Q. 作詞家になりたいのですが、どうすればなれますか? 25歳の頃の工藤哲雄さんより |
A. まず大切なことは、根拠のない自信を持つことです。根拠があってはダメです。友達に詞を見せたら皆が上手いと言うとか、小さい頃から作文でいっぱい賞状をもらっているとか、有名大学の文学部で「言葉」に関しては誰にも負けないとか、そういう根拠を拠り所にするのはやめましょう。そのお友達はまず100%あなたに気を使っています。賞状の数ならおそらく僕の方が厚さにして広辞苑一冊分は多いでしょう。学歴や過去の努力などに頼るのは最もいけません。そういうものはこの業界では鼻をかんだティッシュと同じくらい意味がありませんし、あなたより高学歴の人にコンペで負けたりするともう二度と立ち直れなくなります。
根拠を持つと、それが覆されたときに、自信も消失してしまいます。ところが、根拠がなければどうでしょうか? 一生、自信を持ち続けられますね。作詞家のような生活上不安定な職業を目指す場合、「継続こそが力」なのです。自信を持って50歳、60歳になっても諦めなければ、いつかCDが出せそうな気がしませんか?
「私は書ける」「絶対一流のプロ作家になれる」という根拠のない自信を持ったなら、次は実際に詞を書き始めます。1日1作品を最低でも3ヶ月間続けることをノルマとしましょう。発表できるかどうかの当てのない作品を、毎日毎日書くというのは、それはそれは辛い作業です。並の精神力ではできっこありません。チョモランマを単独で3往復するくらいの気骨が必要です。世の中には楽しいことがたくさんあります。友達とお酒を飲む、恋人とイチャイチャする、スポーツでおもいっきり発散する・・・ 発表の当てのない詞を書くよりもそっちの方がどんなに楽しいことでしょう。「もう嫌だ、詞なんか書いてたって暗くなるだけだ」と思った人は、すぐさま恋人に電話しましょう。そして思いっきり楽しんでください。作詞家なんていう苦労の道を選ばなくても、人生、楽しい仕事は山ほどあります。恋人と楽しみながら、あらためて、もっと割のいい楽しい職業を目指しましょう。
さて、3ヶ月間、90編の詞を書き上げたあなた。あなたには、いずれ、作詞の神様が宿る可能性があります。90編の中から特に自信のある詞をかき集めて、力のある音楽関係者に渡してみましょう。「力のある・・」というのは、CDを制作する際に実質的な発言権を持つ人間という意味です。プロデューサーやディレクター、プロデューサーを兼ねる作詞家・作曲家、レコード会社の偉い人、アーティストの事務所の社長さんなどがいいでしょう。最も有効な手段は、アーティスト本人と知り合うことです。たとえば、GLAYのTAKUROがあなたの詞を気に入って曲をつけてくれれば即デビューです。あなたの詞にTAKUROを動かすだけの力があるならば、これも夢物語ではありません。
プロデューサーなどには、郵送でもいいですし、アポイントをきちんと取って実際に手渡ししてもいいです。初めはボツることも多いでしょう。それでも、毎日毎日書いては、また誰かに見てもらう・・・ 地道な作業ですが、これがオーソドックスな作詞家への道だと思います。
作詞家・作曲家の事務所に連絡する方法もあります。そこの社長が、あなたの詞を気に入れば「じゃあ、今度何々というアーティストのコンペがあるんだけど、参加してみる?」という具合にチャンスが回ってくることもあります。
あとは、あなたの才能と努力の結果如何です。
最後に、作詞家になるいちばんの早業をお教えしましょう。それは、今日から会う人会う人すべての人に「私は作詞家です」と宣言しちゃうことです。本人が作詞家だと言えば、作詞家なのです。まず、作詞家になってから、おいおいとCDを出していくのも一つの方法です。
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