バテンから作るロッド

バテンについて

 バテンとはウインドサーフィンのセールを横方向に張る部材です。
 しかし、セールが破損し修復ができない場合、セールとともにその部材であるバテンも廃棄処分されます。
 あるいは、同種のセールの予備品として保管される場合もあります。

 海洋スポーツに使う部材ですから使用中にトラブルがあってはなりません。
 そのためバテンは強靭なグラスファイバーの無垢材です。

 最近でこそカーボンファイバーの軽い素材でできたフィッシングロッドが主流でしたが、以前は皆グラスファイバー製を使っていました。

 その弾力性に富み、折れにくい特性を活かして今でも海洋トローリング、底物などはこのロッドが欠かせません。
 また、ワカサギなどの小物の小さな当たりを感知し、口の弱い魚を難なく取りこめるのもこの素材の特徴です。
 最近では管理釣り場用にもオーダーメイドのグラスファイバー製ロッドが使われているそうです。


削る前のバテンです。
先端部が平らに削られている以外は
同径のグラスファイバーです。

入手方法

 このような優れた部材をみすみす見逃す手は有りません。
 手っ取り早い話、湘南や房総方面のウインドの盛んな場所にあるウインドショップを訪ねてみましょう。
 ただし、新品では5千円くらいするそうですから廃品とは言ってもただでは虫が良すぎますので300円/本を目安に交渉してみてください。
 どうしても見つからない場合は石渡マリンクラブに相談してみてください。
 石渡さんはバテンロッドの元祖考案者ですからいろいろ教えてもらえるかも知れません。


用意するもの

※ここではレイクトローリング表層引き用のロッド作成の例を紹介します。(スピニングロッドの作成例はこちらをご覧ください。)

 1.部材

  a.バテン
    これが無くては始まりません。
    上記参照

  b.ガイド
    ガイドは作ろうとするロッドによってタイプが変わる。
    ここではレイクトローリングようにベイトキャスティング用
    のガイドを用意した。
    ショップで200〜250円/個で購入できます。
    使わなくなったロッドから取り外して流用する手も有ります。


25401070,25401069,25401068,25401067,
25401066,25401066,トップ

  c.スレットまたは補修糸(極細)
    ガイドの固定に使います。
    バテンは白色です。好みの色を用意します。


  d.コルクとリールシート
    コルクφ20mm 長い方で1500円
    (短い方は半分にしたもの)
    リールシートφ20mm 600円
    一体型のものも有る
    使わなくなったロッドから取り外して流用する手も有ります


  e.その他消耗品
    ・瞬間接着剤
    ・エポキシ系接着剤(2液タイプ)
    ・マニキュア等のコーティング塗料(クリアー)
    ・セロテープ

 

 2.工具

   a.耐水性サンドペーパー
    ・荒削り    80 〜 120       計4枚くらい
    ・仕上げ  1000 〜 1500     計2枚くらい

   b.電動ドリル
    大きな音がするので場所を選ばない充電式が理想的
    φ10mmが掴めるチャックが必要(バテンの径は8mm前後)

 

  c.円定規またはノギス
    径を測るのに使います


  d.フィニッシングモーター
    有れば便利ですが、出番は少なかった。


  e.その他の工具
    ・ハサミ
    ・丸ヤスリ
    ・メジャー


作業工程

 作業に入る前に
  ロッドの使い方を決める。
  (船竿、キャスティングロッド・スピニング・ベイト etc)
  アクションを決める。(ファースト・スロー etc)

  1.削る
    ・ロッドの長さを決める
    ・バット部の長さを決める
    ・もし短くする場合はバット側に予尺分を残し、失敗をしたこ
     とを考慮して切り落としは最後にする。
    ・バット部は削らないので印を付けておく。

    最も体力を使う作業です。
    こう言う場合は文明の利器に頼りましょう。

    電動ドリルのチャックでバット側を掴ませ、筒形にした耐水性
    サンドペーパー80〜120番でトップ側から徐々に削って行く。

    削っている時は発熱するので火傷に気を付けること。
    また、強く握るとバテンに耐水性サンドペーパーが絡んで手が巻    き込まれそうになるので気を付けること。

    回転させているのは機械ですが、削っているのは人間ですか
    ら均等に削られているか時々チェックします。
    私は下のように円定規で径を測りグラフ化して削りムラが出
    ないようにしました。

    仕上げ削りに入る前に、当ページ最終項の「パワーの確認」
    をします。

    理想どおりのパワー(アクション)が出るようになったら
    1000〜1500番の耐水性サンドペーパーで仕上げの削り
    をします。

  2.バット部の補強
    バテンは先端部を除いて均等な太さ、つまり良く曲がるので
    そのままではコルク等のグリップはひび割れする。
    そこで曲がりを小さくするように補強することが好ましい。
    しかし、補強する部材はどこにでも有るものではないので事
    前にさがしておくことが必要です。
    使わなくなったロッドがあればバット部そのものを利用してバ
    テンを差し込む手もあります。
    ここではカーボンパイプ製バテンの内径を広げて使いました。


補強材をトップ側から差し込む

   リールシートは強靭ですが、中空ですから同心円上に固定す
   る必要があるためラワン材の中心をくり貫いて補強しました。
   (縦割りして丸ヤスリで削ると作業しやすい)

   バット部は事前に組み立てて芯がずれていないことを確認し
   ます。


  3.ガイドの固定
    ここはあまりにも自己流過ぎて皆さんに見ていただいても何
    も役立たないので下記のホームページを参考にしてください。

http://www.fujitackle.com/
(ロッドクラフト→ガイドの付け方)

    ガイドの取りつけ位置については、決定的な決め方が探し
    出せず、結局手元にある似たアクションのロッド2本のガイ
    ド間隔をパソコンで比較し決めました。

    ※ガイド取り付け時のポイント
     ・先にバット側に通しておかなければならないものは忘れ
      ないよう確認する。
     ・トップガイドから順にガイドの芯を慎重に合わせながら固
      定する。


トップガイド〜リールシートまで芯が通っている
ことを確認。


バット部を全て接着して完成


パワー(アクション)の確認

 「削る」工程の最終段階で確認することをお勧めします。


垣根横桟の最上段にあるのが無負荷時の状態です


30号錘の負荷をかけた状態


50号錘の負荷をかけた状態

   今回はレイクトローリング(表層引き)用なので、このような中
   調子(スローアクション)が理想的かと思います。


 ここからはスピニングロッドの作成例です。

 ※作成工程は前述のレイクトローリング表層引き用のロッドと
    なんら変わりませんので省略します。

 ここで紹介するのはグリップです。
 ホームセンターに行くと、こんな木製の中空棒を売ってます。
 用意したのは長さ200mm,外径24mm、内径12mm。

 それと外形24.5mmのアルミパイプ(厚みは約0.7mm)を長さ20mmに2個切りだす。

 中空棒にスピニングリールの取り付け位置を決め、スタンドの形を描く。

 先端側からスタンド位置までアルミパイプが入る径になるまで中空棒を同心円で削る。

 アルミパイプが入ったら、もう一度スタンドの形を描いて、アルミパイプでスタンド部が覆えるように削る。

 リールを2つのアルミパイプで留めて上下左右に振ってみてリールがブレなければグリップ部は完成。

 今回のスピニングロッドは5フィート。ガイドの数はトップガイドも含めて6個です。
 取りつけ寸法はhttp://www.fujitackle.com/を参考にしています。

 管理釣り場用のウルトラライトのアクションに仕立てたかったので、先端部の径は1.2mmに削り込みました。

 

 ガイドを付けるとアクションは硬めになると想像していたのですが、ガイドが1本足のせいか意外にも安定したスローな仕上がりになりました。