書斎(1999.7.24)
昨年の秋に一度、100冊近く本を処分したのだが、とうとうこの春、飽和状態に達してしまった。置き場所に困り、家の近所に本の倉庫代りに部屋を借りることにした。途中、色々あったが、ようやく歩いて十五分のところに三畳一間のアパートをみつけ、そこを借りた。家賃は月¥8,800−。木造、風呂なし、共同トイレではあるが、東京23区内であれば、格安の部類に入るだろう。
実際に部屋を見ると、本置き場だけで使うのはもったいない気がしてきた。そこで椅子が壊れて以来、本棚券物入れとしてしか働かなくなった机も持って行き、古道具屋で椅子を買って、書斎にすることに決めた。本棚を一竿買い、小さなテーブルと蛍光燈や電気スタンド、食器類用意し、徹夜もできるように毛布なども持ち込んでみると、実に立派な書斎になったのである。あまりの嬉しさに、中古のウィンド・クーラーまで買って取り付けてしまった。西陽が入って、春先でも何日か放っておくと部屋の中が蒸されるのだ。これで夏も快適に物書きが出来る。
机をどかした分、実家の部屋にスペースが出来たので、丁度欲しかったiMacを買うことにした。本当は書斎に置きたかったのだが電話の敷設に金がかかるのと、家人、が僕が本格的に書斎に篭りっきりになるのではないかと心配するので家に置くことにした。
ちなみに、家人は僕のことをよく知っている。iMacは家に置いて正解だった。
平日は、大体週に3〜4日ペースで会社帰りに書斎に寄る。2時間くらい資料を整理したり原稿の下書きをしたり腹が減るまで「本職」に励んで実家に戻る。
土曜は他に用がなければ午後一杯、書斎で過ごす。いざとなれば午睡も出来る。調子に乗ると実家で晩飯を食った後再び書斎に戻り、一晩仕事をすることもある(過去一回きりだが)。最近ではHPを作るためあまり書斎には通っていないが、何とか公開までこぎつけたらまた、書斎の生活がメインになるだろう。
書斎には電話がない。土曜日と休日はほとんど書斎にいるため、僕への連絡がつかなくなり、妹や友人からクレームがついて仕方なく、今まで嫌っていた携帯電話に加入した。「今どっちにいるの?」が決まり文句である。
今の不満といえば、書斎のことをちゃんと書斎と呼んでくれない人が多いことだろうか。両親は「別宅」と呼び、妹は「基地」と呼ぶ。携帯に電話してくる友人の多くは「あっち」としか呼ばない。まあ、どうでもよいことだが。
大抵、この話をするとうらやましがられる。とくに既婚者の男性は、かなり強い反応を示す。独りになれる場所が、せいぜいトイレと風呂場くらいしかなくて、つらいのだそうだ。何を言うか。そっちには奇麗な奥さんがいるではないか(何故か僕の友人の奥さんは美人ばかり揃っている)。僕はその奥さんが当分いなさそうだから、書斎に篭っているのだ。いわばトレードオフである。
不思議なことに、彼らは異口同音に同じ事を言う。
「夫婦喧嘩で嫁さんに追い出されたら、お前の書斎にしばらく留めてくれよな」
贅沢(1999.7.22)
齢30にして自宅の外に書斎を持つこと。たかが初段の癖に榧の四寸盤と黄楊の彫駒を持っていること。猫の額に留った雀の涙ほどのボーナスが出て、パソコンを買うこと。バイトじゃない本物のバーテンダーのいる店で、バーテンの薦めるままの銘柄の酒を、財布の中身を気にしないで飲むこと。キャバクラで、おねえちゃんを口説かないで遊ぶこと。一日中、蒲団に篭ったまま好きな本を心行くまで読み耽ること。
千人突破
今ごろ気づいたことだが、いつの間にか『霧霧迷』へお越しいただいたお客さんの数が延べ千人を超えた。週一回は日記の更新などのため僕自身がアクセスしている。この分を差っ引けばそろそろ実質延べ千人ご来訪の頃合だろう。
開設が昨年の8月だから、9ヶ月で千人、横に均すと月百人以上の人が見に来ていることになる。と言っても同じ人が何度も来ているのはわかっているから、日記を見に週一回、他に更新がないかチェックをするのにもう一回、週に一人の人が二回来るとして、一月四週間×二回=八回、つまり十人以上は見ていることになる。これはすごい。
大体、開設当時から常に、こんな無愛想なサイトにお客さんなんて来るのかなと怪しんでいた。カウンタをつけたのはプロバイダが提供してくれた無料サービスだから、という単純な理由だった。さすがに開設直後しばらくはカウンタの数が気になって、精神衛生上よろしくないと考え外そうと思った。しかし、いざ外してみるとトップページのデザインが何となく間抜けに思えたので放っておいている。
開設当時の予定では、一日に三人もお客さんがあれば多い方と踏んでいた。一年後に千人突破していれば何となく見られているんだな、という気がしてくると思っていた。予定より三ヶ月も早く千人を突破したことに正直、驚きを隠せない。133%のスピードでアクセスされていることになる。西武の松坂投手が、時速200Kmの球を投げるのに等しい。単に数字だけを横滑りさせると、こうなってしまう。
掲示板を置いて欲しいという要望は当初からあった。レスが面倒臭いのと、どこの誰だか知らない人間に『霧霧迷』を汚されるのが嫌だ(ああ、本当のこと言っちゃった)という理由で拒否し続けてきた。大抵、個人サイトを訪れる一番の目当ては掲示板と相場は決まっている。そういう目玉商品がなくてよくここまで来たな、とつくづく思う。今後とも掲示板を置く予定はないが突然、気が変る可能性もあるので油断ならない。実際、無料でくれる、という宣伝を見る度に、一度、期間限定で実験的に置いてみようかという誘惑が湧いてくる。僕自身がほとんど掲示板を見ることもなく、たまに見たとして偶然目に入った書きこみに気が向いたらレスをするだけなのだろう。結果がわかっていることは、実験に値しない。
とにもかくにも僕からの完全な一方通行のサイトに、よくも延べ千人の方々がいらしてくれたものだ。これは感謝しないと筋が通らない。じっとトップページを見ていると、左下隅にフレーム一つ分の空きがある。これを利用しない手はない。
開設一周年を目標に、ここを利用して皆様への感謝企画を現在、作成中だ。あまり大きな期待をせずに、お待ちいただきたい。
そして、今後とも霧小舎捕人と『霧霧迷』をよろしくご愛顧願い致します。