灰皿を片付けようと、私は寝室のドアを開けた。
ベッドでは我が家の主(一応、そういうことになるんだろう‥‥‥)が、大の字になって、爆睡中。
陽はとっくに高く昇り、窓からはやわらかな午後の光。本当に気持ち良さげに眠る撩とは反対に、私はかなり寝不足。ちょっと頭も痛い。
昨日いつものように飲みに行った撩(それでも、以前にくらべてだいぶん回数は減ったと思うんだけどな。家でよく飲むようになったし)。
私はもちろん撩を待つ‥‥‥なーんて無駄なことはせず、一人とっととベッドに入ったんだけど。
なんだか寝つきが悪くて、ようやくうとうととしたのは明け方近く。でもその矢先どかどかと、気遣いとか遠慮とかそんな言葉を知らないような態度で、ベッドに倒れこんできた撩。
もう少しで押しつぶされるところだったわよっ! アルコールの匂いをぷんぷんさせた当の本人はすぐに高イビキ‥‥‥‥‥ったく、このバカ亭主っ!
結局それですっかり目が冴えてしまった私がようやく眠りについたのは朝日が昇るころで‥‥‥。
「‥‥‥☆γ□※α+‥‥‥」
撩がなにやらむにゃむにゃと寝言を言っている。ぷっ。まったく子供みたい、可愛いな。
ふわぁ〜あ‥‥‥‥‥
やだ、私まで眠たくなってきちゃった‥‥‥。投げ出された撩の腕。筋肉でゴツゴツしてて、枕にするには硬すぎるんだけど、腕の付け根の、肩の下あたり。そこに頭を乗っけると、すっごくイイ感じ。
‥‥‥ちょとだけ、横になろっかな‥‥‥だけど掃除もしなきゃ‥‥‥でも、でもほんの少しだけ‥‥‥。
どうしても誘惑に勝てずに私は、撩の横に滑り込む。頭を彼の腕の付け根に乗っける。ちょっとずつ、位置をずらしてピッタリと私の頭が納まるところを探す・・・あった、ここ。
しっくりと撩のからだになじんで私は満足な気分。
手を撩のたくましい胸の上に置く。トクトクトク。彼の鼓動が伝わってきて、急速に私は眠りに引きずり込まれる。
意識が遠くなるほんの少し前、撩が私をだきしめて、頭のてっぺんにキスしてくれたのがわかった。
なんだかすっごく、嬉しかった。
2003.10.18
‥‥‥? 香?
いつもの気配を感じて、意識が少し浮上する。
肩の下に快い重みを感じる。いつもの位置。
俺のからだに香の頭がなじむ。
今何時だ? 朝なのか、夜なのか‥‥‥。
まあ、そんなことはどーでもいい。
胸の上に香の手のぬくもりが加わる。
すっげーいい気分だ。
俺は香を抱きしめて、柔らかな髪に口付けると。
‥‥‥もう一度深く眠りに落ちた。