藤野ブランド

『藤野は絶対にブランドになれる』
そう力説する人に会った事があります。この人からは、時々いろんな「町の活かし方」のアイデアを教えてもらいます。
『「湘南」と言えば、誰でもブランドだと思うでしょ。車のナンバープレートでも、湘南ナンバーをかっこいいと思ったり。』
まあ原チャリでもないと「藤野ナンバー」なんてありませんが。
『「湘南」といっても、海があって、都心に程近くて、リゾート地として古くから開けていて、文化人も多く住んでいる・・・といった程度でしょ。藤野にだって、山と湖があって、都心に程近くて、陣馬山の登山口として観光地らしさもあり、芸術家も住んでいる。やり方次第で藤野のブランド化は充分可能だと思うのに、何故、藤野は「湘南」になれないのか。』
う〜ん、サザンが歌ってないからかな(笑)。

 冗談はともかく、今では私も藤野は充分にブランドになると思ってますし、そのやり方を慎重に(下手なやり方をして、かえってダサイと言われないように)考えて、少しずつ実行して行く時期に入っていると考えています。
 あちこちの町から人が集まって、自己紹介をする時に、
『あなたはどちらから来ましたか』
『私は藤野町から来ました』
『ほう、あの藤野町ですか』
『そうです、あの藤野町です』
『確かにあの町は、どこか違うね』
そんな会話ができる状況になったら楽しいじゃないですか。

 都心に住むのもお洒落でしょう。劇を観に行くのもコンサートを聴きに行くのも楽です。衣食住の流行の最先端が絶えず経験できる楽しさがあります。都市近郊の町もいいですね。田園調布のような古くからの高級住宅地には風情もありますし、下北沢のように活発な若者文化を発信し続けている町も面白そうです。

 でも、通勤時間は長くなりますが、「山に暮らす」という生き方も、これからはお洒落だと思ってくれる人も増えるはずです。休日には山菜やキノコを採りに山へ入るような生活。小さな菜園の手入れをするような生活。気軽に山遊びをする生活。
 これだって、充分「うらやましい」と言われる力は持っていると思うのですが。

 それに藤野町は、「芸術の家」という施設でも、個人が経営している工房やカフェやライブ会場でも、ときどきコンサートなどのイベントをやります。時には町全体を会場にした催し物もあります。

『あの町は、いつも何か楽しい事をやっていて、同時に山里の暮しを積極的に楽しんでいる。』
 そんなイメージが行き渡れば、「藤野ブランド」の完成も間近です。そうしたら、
「津久井、相模湖、上野原、似たような町は幾つもあるけど、住むとしたらやっぱり藤野だ」と人から言われるようになるでしょう。

 今の藤野町は、ブランドになる素質を持ちながら、その素質を活かしていません。課題も多々あります。
 この文章で、私は「都会に通勤しながら山里で暮らすのも、これからのお洒落だ」と言いましたが、藤野町はまだ、都心への通勤者に優しい町とは言えないと思います。近年まで、学校に給食もありませんでしたし、学童保育もありませんでした。これは共働きの夫婦には不満の出る行政サービスの水準だったでしょう。
 駅前のタクシーは、夜も早い内に営業を終えてしまいます。深夜に帰宅する人には使えません。

 「芸術系のイベントが多い町」とも書きましたが、藤野町のどこで、いつ、どんなイベントがあるのか、町民全体が情報を共有できていない状態が今でも続いています。
『参加してみたいけど、きっかけが掴めない。どこにきっかけがあるのかも判らない。せっかく「芸術村」に住んでいるのに。』
そんな不満の声は、今までも度々聞きました。

 町の様子だって、お洒落とは言えない状態です。廃虚になって放火されたホテルが、そのままの姿を晒していたり。交通量の多い甲州街道には、歩道もない危険な箇所があったり。
「山と湖の町」と言っても、山はともかくとして、湖には町民とはほとんど縁がありません。というのも、藤野町の湖は岸が崖のような急斜面になっている場所がほとんどで、町に住む人々が、のんびりと湖岸で休日を楽しんだり、くつろげるような所がないのです。
 これも、今後は親水公園を作るかして、住民が「湖のある町」を実感できるような仕組みを作る必要があると思います。

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