Christmas Day


25日、言わずとしれたクリスマス。
ここ日本では宗教的な意味は、もはやかけらほどもなく…。
子供やカップル達の一大イベントとなっている。

それでも街全体がイルミネーションに飾られる。
そんなめったにないシチュエーションに乗って見るのも一興かと、彼女の楽しそうな顔を見て思った。


向かいの悪友から彼女へのプレゼントはクラシックコンサートのペアチケットだった。
いつもは車で通り過ぎるだけのそのコンサートホールに合わせたのか、彼女は黒のニットの
ドレスワンピースを選んだ。
上半身はノースリーブで身体のラインにぴったりとしたデザインだ。
とても彼女に似合っていると内心関心していたのだが恥ずかしいのか寒いのか、
彼女は同素材のカーディガンを羽織って演奏を聞いていた。

昨日彼女からプレゼントされた黒いセーターを着こんで彼女に並ぶ。
それは彼女のドレスから切り取ったかのように、そのドレスとなじんだ。

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コンサートの帰り、せっかくドレスアップをして出掛けたのだからと
馴染みのバーに連れだった。
アルコールに強くない彼女なので薄目のカクテルを注文していたのだが
周りの雰囲気に流されたのか、気がつくとかなりグラスを空けた様だ。

うつらうつらとしている彼女を抱き上げて、とりあえずソファに横たえる。
水でも飲まそうかと側を離れると、酔いの回った彼女は背もたれに腕を伸ばし
うつぶせでこちらに背中を向けて身体を伸ばした。

その後姿が…まるで俺から逃げ出しているように見えて…。

思わず彼女を後ろから抱きしめた。
アルコールの薫るその身体は彼女ではないようで、いつもの彼女の香を温もりを
感じたくて…ジャマなカーディガンをはがし、彼女に少しでも近づく様にと綺麗な背に頬を寄せた。

うっすらと色づいた彼女のうなじは、毎夜の彼女を彷彿させる。
感情の赴くままに、唇を寄せ赤い華を創った。

「……りょ…」

彼女の艶やかに染まりはじめた声色に思わず笑みが浮かんだ。

誰にも邪魔させない聖夜が始まる…







 

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