ただ、トンネル工事をする以上、工事で排出される残土を出して運ばなければならない。当初、牧馬地区に、その残土を排出するためのトンネルを作る計画が持ち上がった。トンネル工事が終わって残土の排出が済むと、今度はそのトンネルは、万一トンネル内で列車事故が起こった際の非常口として使われるという。
始めその話を聞いた時に、ずいぶん無茶な工事を考えたもんだと思った。
何しろ、その残土排出の為のトンネルの予定場所というのが、大型車なんか通れっこない細道の奥にあり、まず、そこまで大型車の通行に耐えられるような道を作らなければならない。
また、牧馬は列車の通るトンネルの位置に比べて標高が高く、残土を排出するにしろ、非常口として使うにしろ、かなり長い坂を牧馬まで登っていく事になる。
さて、牧馬よりも標高の低い所に採石場がある。ここだったら、列車の通るトンネルまでそれほどきつい傾斜がなくても、残土の排出も非常口としての利用も可能になる。何より、もとが採石場なのでダンプなどの大型車が普通に出入りできる場所でもある。
どうせ作るのなら、ここに作ればいいんじゃないのか、と素人ながらに思っていた。