おい、と呼んだが振り返らない。
「香」
しょうがねぇから名前を呼んでやったら、満面の笑顔を見せた。
ずきりと疼いた心臓をごまかすのにちょうどいいものがあった。
「ほいほいほいっと」
こんな柔らかいものを指先から繰り出すなんてのは、俺にしかできない芸当だ。
もっとも、あんな小さな口で続けざまにキャッチされたら自慢にもならんが。
「うまいだろ」
「......マシュマロ」
チョコのお返しだ、とは口が裂けても言わねぇぞ。
「そんじゃな」
こんな日はずっと一緒にいてやりたいが、商売柄義理は返しておかんとな。
「ツケ、増やさないでよね」
早く帰ってきて、とか可愛いこと言えねぇのかよ、まったく。
マシュマロは焼いた方がおいしい。槇村がそう言ったなんて
香が言うもんだから、槇村の言うことは何でも正しいのか、なんてよ。ついムキになって
喧嘩したのは一年前。アニキアニキっていちいち引き合いに出してくんなっての。
「焼いて食ってろ」
ま、懐の広いところを見せておかんとな。嬉しそうにしてる
ところをみると、どうやら時効にはなってなかったらしい。
「すぐ戻る」
すぐって言っても日が変わるか変わらないかの時間にはなるが。
「待ってる」
串で刺して
火であぶって
マシュマロみたいに蕩かして
「極上のデザートだな」
「朝までなら、ゆっくり味わえるわね」
生意気なおでこを人差し指で小突いた。ふわっと赤くなった頬は既に蕩けていた。
とある事情で頂いてしまいました。
『棚ぼた』ブツです。わーい
いやー、ギリギリになってごめんちょ★