生ゴミの処理のあり方

 日本では、家庭から出される生ゴミは、9割の自治体で燃やされて処理されています。この事が、『市町村は合併して大きな単位にまとまるべきだ』、という論拠の一つになっています。というのも、ゴミを燃やしてもダイオキシンなどの有害物質を排出しない焼却炉は、大型の高性能の炉を、それも24時間連続して使う必要があるため、大量のゴミを一ケ所に集めて処理しなければなりません。小さな町一つ一つに、小さな焼却炉を使うのではなく、大きな町で大きな焼却炉を一つ使うべきだと言うのです。
(もっとも、最近は技術が進んで、小型の焼却炉でも有害物質を排出しないようになっているそうです)

 しかし、私は最近始めて知ったのですが、ゴミの焼却炉の寿命は30年ぐらいなんだそうです。30年を目安にして予定を組んで、立て替えを重ねるらしい。それも高温を使用する炉になるほど、炉の耐久性は低下し、炉の価格も高価になります(何十億もするとか)。最新式のガス化溶融炉になると、金額はさらにケタが一つ上がって、100億単位の買い物になります。そのうえ、燃料代などのランニングコストもバカになりません。
「ゴミの焼却炉はお金を燃やしているようなものだ」
そう言われても仕方がありません。
 何よりも問題なのは、このような大型炉を建設しようとする発想には、『今後、いかにしてゴミを出さない社会にしていこうか』という理想を霞ませる点です。何しろ、大量のゴミを『必要とする』ゴミ処理方法ですから。

 今、理想とされているゴミ処理のあり方は、焼却炉で言えば、老朽化した炉を新しく更新する時には、それまで使っていた炉よりも『小さい』炉で大丈夫なような社会にし、最終的には焼却炉を『必要としない』社会にする事です。同時にゴミ処理に金のかからない社会に。

 生ゴミの堆肥化を進めている自治体があります。山形県の長井市の『レインボープラン』なんか有名です。家庭から出る生ゴミ、畜産農家から排出される糞尿、これらを処理して堆肥にする施設を作り、そこで出来た堆肥を土地の農家や、園芸を趣味にしている市民に使ってもらう仕組みです。

 堆肥を作る施設なら、何百度という高温を必要とするわけではないので、30年で施設の寿命が来るなんて事はありませんし、そもそも生ゴミを燃やさずに発酵させるだけなので、ダイオキシンも発生しません(どんなに高温を使った高性能の大型炉でも、ダイオキシン排出をゼロにはできません)。運用に多額の燃料代も必要ありません。大型の設備にする必要もありませんし、小さな町に小さな堆肥センターを作ればまにあいます。出来た堆肥が売れるような道筋ができれば、その収入によって施設の維持は更に楽に安上がりになるでしょう。

 一方では大量のエネルギーと多額の資金を投入して灰を作り、一方ではたいしたエネルギーもお金も使わずに有益な堆肥ができるのです。どちらが得か。

 藤野町はゴミの処理を津久井郡4町で作っている広域組合で行っています。しかし、ここでの処理費用もバカにならず、せめて生ゴミだけでも独自に減量して、ゴミに係る費用を節約しようとして、生ゴミの堆肥化をするコンポストを購入する家庭に町で補助金を支給したりしています。

 一方で、藤野町の畜産農家では、近年、糞尿の処理に関する法規制が厳しくなり、多額の資金を投入して処理施設を作らないと、畜産業をやって行きにくい環境に立たされて来ました。「処理施設を作る資金がないから畜産業をやめる」という哀しい選択も考えざるを得ない農家もあるそうです。

 これと同じ悩みを抱えている自治体は全国各地にあることでしょう。しかし、これらの悩みは上記の素朴な施設で解消できると思います。

 実は、ここで長々とゴミ処理について書いたのは、相模原市と津久井郡との合併にも、関わってくるからです。相模原市は津久井郡との合併を既に見込んで、300億円もかかると言われているガス化溶融炉を造ろうとしています。この借金は、もちろん藤野町の町民にもかかってくるのですが。

 この問題は、私もまだ人からいろいろ話を聞いている段階なので、内容がまとまり次第、改めて別の場所で詳しく説明したいと思います。

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