合気あげについて(ご質問にお答えして)
1. 合気あげの支点について
HP・1本目のビデオと2本目のビデオでは合気あげの支点となる場所が異なるように思います。自分の力を一点に集中させ支点とすべき相手との接触面について、前者は相手の人差し指の付け根にあるのに対し、後者は相手の小指の付け根にあるようです。
またHP「合気の具体的応用について」1−Aでは相手を固まらせる際の技術として、まず「相手の親指の魚腹だけにピンポイントで力が掛かるような力学的構造を作り上げる」、となっております。
HP・1本目のビデオと2本目のビデオでの合気あげの支点の違い、あるいは相手を固まらせる際の支点についてですがどのように理解したらよいのでしょうか。
初心者は相手の人差し指を支点とするべきだが、上達してくると相手の小指や親指を支点として合気あげを行うことが出来るということなのでしょうか。あるいは合気あげを行う一連の流れの中で、支点は相手の人差し指から小指や親指へと移ってゆくということでしょうか、ご教授ください。
(回答)
DVDの映像は、テーマを決めて行った特別稽古の風景を撮影しているため、その時点で特に指摘(強調)しておきたい点を中心に解説しています。
そのため合気上げに必要な一連の技術の中で、参加メンバーが分かっていると思われる点は省いています。
合気上げに必要な技術群は、東京稽古会に参加された方にはよくおわかりと思いますが、細かな動きの集大成です。その中で、稽古の進み具合で、出来ているところとそうでないところは違って来るため、指摘するところも違ってきます。
その意味では、どの口伝も、どれが正しくてどれが間違っているのかではなく、全て正しいことになるのです。
そこで合気上げの中の「朝顔の手」の部分ですが、握られている小手の部分で、相手の人差し指の付け根、親指の付け根の「魚腹(ぎょふく)」の部分、そして小指・人差し指の指先の三カ所を、最低限の「力の三角形」の各頂点とします。
そしてその三角形の各頂点が、合気上げの動きの中で、次々と支点になっていくということになるのです。
次々に支点になっていくのは、「朝顔の花が開くように」指先が開きながら、肘のトルクで手首から先が捻転するように動いていく中で、その時点時点で必要な点が支点になっていくのです。
手首から先の掌の部分と小手、そして肘の部分にはそれぞれの役割があり、それぞれがシンクロして動く部分と、時間差で動かさなければならない部分との違いがあります。また、支点になる部分が次々と変わっていく中で、どの程度の力がその支点に掛かる必要があるのかは、実体験の中で培っていく必要があるでしょう。
さらに2でお答えするように、相手の手を押し返してはいけないと言うこともだいじなことです。
2.合気あげで「あげる」際の力の加え方等について
HP「合気あげ」の項のHで相手を「あげて」いく際に攻めるべき場所は、相手の親指側ではなく、小指の側面であるとビデオで解説されているように思います。
実際、先生の手をとらせていただいた感想は、自分の膝が立ち、腰が浮き上がる程に「あげられて」いるもかかわらず、自分の指が攻められている、あるいは指が痛いとは感じなかったということです。直接的な指の痛みを軽減するために自分で腰を浮かせた、という意識は全くありませんでした。
ビデオのなかでは「自分の指を守ろうとする防御本能」というようなご説明をされていたと思います。これを先ほどの体験と合わせて考えると、「あげる」際には相手の指に対し痛みを加えるのではなく、例えば痛みを予感させる刺激のようなもの、を与えているのであり、その結果相手は本能的に自分から「あがって」いることになるかと思います。
この点についての理論と、その実践として相手を「上げて」行くに際に、相手の指に対してどのような方法・方向で力(刺激)を加えればよいかご教授ください。
(回答)
攻める箇所は、相手の人差し指と中指の側面です。相手のその部分に上の「朝顔の手」で構築した力構造を支点として、肘の捻転が鎖骨の詰めを生み、肘を押し込んで行く動きが相手の指先の側面に圧力を加えます。
その際、特に激痛を生むまでもなく、そういう刺激があることを予感させるだけの圧力で十分で、それにより腰が防御反射で(嫌がって)浮き上がり始めるのです。その状態になれば肘から先を上に送り出せば、そのはずみで相手は浮き上がっていきます。
とにかく最初は同じ動きをゆっくりと繰り返しながら、その動きが相手の掌、手首、肘、肩、鎖骨、そして腰にどのような刺激や圧力を加えるかを確認し、効果を検証しながら稽古すすめることが大事です。
朝顔の手による力の構造を維持したままで、さらに肘を使いこなすのはなかなか大変です。おおむね、どこかで緊張が切れてしまうため、合気がほどけていくことになります。力の量や、方向(ベクトル)はその都度変わっていくものであり、最大公約数を見つけだすことが、稽古の重点です。
さらに上達すれば、朝顔の手の時点で、相手を押すのではなく、いわばぶら下がっていくような体勢になり、それによって肘の自由度を上げて、自然と肘が入っていくようになるものです。