学校給食パンの特徴について

   
学校給食パン
一般市販パン
製法  

中種法での製造が指示されております。

特に近年長時間熟成発酵による中種法の工場が増えてきております。

街のベーカリーではノータイム法、ストレート法のお店が多いようです。大手メーカーでは4時間発酵70%中種法がほとんどです。

原材料

  品質・規格及び使用基準が決められております。 各会社によりまちまちです。
  小麦粉 学給専用粉で主にカナダ、一部アメリカ産です。栄養強化(エンリッチ)として、主にビタミンB2が添付されております。そのため製品の内相色は黄色がかかります。残留農薬の検査は厳しく行われております。 カナダ、アメリカ産の他、自然食用に国内産、また経済的理由で輸入ミックス粉が使われております。
 

脱脂粉乳

主にニュージーランド産で、どのパンにも4%配合されています。配合が多いのは栄養と風味の為です。パンの色が少し黄色みがかります。 輸入または国内産で、0〜2%の配合がほとんどです。
  砂糖 パンにより3〜10%の配合で、上白糖が指定されています。黒砂糖パンには、現在は中国産黒糖が指定されております。また、砂糖の配合が少な目なのは、パンを主食と考えているからです。製品はそのために固くなる傾向があります。 食パンで4〜6%、菓子パンで15〜30%で、大手パン工場では、ほとんどが液糖(異性化糖)を使っております。液体でないとパイプ輸送や流量計にかからないからです。配合量が多いのは、甘くなるだけではなく、その保水性でパンをソフトにして、日持ちも良くなります。
  油脂 油脂メーカーごとに許可される銘柄も指定されております。バターロールには有塩フレッシュバターが指定されています。 各社によりまちまちです。
  イースト

(学名)サッカロミセス・セレビシェー・ハンゼン 1883

イーストと言うのは「酵母」の英訳です。一般的には作業現場で使われる名称で、同じように酵母というのは主に学術用語として使われてきました。植物で、大きく言うとカビの仲間です。日本酒、葡萄酒の酵母と同じ種で、自然食で話題になっている天然酵母も同じです。

当社では海からとれた海洋イーストを使用しております。

 

イースト・フード

昭和56年1月から臭素産カリウムのフードをやめてビタミンCフードに全面切り替えをしました。(表示はイーストフードV・C) 平成4年3月大手パン組合(日本パン工業会)で、自粛の申し合わせをし、その後一部で守られていないことが判明して、平成9年2月再度自粛の申し合わせが行われております。現在では、ほとんどがビタミンCフードを使っているようです。しかし、当社ではこのイーストフードを一切使用しておりません。
  乳化剤 規定により一切使用しておりません。

食品用界面活性剤のことで、グリセリン脂肪酸エステル(通称モノグリ)が使われております。薄い油の膜で水分を包み込んでパンをしっとり柔らかくし、その分歩留まりも良くなり、また機械耐性も良くなるので加工作業がしやすくなります。最近では卵から作られたレシチンも使われ始めました。

一部のパン自然食のパンを除いて、ほとんどの市販パンに使われております。配合は0.5%〜1%が一般的なようです。当社ではこの乳化剤を一切使用しておりません。

  保存料 規定により一切使用しておりません。

防腐剤、防かび剤のことで、プロピオン酸系とソルビン系が一般的ですが、最近は酢酸系も増えているようです。カビ、ロープ菌などの繁殖を押さえるため、パンを酸性化する事に使っています。製品によっては日持ち効果だけではなく保水効果もあるため、その分ぱんがソフトになるし、歩留まりも良くなります。配合量は季節で増減しますが、0.5%が標準です。

ただし最近では消費者の安全性指向に配慮して、各メーカーでは使用を控えるようになってきております。これらの保存料の中には、食品アレルギーの原因として疑われている薬品も多く含まれています。特にソルビン酸は突然変異を起こして発ガン性物資ができるのでは、との疑いがかかっております。当社ではこの保存料を一切使用しておりません。

  着香料 規定により一切使用しておりません。 菓子パンの中には、香料が使われているものもあります。中には桂皮酸のようにアレルギーを引き起こすものもあります。当社ではこの着香料を一切使用しておりません。
 

着色料

規定により一切使用しておりません。

黒糖パンにもカラメルなどは使っておりません。黒砂糖はもともと茶褐色で、これを煮て使いますので、パンも黒くはならず褐色です。

特にフィーリング(詰め物)・トッピング材に広く使われているようです。タール系のものは発ガン性の疑いがあるし、食用黄色4・5号・赤色2・102号はアレルギー原因と疑われており、赤色104・5・6号は外国では発ガン性の疑いから禁止されております。また天然着色料という表示があっても、その中のコチニールは昆虫から抽出した薬品で、危険性が指摘されております。当社ではこの着色料を一切使用しておりません。
  鶏卵 全卵で一個ずつ割って使っています。 冷凍液卵(中国・オーストラリアからのものが多いようです)や加工卵(乾燥卵など)が多く使われているようです。
分割機オイル  

生地を分割する機械のピストン面、カット面など金属同士が擦れる所に流す潤滑油のことで、微量とはいえ生地に付着、または浸み込んで侵入するため、流動パラフィンの分割機オイルには以前から発ガン性について問題視されているものです。

   

植物オイル(菜種・パーム油と乳化剤で作られています。)が指定されています。食用しても害はないとのことです。

ほとんどのメーカーで、いまだに鉱物性オイル(流動パラフィン=ロウのこと)を使用します。機械寿命は長くなるし、カスが少ないので異物混入も少なく、掃除も楽になるからです。
オーブンでの焼き方   給食パンは、ほとんどの場合再加熱されず、生で食されることがほとんどなので、中心部まで十分に加熱されるよう(澱粉を十分に糊化して消化に良いよう)良く焼き込む指導がされています。そのため水分が減って固くなる傾向があります。 消費者の嗜好がふんわり、しっとり、であるため、むしろ白め(薄め)に焼かれることが一般的なようです。食パンはトーストにされることを前提に焼成されているようです。

工場と機械設備

  各工場の建物・設備は給食会での選定基準に合格しております。一つのライン(ミキサーからオーブン・スライサーまで)で、いろいろな注文のパンを作る他品種兼用ラインで、自動化されない分作業員が多くなります。大手メーカーに比べると概して旧式で設備投資も劣りますが、細かい対応は可能です。

大手メーカーでは、ほとんどのパンが専用ラインで作られます。食パン・バターロール・あんパン・メロンパン・クロワッサンなどの各ラインは自動化され、オペレーターだけというラインもあります。

製品コスト競争力を追求しているので、規格化のため品質・規格の制約があり、細かい対応には不向きです。施設・設備では世界的に見ても優れたものとなっております。

衛生   選定基準に基づき年一回の保険所による立ち入り検査があり、80点以下だと改善命令がだされます。 各自治体で違うとのことです。大手ではHACCP手法がとられ始めています。
品質管理   年一回給食会で抜き取り調査(官能審査)を実施しております。(財)日本パン科学会や大学の先生、給食会の検査技官、学給パン協同組合技術部などが審査にあたり、75点以下の工場にはパン協技術部による技術指導が行われます。 大手メーカーでは独自の研究設備を持ち、そこで製品の開発、品質の管理などを行っております。
現在の規格の設定  

昭和57年「パン検討委員会」(57年3月〜58年11月)において規格が定められました。

(構成) 都教委・区市町村教委・都給研・都調理師会会長・栄養士代表・栄養学学者・給食会・学給パン組合代表   総勢26名

各メーカー独自で商業ベースにのっとり開発され、規格・生産されます。
まとめ  

給食のパンは市販のパンとは違い、流行を追ったパンではありません。栄養バランスの配慮や食品としての安全性を最優先させて作られたパンで、市販パンとは一線を画するものです。

・学校給食の主食として、規格が設定されております。特に糖分・塩分・油脂の配合は配慮されております。

・乳化剤・保存料・着色料・着香料及び発酵促進剤など添加物を排除、機械油の規制もされております。

・学給パン工場への技術・衛生指導は給食会と学給パン組合(技術部・衛生部)とで随時実施しております。

・給食会の物資案内書には給食パンの標準成分が明記されております。

学校給食パンの歴史  

・過酸化ベンゾイルの排除

  有害との疑いのため学給パン用小麦粉の漂白・殺菌をやめ、無漂白にしました。

・リジン添加の問題

  栄養強化剤としてリジンを添加しておりましたが、昭和50年埼玉県和光市の調査から3−4ベンツピレンが検出され、発ガン性の疑いのあることから東京都ではリジンの添加をとりやめました。

・臭素酸カリウムの問題

  イーストフードに酸化剤として添加されていましたが、昭和56年に発ガン性の疑いからビタミンCフード(L−アスコロビン酸)に切り替えられました。

・マーガリン防腐剤の問題

  油脂メーカーに対して、防腐剤として使っていた臭素酸カリウムの添加を取り止める要請をいたしました。

・乳化剤の添加について

  決して有害なものであるという訳ではありませんが、使わなくてもパンは作れるのですから使いません。子供たちにとっては給食のパンが食べにくい原因になっているのかもしれませんが、安心なだけではなくむしろ小麦本来の味と香りが楽しめると考えております。

 

このページは東和パン中村様のご指導により作成しました。