Ultrafast Photonics-Optics Essay, Merge between communication and broadcast industries (in japanese)
July 19, 2007

Ultrafast Photonics-Optics Essay

Merge between communication and broadcast industries

Yoshiyasu Ueno, Ph.D
University of Electro-Communications, Tokyo




通信産業界と放送産業界の融合 (政策案)
Merge between communication and broadcast industries, was recommended



  大学から大学院で、皆さんは、教養と専門を学びます。教養とは恐らく、日常生活で直接見える狭い現在のことより、 未経験な分野や世界の生活に次々と触れ、過去から未来への時代の動き(*1)を生き生きと想像する、視野の広さと深さと思います。 (皆さん大学4年生・大学院生は実際に、学内から学外に広がる毎日の研究活動を通して、着実に1歩ずつ、視野を広げています!


  掲題の「通信と放送の融合」に関する速報ニュースを、末尾に掲載します。
総務省研究会報告書で提言された政策案段階とのことですが、4, 5年後の将来像として充分現実的と思います。社会にとっても電子産業にとっても大きな区切りとなる、新しい時代の幕開けではないでしょうか。


  提言に従って政府と国会が法制度を融合すると、従来制度に基づいて排他的に発展してきた放送(*2)と通信(*3)の分担範囲、基盤技術、電子機器・部品材料、国際標準規格の多くが、最新の通信技術に基づいて、大きく再構成されていくでしょう。 いわゆるケーブルテレビ網(周波数上限500MHz前後の同軸ケーブル網)を今後新設するメリットは、もはやあまり無いでしょう。 各家庭への電力ケーブルと上下水道管と同様に、光ケーブル網が、今後5年10年の歳月をかけて全国全市町村の隅々まで本格整備されるでしょう。地上波デジタル放送も、最終段階では、光ケーブル網が全て担うのではないでしょうか。

今後は、電話・インターネット・放送といったメディア種類や運営企業の業種業態に関わらず、
  • 1キロメートル前後の近地間・小容量通信は、無線電波通信が担う
  • 中距離以上・中規模以上な通信は、有線光通信が担う
という、得意・不得意に沿ったインフラ整備分担へと、融合かつ集約されていくと思われます(*4, *5)。 ADSL技術ではこれほどの抜本的転換は不可能と思われますが、 元来10テラビット秒以上の高速性能を有する光ケーブル通信技術ならば、大転換可能でしょう。 いずれ近いうちに、世界中の一般家庭からVHF/UHF/パラボラアンテナが姿を消すことになりそうですね。


  転換期の時代を歩む研究者の1人として、今後の光回路・光材料研究分野の飛躍と活躍を、大いに期待しています。


脚注:

*1) 電子産業関連の例では、1995年以前には、現在のように手軽なインターネット網も携帯電話機も、存在しませんでした。1980年以前には、現在のように手軽なパソコンも存在しませんでした。これらの3つが、私たちの生活と社会を驚くほど大きく変えました。遠隔地の公共情報を誰でも手軽に入手できること、小規模団体・有能な個人自身が独自の独創的な情報を手軽に発信できること、大量生産に伴う多岐の設計・物流・小売の人件費削減、災害対策や福祉事業への貢献、などです。弊害や犯罪など負の側面を抑えながら、これらの電子機器インフラをどの方向へ発展させていくか、これからの若い世代の選択肢です。

*2) 衛星テレビ放送、地上波VHF/UHFテレビ放送、有線テレビ放送(ケーブルテレビ)、ラジオ放送(FM, AM, 短波)。

*3) 固定電話回線(有線)、ISDN回線(有線)、携帯電話回線、インターネット通信回線(ADSL, 光)、無線LAN回線、専用通信回線、ほか。

*4) 人類の電子産業史上の大きな『融合』を振り返ると、それは固定電話網とインターネット網の融合でも、パソコンとテレビの融合でも、 携帯電話とデジカメの融合でもなく、

『1980年代の通信網とコンピュータの融合』

だったと思います。さらにその少し前の1977年、 インターネットの影も形も無く、パソコンは非常に未熟、デジタル通信のニーズも皆無に等しかった時代、 世界中のアナログ電話信号を"1対1"に切り替えていた時代に、
日本の小林宏治氏が、
「いずれ将来は、コンピュータが通信網の中心となるだろう(computer & communication, C&C)」
という未来像を提唱したとのこと。 しかしその当時は、世界中の専門家の大多数が、「そんなことはありえない。SF映画だ。」と受け取ったそうです。 そしてその後の電子産業は、ほぼ小林宏治氏の未来像通りの方向へと進み続け、高速信号処理回路(=小さなコンピュータ)が通信網システムの核心部に無くてはならないものとなり、 IP通信網、携帯電話端末、圧縮再生技術が次々開花しました!

*5) 20年50年規模の社会資本としての有線通信方式の欠点は、面倒さや敷設コストよりもむしろ、自然災害と犯罪に対する脆弱さと思われます。 従って生活に密着する119番や110番を含め、自治体規模・全国規模の災害対策・緊急用通信回線に関しては、 特別な無線予備回線網を、将来にわたって維持運営する必要があるでしょう。これも重要な役割分担の1つです。


参考データ: 光産業国内生産額 (2007年度予測値)

光産業国内生産額 8.4兆円 (国内GDP 520兆円の、1.6%相当)
光産業国内生産額の成長率 +5.4% (国内GDP成長率は、+2%前後)

対象項目: 光情報通信関連、光ディスク関連、ディスプレイ関連、医療関連、計測器関連など、機器・装置101項目と部品81項目
集計団体: 財団法人 光産業技術振興協会 (OITDA)

注意1: 上述の「GDPの1.6%相当」は、光のハードウェア生産相当額です。従って、最先端"光"ハードウェアにサービスを加える最新ビジネス(携帯電話契約、光インターネット接続)のGDP影響力は、さらに大きい。
注意2: GDPは、国内販売額ではなく、国内で加えた「付加価値」の総額です。あいにく今回の資料に含まれていませんでしたが、光産業国内生産品の多くが米欧・中国・韓国などへ販売されていることにも注意してください。(逆に例えば韓国の半製品を日本が輸入してOEM販売すると、輸入額分を差し引かれるはず。)


通信と放送、融合へ新法・総務省方針
(日経オンラインニュース、2007/6/15付け)
  総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が来週まとめる中間報告が14日、明らかになった。ブロードバンド(高速大容量)通信やデジタル放送の普及で通信と放送の垣根が低くなってきた現状をふまえ、電気通信事業法や放送法などの法律を一本化。2011年に「情報通信法(仮称)」を制定する方針を盛り込んだ。技術革新に対応した多様な新規参入を促すと同時に、有害な番組の規制基準なども統一する狙い。

  研究会は来週19日に中間報告を公表。12月をめどに最終報告書をまとめ、年明けから新法制定に向けた作業に入る。通信・放送市場では2010―11年に光ファイバー網の全国敷設、地上波テレビ放送のデジタルへの移行が相次ぎ完了する。これをにらんで総務省は10年の通常国会に法案を提出、11年に施行したい考え。



University of Electro-Communications
Graduate School of Electronic Engineering / Dept. of Electron. Eng.
Ultrafast Optical Logic Laboratory