続き

6月14日(火)の続き

 たとえ合併するにしても、このように住民感情を害してまで強行するのはどうなのだろう。何としてでも合併特例債の期限内に合併したいという気持ちが働いているのかもしれないが、ここまで住民をまっぷたつに引き裂き、反目させ、感情をこじらせた事による経済的損失というのもあるのではないか。
 この損失は合併特例債の金額程度で穴埋めできるものではない。

『合併すればスケールメリットが活かせて、行政改革ができる』と合併推進派は言う。確かにそういうメリットはあるだろう。しかし、期限を決めて、特例債というアメで釣って、一気に合併を進めようという政策はどう考えても無理があった。
 行革行革と言うが、この合併政策で荒廃した人心が、今後どのような負の遺産になるか判らない。

 合併するにしろ、しないにしろ、人の心を荒れさせないやり方をしなければならない。この相模湖町の場合、今後10年くらいは合併問題を棚上げにして冷却期間を設けて、それから改めて合併問題を考えるくらいでちょうどいいと思う。
 私は合併問題で民意がまっぷたつに別れてまとまらない場合は、『しばらく棚上げ』が最良の選択だと考える。
 世の中には、民意がまとまらなくても、とにかく急いで決断しなければならない問題もあるだろう。人命が関わるような問題なら特にそうだ。
 しかし、町が期限までに合併しなかったからといって、人が死ぬわけでは無い。何か住民の危険が増すわけではない。本来、市町村合併などというものは、焦らして、急かしてやるものではないはずだ。

 「今後10年くらいは棚上げ・・・」という点で、もう一つこんな話を聞いた。
合併相手である相模原市の職員は、その大半がこの合併には消極的だと言う。もちろん、彼等は公務員なので、市長が決めた事には粛々と従って業務をこなすしかなく、この合併に反対の声をあげるわけもないのだが。
 ただでさえ相模原市は中核市になったばかりで、新しい仕事も増えて役所の中は混乱が収まっていない。その上にこの合併である。
『今はとても余力がない。この合併、あと10年待ってくれれば良かったのに』
ある職員はそう話していたそうだ。

 この平成の市町村合併。
行革だ、財政の健全化だ、市町村の体力強化だと、もっともらしい意義を謳ってはいるが、あまりにも、それによって振り回される人々の心の問題を無視し過ぎてはいないか。
 そりゃあ、全国の中には、この合併を契機に町の新しい出発を図ろうと住民が希望に燃えている町もあるかもしれない。
 しかし、この相模原市と津久井郡の合併は、その門出を祝うような雰囲気にはどうしてもなれない。