地元のリタイア組みにとっては理想的な散歩コースで、羨ましい環境だと思う。梅の実の生産のための梅園ではないので、植え方にも色彩が配慮されいる。充分美しいと思ったが、もはや盛りは過ぎたと言う地元の人の顔が自慢げだった。
梅の公園


 梅の公園から御岳山ケーブルカーまでは直線距離で5kmほどだが、流石にここまで入ると住宅地と言う感じはなくなる。そう言えばロープウエイと言うのはよく利用するが、ケーブルカーというのは随分ご無沙汰である。前乗ったのは何時のことだろうか、箱根だったろうか。標高差424m、最も急なところで25度と言う急勾配を車体ごと一本のロープで引っ張り上げられる感覚は、爽快と言うか、スリルがあると言うか、オシリがムズムズする体験で、面白かった。
 山頂駅から御岳山神社までは標高差100m、約1kmである。ここは山の上にあふれんばかりに、宿坊、旅館、民宿、その他諸々が無秩序に並び、それらの裏道のような細い路地を歩かされる。ここは御師集落と言うらしい。宿坊、旅館などそのものは立派な門構えで雰囲気のあるものが多く、御岳山神社の御利益は充分あるようだ。
御岳ケーブルカー滝本駅


 最後の4〜50mの一辻の両側にはお土産屋さんが並び、それを過ぎると、最近改修されたと思われる立派な鳥居と山門のある参道の石段が現れる。約300段と言われるその石段を登ると、朱塗りの本殿に達する。裏に蔵王権現の社がある。
 正直、御岳山神社は雑然とした御師集落と、境内の新旧の施設のバランスの悪さのせいか、神社らしい荘厳さ、落着き、ありがたさが感じられない。何か居心地の悪い神社である。同じ周辺開発の進んだ山上の神社、奥秩父の三峰神社の方がまだずっと神社らしい雰囲気がある。(権現様、悪口言ってごめんなさい。)
 
御岳神社本殿


 奥の院は、ケーブルカー山頂駅から御岳山神社に向って歩き始めるとすぐ、なだらかな御岳山山頂の左端に本殿が見え、右端の後に対照的な三角形の鋭いピークを見せており、本殿に参拝した後は、何は差し置いても取敢えずあそこまでは行ってみよう、と思わせる山である。
 奥の院へは本殿の石段を少し下ってすぐ右に分岐して大岳山への縦走コースを下る。すぐに天狗の腰掛け杉と言われる巨大な杉の木の下で、右に分岐して杉の大木が並ぶ尾根を登る。道はすぐに勾配が増し一部鎖でトラバースするような岩場もある。標高差約200m登ると奥の院の木造の小さな社がある。その左を20〜30m登ると奥の院山頂に抜ける。

長尾平から見た奥の院 天狗の腰掛け杉

 奥の院山頂は杉林の中の、小さな石の祠のある地味な山頂である。その上何か工事が行われるのか、ヘリで運ばれたと見られる資材が山積みされ、ブルーシートで覆われており、お弁当を開く気にもなれない状況である。早々に山を下って長尾平のベンチで奥の院を見上げながら食事にした。
 奥の院は山頂直下の社も、雰囲気作りや定期的な整備も行われないらしく、侘しいたたずまいである。山頂の祠も何か不安定な台座の上にあり、一揺れで転んでしまいそうに見える。奥の院の表示も山名表示板も何もない。なんでも比較するのは失礼だが、ここでも三峰神社の奥の院とは対照的である。


 山名表示と言えばケーブルカー駅でくれるパンフレットにも、旺文社のハイキングマップにも、国土地理院の2万5千分の1の地図にも、標高1077mの記載はあるが、この周囲の山と比較しても一段と顕著で、秀麗なピークの名前の記載がない。この山に名前がないなんてことはあるまいと、インターネットで検索したら3件ヒットした。それらによるとこの山の名前は男具那の峰、または甲籠山と言うらしい。
 男具は男の道具、那は美しいとか、あのとか、かのとか言う意味があるらしいので、直訳すると(するな!)男の道具のような(形をした)美しい峰、あるいは単純に男の道具のような(形)の峰でいいのかもしれない。これは下種のかんぐりである。神聖な神社の奥の院が、下種がニヤニヤしそうな名前であってはならない、と言うことで地図から消されているのだろうか。男具那の峰があるなら近くに女具那の峰もあるのかも。


 御岳山を下り、小河内ダムまでドライブして初めての奥多摩を偵察した。流石にこの辺りまで来ると奥多摩と言う雰囲気になる。ダム周辺は公園として整備され、資料館や、管理事務所、展望台、駐車場などがあり、広々として気分のいい場所である。対岸の丸く重畳する尾根の一番奥に御前山の頂きが見えた。その右の長い尾根の上に奥多摩周遊道路の月夜見第二駐車所と思しき、切り裂かれた山肌も確認した。帰りは玉堂美術館に寄ってひと休みしてきた。





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