Roots of Technology
Since: December 7th, 2008
Last updated: December 27, 2008
"電子と光"の
最新技術や研究のルーツ
それぞれの先端技術や研究が始まった時代は、いつだろう?
始まった場所は、どこだろう?
*** 大学生・大学院生の皆さんへ ***
「こんなにたくさん、暗記するの??」
「いいえ!」
もしも仮に、19世紀・20世紀そして21世紀の科学と技術の発見や発明の順番が、偶然だとしたら... ちっとも面白くないだろうねえ。
実際には、1つの発見が次の発明の契機となり、1つの発明が次の発見の動機となっています。
大きな発見・発明・実用化の場合、1つの時代が生み出されてから次の時代が生み出されるまでに、10年、20年、場合により30年以上の年月が経っています。
インターネットやパソコンが生まれてから30年近く経っているけれど、まだまだ複雑過ぎて、用語もごちゃごちゃで、使いにくいでしょ? (vistaからxpへダウングレード権?? 誰が何のために??)
17世紀
1687年、Isaac Newtonが、運動の法則と万有引力の法則を集大成し、発表した (Europe)。
18世紀
1785年、Charles de Coulombがクーロンの法則を発見。重力・磁力・電気力の全てが距離の逆2乗に比例することが判明した (Europe)。
19世紀の前半
1799〜1800年、Voltaが、起電力1.1Vの一次電池の原理を発明・発表した (Europe)。
現在最先端の
リチウム電池
、ボタン電池、燃料電池などの あらゆる高性能電池のルーツである。
1849年、フィゾーが、"光の速度"を、人類史上初めて実験室内で測定 (Europe)。
19世紀の後半
1856年、ガイスラーが、放電管(ガイスラー管)を製作した(Europe)。
現在の
蛍光灯、液晶バックライト、プラズマディスプレイ
のルーツである。
1865年、Maxwellが、
電磁波
の基礎理論を完成・発表した (Europe)。
1868年、明治維新 Meiji Restoration (Japan)。
1869年、科学雑誌ネイチャーが創刊された (Europe)。
1869年、メンデレーエフが、元素の周期律を発見 (Europe)。
1878〜1880年代、スワン、エジソン、フィリップスらが
白熱電球
を実用化した (Europe-North America)。
特にエジソンがきわめて多数の
特許権
を出願・登録した。
1888年、Heinrich Herzが、人類史上初めての無線電磁波の発生と検出に成功した (Europe)。
20世紀の前半
1901年、Marconiらが、人類初の(地球規模の超長距離の)
無線通信
に成功した。
これにより、無線電波信号が大西洋を横断した (Europe)。
1905〜1915年、Albert EinsteinやNiels Bohrが、
前期量子力学
と相対論を生み出した (Europe)。
1908年、ヘンリー・フォードが、T型フォード乗用車の製造を始めた。
人類初の
自動車産業
と
大量生産技術
が誕生した (North America)。
1912年、タイタニック号が沈没する直前に無線通信機でSOS救難信号発信し、 これを受信した付近の船舶が多数の人命を救助した。
1946年、人類初の
半導体トランジスタ
の増幅作用が発見・発表された (North America)。
20世紀の後半
1953年、ワトソンとクリックが、DNAの2重らせん構造を解明した (N.America)。
その後の
分子生物学
のルーツである。
1956年、人類初の原子力平和利用(商用原子力発電所)が始まった (N.America-Europe)。
1960年、Meimanらが人類初のレーザ発振を達成・発表した (N.America)。
これにより、多くの新しい研究分野(
量子エレクトロニクス、非線形光学など
)が、誕生した。
1962年、人類初の半導体レーザ発振が達成・発表された (ただし絶対温度77度の極低温下に限られた)。
1964〜76年、人類初の
スーパーコンピュータ
が開発された (第1世代, N. America-Japan)。
1970年、林厳雄とM.B. Panishが、実用的な半導体DHレーザ構造を発明、室温レーザ発振を達成した (Bell研究所, New Jersey, USA)。
1960〜1970年に誕生した光エレクトロニクス研究が、現在の
半導体レーザ・発光ダイオード・太陽電池
のルーツである。
1970年、大阪万博で、日本電信電話公社(現NTT)が、日本で初めての
携帯電話機
を出展(ワイヤレスフォン)。
1971年、Intel社が、人類初の集積信号処理回路, integrated signal processor (Intel 4004)を製品開発・発表した。
約2,000個の電子トランジスタを集積した。
現在のパソコンの
CPU、DRAM、携帯電話の信号処理チップ、 デジカメ受像チップ(CCD)、フラッシュメモリ、ICカード、無線タグチップ
のルーツ。
1954〜1972年、初期のfortranからC言語までのコンピュータ言語が完成し、人類初の
コンピュータサイエンス
が誕生した。
1975〜1985年、半導体超格子、
半導体量子井戸(Quntum Well)、半導体量子箱(Quantum Dot)
などの研究が、いくつかの研究機関で始まり、次第に盛んになった。
1978〜1981年、人類初の小型コンピュータ"パーソナルコンピュータ"が製品化された(富士通1978年、NEC1979年、IBM1981年)。これが大きな契機となり、技術開発の中心が大型・中型事務用コンピュータ機から小型汎用コンピュータへと、移り始める。
1980年、通商産業省(現在の経済産業省)が、火力と原子力に代わる代替エネルギー源の開発を目的とする、開発研究支援団体(現在のNEDO)を設立し、
太陽電池・風力発電・地熱発電方式
の研究開発の強力な支援を、開始。
発足当初のプロジェクト名称は、"サンシャイン計画"。国家規模の設立の動機は、第1次・第2次オイルショックの危機だった。
1983年、DarpanetのプロトコルがTCP/IPに切り換えられ、 人類初の
TCP/IPネットワーク(インターネット)
が誕生した。
1989年、人類初の地球規模の
光通信ネットワーク
(大西洋横断海底ケーブル, TPC-3)が建設された。
これ以降の地球規模の通信ネットワークの大多数は、陸上無線網と衛星無線網から、陸上光通信網・大陸間海底光通信網へ、完全移行した。 これ以降の広域ネットワークの殆ど全てが、光通信に支えられている。
1989-1993年、日本国内の民間企業が、電子メール送受信を、本格的に運用開始した。
この時期に、
携帯電話機
の小型化と低価格化が進み、爆発的普及が始まった。
1995年前後、日本国内の民間企業が、
ウェブサイト
を本格的に運用開始した。
北米や欧州各国にかなり遅れた日本の教育研究機関・地方自治体・政府機関も、
犯罪と故障に注意を払いつつ、ウェブサイトの本格運用を開始。
1996年〜2004年、日本国政府が、フェムト秒プロジェクト(経産省/NEDO)、トータル光通信プロジェクト(総務省/NICT)など、 次世代の光伝送通信方式開発を主目的とする
国家研究プロジェクト群 (第1世代プロジェクト群)
を発足させ、これに参加した多数の産学官研究機関が、 革新的な基礎研究成果を生み出した。この分野は日本の得意分野であり、日本の独創的な成果が世界をリードしている。
1997年、地球温暖化防止京都会議(COP3)を、日本が議長国として主催し、温室効果ガス(CO2など)削減とその目標値を決議した(通称、
京都議定書
)。150カ国以上が批准・締結。しかし米国政府は国内の製造産業界の強い反発を受けたため、賛同しなかった。
⇒ 2008年7月、再び日本が議長国として主催した北海道洞爺湖サミットで、さらに厳しい削減目標を議決。 米国政府は、国内製造産業界の反対意見を抑え、初めて賛意を表明した。
21世紀の前半
2001年、人類史上初めて、毎秒10テラビットの光ファイバー伝送に成功, 日本のTAO(現NICT)-NECプロジェクト、など。 技術課題は、光信号のまま高速信号処理することがとても難しいこと。
2004年、人類史上初めて、
日本国内の光インターネット回線
の契約者総数が、ADSL回線契約者総数を、上回った。
2008年9月15日、国際企業 リーマン(米国, 金融業)が膨大な不良不動産債権を抱えて倒産。世界各国を巻き込む金融不況・産業構造不況が発生。
高速ネットワーク技術
の将来は:
光信号のまま高速・省エネルギーに信号処理する「革新的な材料とデバイス方式」を発見・発明する努力が、世界各地の研究機関で、続けられています。
現在現役の大学生・大学院生が、元気良く活躍する時代は:
2008年現在から、2040年〜2050年以降までの30年以上だよ
!
(17世紀〜19世紀の科学史の主な出典: 小山慶太、科学史年表、中公新書 2003年)
電気通信大学 電子工学科/電子工学専攻
超高速光ロジック研究室
上野 芳康