この地で別格の評価を得ているドメーヌは20ヘクタール強の広さがあるが、その半分は拠を置くブズロンにある。ブズロンはシャロネーズ地区の最北端に位置し、アリゴテ種のみを用いたワインのみがこのアペラシオン――1997年、それまでのブルゴーニュ・アリゴテ・ド・ブズロンから単独のブズロンに格上げとなった――を名乗れ、その広さは60ヘクタールほどと非常に小さい。畑は270メートルから350メートルの斜面にありコート・ドールとほぼ同じだが、若干高めの標高となっている。
ドメーヌでは1986年以来、有機農法によるぶどう樹の栽培を行なっていて、当然施肥も化学肥料は用いず堆肥も必要に応じてというふうで、最大限テロワールを生かす取り組みがなされている。選果は畑においてしっかり行ない、白は温度コントロールされたイノックスのタンクでクリーンな果実風味を十二分に引き出す発酵。赤の醸しは木製の開放の大桶で、ピジャージュも人手、その後ピエスで熟成――新樽の割合はヴィンテージ毎に様々――、そしてフィルターをかけずに瓶詰め。SO2の使用比率も低く抑えているのが、味わいからも体感出来る。
ワインのなんたるかを把握しているドメーヌならではの姿勢が如実に現れているのがブズロン。虚仮威しの強さ、インパクト等とは無縁の、素直な果実風味に溢れた滑らかな味わいのワインで、アリゴテ種独特の酸味も他の要素とうまくバランスされ、非常に心地よい仕上がりになっている。ブルゴーニュ・コート・シャロネーズは赤、白ともにブズロンの集落から生まれ、それぞれのラベルに記されている、ディゴワーヌ、クルーはリュー=ディの名称。双方ともに品のある、各要素が突出していない調和のとれたもので、アフターも十分。このドメーヌがいかにバランスに重きをおくか、ブズロン同様十分に体現されている。リュリーは、南のマコン、プイィ=フュイッセとは明らかに異なる酒質で、例えればピュリニーのキャラクターを多少細身にしたタイプで、リリースされてすぐよりも多少熟成させてからのほうが、その持ち味が開花するタイプ。またメルキュレでは、ニュイ=サン=ジョルジュに由来するピノ・ファンの株を用いていて、コート・ド−ルの赤と同じく、15年から20年の熟成は楽に可能。ともかく赤、白ともDRCに通じるというか、果実風味だけが前面にしゃしゃり出るようなタイプとは異なり、テロワールがそこはかとなく感じられる、しっとりとした果実味を湛えるワイン、ということが出来る。
ブズロンを前面に打ち出し、その白の酒質には端倪すべからざるものがあるドメーヌだが、なぜか品切れになるのは赤からなのである。
(インポーター資料)
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