christmas day  〜after〜


クリスマスの日の朝、僚がプレゼントをくれた。
だけどあたしはナンにも用意しておかなくて…それを僚に言ったら

「俺がおまぁに誕生日作ってくれたお礼したじゃん?覚えてる?アレしてくれればいいよ?香ちゃん」

「ちょ、何言うのよっ!!」
僚に思ってもない事を言われ、おどろいてベッドに尻餅を付く。
香は壁際にじわじわと追いつめられていた。
それでも近づいてくる僚の顔を焦って両手で押さえる。
僚に貰ったブレスレットがキラリと揺れた。
僚は香に頬をおさえられながらもニヤニヤと笑っている。
「じょーだんだっての。おまぁができるわけねーよなー」
自分の頬に添えられた香の手を取ると、そっと自分から離した。
「りょ…」
香は泣き出しそうな、照れたような怒ったような表情をしていた。
僚は香の瞳を見つめながら、にっこりと笑顔を見せ、いつものように香の髪を
くしゃとかき混ぜた。
「ん、な顔すんなよ。本気にとりやがって…。さーてと僕ちんは愛しのベッドと再会を楽しむと
するかね、なんてったって一晩中、香ちゃんの寝顔見てたから眠くてしょーがーねーや」
「なっ///」
「だってホントだもーん。寝顔は可愛いかったのにね、香ちゃん」
僚は展開についていけないでぼけっとしてる香の前髪を上げ、でてきた綺麗なおでこを指で軽くはたく。
「イタッ」
「わりーわりー、じゃ、今日はプレゼントってことで思う存分寝かせてくれよな」
僚はとまどっている香を後目に香の部屋からでて自室に向かった。
香はその後ろ姿をおでこを押さえながらじっとその姿を見ていた。
「…バカ…」


僚は香の部屋から戻るとベッドに飛び込むように突っ伏した。
「ふぅ、やばかったよな…」

深夜に帰って、すでに寝ていた香の部屋に入った。
やましい気持ちがあった訳じゃなくて、クリスマスプレゼントを渡そうと…
月明かりがカーテンの隙間から香を照らしている。
ベッドに丸まってフトンにくるまって香は寝ていた。
僚は枕元にプレゼントをおこうと近づいた。
そしてミック達にお節介をやかれながら入った宝石店のジュエリーケースを
ポケットから取り出した。
宝石店で長い間見ていたのは指輪だった。
香の指にそれをはめる自分を想像した。それに喜ぶであろう香も想像できる。
何度も何度も店員に声を掛けようとした。
しかし、結局買ったのは…
僚は苦笑いしながらケースを開け、プレゼントを手に取った。
月のほのかな光に反射したのはー雪の結晶を象ったブレスレットー
「情けねーよな、まったく」
まだ覚悟は決まらない。香をずっとこの世界に居させるわけには行かない。
なのに自分から手放す事もしないで、こんな事を続けてる。
香の手首にブレスレットをつけようと、近づく。
「くぅん…」

小さく香が寝返りを打った。
香の顔をのぞき込むと目尻に涙の乾いた跡がうっすらと見えた。
僚はそれを指でそっとなぞり、香にフトンをもう一度かけ直すと、香を起こさないように
ベッドの空いたところに座り込む。
僚は結局、一晩香の寝顔を見ていた。髪を梳いたり、頬に触れたりしながら。
それ以上何もできない自分に呆れながらも、幸せを感じていた。


僚が寝に入ろうとしたときに部屋のドアが小さく鳴った。
「僚?もう寝ちゃった?」
香が控えめにドア外から声を掛けてくる。
僚は吸いかけていたタバコを灰皿に押しやって消した。
「いんや…」
ドアを開けて、香が入ってきた。
もう普段着に着替えてエプロンをしている。
「あのね、寝る前に軽くお腹にいれない?簡単だけどつくってきたんだ」
「あぁ」
香はトレイにコーヒーとホットサンドを持って、足でドアを閉めながら(オイオイ)部屋に
入ってくる。
「お腹空いてると寝られなかったりするじゃない?僚が寝る前に食べても太る心配ないし」
僚がベッドの端に腰掛けると、香はその脇にトレイを置いた。
そのまま出ていかないで、床に座って僚の食べる様子を見ている。
「なんで見てんのよ、香ちゃん?」
「ダメ?」
「ダメじゃねーけどよ。あぁあれ、さっきのやってくれる気になった?」
そんなこと無いと分かっていながらもからかってみる。
途端に香の顔が赤く染まる。
「ち違うもん…もう」
香が俺のカップにお代わりのコーヒーを淹れる。
その腕にはブレスレットが掛かっていて、それを見るだけで嬉しくなった。
「あ…」
香が小さく呟く。
「ん?」
香が何か言いたそうに自分の指先を唇に当てている。
「なんだよ、言いたいことあれば言えよ」
香は泣きそうな顔で僚を見上げる。僚がその表情に慌てた瞬間…
香は僚の両肩に手をかけると、顔を僚に近づけて僚の頬を香の唇がかすめた。
僚は思わず近づいてきた香自身を抱きしめていた。
「ほっぺにマヨネーズがついてた…の」
「ふーん(笑)」
「……ホントだからね///」
僚は照れて肩口から顔を上げない香の背中を優しく撫でる。
「あのね、本当にありがとう。嬉しかった」
香は顔を上げないまま、呟いた。
僚はもう一度、香の背中を撫でた。
「なぁ、香。これから槇村んとこ行くか」
「え、うん。行く行く。でも僚寝なくて平気?」
香は顔を上げてにっこりする。
「まだまだ若いからだいじょーぶだっ」
「えーホントかなー。でも嬉しい!!用意してくるねっ」
僚の腕からするりと抜けて、バタバタと部屋を出ていった。
僚はその姿を見ながら苦笑いを浮かべる。
そのままのそっと立ち上がり、ストレットをする。
(いつまでたっても槇村には適わないんだよな…。ま、2回も笑顔が見られたのはめっけもんだけどよ)

僚は食べ終わったトレイを持って、シャツを肩に引っかけると
鼻歌を歌いながらリビングに降りていった。

終わり


*うきさんちからの出戻り(苦笑)

 

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