合併特例債について説明するには、その前にどうしても地方交付税について説明しなければなりません。
『地方交付税?、知ってるよ、貧乏な町が、自前の税収では町を維持出来ない時に国からもらう補助金だろ?』
確かにその通りなのですが、この地方交付税の仕組みを、ある程度詳しく把握しないと、この合併特例債については理解出来ないのです。いや、合併特例債だけでなく、現在行われている市町村合併そのものについても、理解出来ないでしょう。それほど、地方交付税の問題は、市町村合併問題と密接に関わっています。
しかし、この地方交付税。
調べようと思えば思うほど難しい(笑)。去年までは行政の事なんかほとんど知らなかった私の、泥縄式のにわか学問ですから、これから私が行う地方交付税の説明も、非常に怪しい物になるかと思います。でも、私が人から教わりながら何とか理解した程度の内容でも、全く知らない人には有益かもしれませんので、赤恥をさらす覚悟で先を進めます。
地方交付税は「普通交付税」と「特別交付税」に別けられます。でも特別交付税は、災害などの予想外の自体が発生した時に補完的に交付される特別のもので、地方交付税全体における割合も非常に小さい(総額の6%)ので、私たちが普通に「地方交付税」という時は「普通交付税」の事を指すと思っていいでしょう。
地方交付税に科せられた役割は、まず、『財源の均衡化(財政調整機能)』。
税収の恵まれた町と恵まれない町とで、行政サービスに格差ができないように調整する機能があります。税収に恵まれない町では火事が起きても消防が来てくれないようだったら困ります。
ついで『財源の保障(財源保障機能)』。
どんな町でも、財政が急に悪くなったり良くなったりする可能性はあります。急に悪くなった場合でも、地方交付税の交付によって、自治体は計画的で安定した行政の運営ができます。また地方交付税は使い道が決められていません。国がその使途を制限したり、条件を付けたりすることは禁じられています。このことによって、町の自主性は保たれて地方自治の実現が可能になります。
以上の事柄はナショナルミニマムの問題とも関わってきます。 そのことは、雑文『地方交付税はもらってはいけない金か』で書いたので、そちらを参考にして下さい。
もう一つ、『国と地方の税源配分を補完』する役目。
歳出面での国と地方の支出割合は約2:3になっていて、地方の方が税金を使う仕事の量が多いのですが、一方で租税収入全体の中における国税と地方税の比率は約3:2になっていて、地方には少ない配分の税収しか降りてきません。つまり、国は少ない仕事を余るほどの税収で行うのに対して、地方は多くの仕事を少ない税収で行う事を求められています。
国から地方へ地方交付税を渡す事によって、このねじれた税源配分を補完する機能も果たしています。
さて、何でいまさら改めて、このように「地方交付税の役割」などと、くどくど書いたのかというと、現在、この地方交付税は、当初の理念や目的から離れた使われ方をしている、更にはっきり言えば、理念や目的を忘れたかのような使われ方をしている事を強調しておきたかったからです。
どのように、「理念や目的を忘れたかのような使われ方をしている」かの説明は、おいおい後半で出てきます。しばらくは、「理想通りの運用をされていると仮定した」地方交付税の説明を続けます。
まず、合理的な計算法によって、その町を運営するのに必要とされる金額を算出します。この金額を『基準財政需要額』と言います。次に、その町の財政収入額を合理的な計算法によって算出します。この金額を『基準財政収入額』と言います。基準財政需要額から基準財政収入額をひくと、その町が町を運営するのにいくらお金が足りないかの不足額がでます。これが財源不足額で、交付税の基準額になります。
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