fujiyanの添書き:「ゲイ差別」と「ストーンウォールの反乱」 日本では、古くは織田信長は前田利家や森蘭丸と関係していましたし、近年では三島由紀夫など、偉人・文化人であるゲイ(これらの場合はバイ・セクシュアルですが)は多く存在します。また、毘沙門天に「我一生女犯せず、しかして不敗の力を与えたまえ」と祈った上杉謙信、後継ぎが出来ず周囲をハラハラさせた江戸幕府三代将軍徳川家光などはゲイであったと思われるようです。推測の領域を出ませんが、日本と比すると、西洋社会のとゲイの方々への差別は激しいものがありました。恐らく現在でもそうだと思います。 1998年10月に、ワイオミング州のある大学生のゲイが一人の男性を誘ったところ、その男と友人の二人組がその大学生を柱に縛り付けリンチを行い、拳銃の台尻で頭蓋骨を陥没、というか「粉砕」させ、被害者は18時間放置され死亡したという事件がありました。犯行動機は「強盗」による「殺人」とされましたが、その残忍な殺人方法から単なる強盗殺人ではなく、ゲイに対する「ヘイト・クライム(hate crime:憎悪犯罪)」であるという見方が大勢を占め、当時のクリントン大統領からも声明文が出るなど、全米を震撼させました。また、その裁判や葬儀会場では、被告を擁護する団体が「天国にゲイはいない」「神はゲイを憎む」云々、というデモを行いました。 キリスト教について、西洋社会と比すると縁遠い日本人には理解しにくいことですが、西洋社会でのゲイの方々への差別は「聖書」に書かれた内容に根源があるようです。 いわゆる「新約聖書」より以下。
キリスト教を含め、遊牧民の宗教では「産めよ、増やせよ」で一族の繁栄を確保するため、出産の可能性が無いゲイへの批判が大きくなると考えるのが一般的なようです。例えば、ユダヤ教の「聖書」では、主なる神が、モーセに諸規定を与えている「レビ記」においてこう書かれています。
キリスト教では、ユダヤ教の「聖書」を「旧約聖書」とし、「新約聖書」と同様に認められているのはご承知の通りです。当地ではその昔「同性間での愛」が違法だったそうです。「宗教的倫理」を「法律」に組み入れたわけですね。「倫理」を「法律」に組み入れることは日本にも例があり、刑法で「尊属殺人」=親殺し、は通常の殺人より、はるかに厳しい罰則規定になっているというものがあるのはご承知の通りで、これは「儒教」の影響と思われます。この条文が、法の下での平等に反するとして最高裁判所で「違憲」とされたのも、ご案内の通りです。でも「同性間での愛」を見つけて逮捕することは、チョット難しそうですね。で、「女装」を違法にしたそうです(!)。1950年代に、ゲイの人権団体「Mattachine Society」が創設され相当戦闘的な抗議活動を行い、1960年代には「女装」が違法なのは、その運動により撤廃されました。しかし、大多数のゲイは沈黙していました。 また、ゲイに対してなんらかの憎悪を行いたい、という動きは、私的暴力として残ります。また法的な動きとしてはゲイ・バーに向けられました。ゲイ相手の酒類販売免許は出さない、でも集まってゲイの方々は酒を飲む、そこを逮捕する、という方法です。それでも大多数のゲイは沈黙していました。1969年6月27日の「ストーンウォールの反乱 (Stonewall Rebellion)」までは。
「ストーンウォールの反乱」については、ドラマ仕立てのものも含めて、サイトや書物でホント色々拝見しましたが、結局何が起こったのかが良く判りません。で、基本に戻って新聞記事を参照。1969年7月6日付け「New York Daily News」より抜粋し上記を抄訳。ゲイそして警察の双方のコメントがあったので最も適正と思われたので、この記事にしました。またご紹介しませんでしたが、ご近所にお住まいの方の、ゲイの方々が多く住んでいることへの恐怖心を述べているコメントもありました。 ちなみに、この暴動のキッカケは、「ゲイへの理解を持つ、ある女優さんが亡くなった通夜を邪魔されたため」という説もネット上で見ました。「この騒ぎは数日間続いた。その間、店はタダで酒をおごった。金を取ると違法だからだ」、「禁酒法時代に、もぐり酒屋からの賄賂を収入源としていた警官が多く、禁酒法終了後は、ゲイ・バーからの賄賂に依存していた警官も多かった」という説も有りました。 反ベトナム戦争、公民権運動などが盛んな当時の時代背景では、この程度の規模の「暴動」というのは実は、さほど大した物では無かったようです。ネット検索で、この事件の新聞記事を見つけて読みましたが、ほとんどベタ記事=小さな記事でした。しかし、今から考えると大事件でした。一部のゲイ人権運動家を除くと、ゲイは自身の人権について沈黙していましたが、この「反乱」をキッカケに、全米のゲイが自身の人権運動に目覚め、幾つものゲイ団体が設立され、暴動の翌年開催された記念(無届違法?)デモでは、およそ3000人が行進し、毎年6月末の日曜日を「ゲイ・プライド・パレード」として、今日でも続いています。 現在では、ゲイの方々の運動は、主としてゲイのカップルによる「婚姻」に伴う法律上の権利獲得が主となりつつあるようです。2001年6月のゲイ・プライド・パレードの頃、ゲイの方々がNY市長選候補者と会い、長期に渡り同居していたゲイのカップルの一方が死亡した場合、「家賃調整法・安定法」の元での権利を生存する相手に「相続」できるようにするつもりはあるか、とヒアリングしていた記事をNYタイムズで読みました。「家賃調整法・安定法」とは、公的機関が毎年決定した率以上に家賃の値上げが出来ない、というもので、結婚している二人のうち、間借り名義人の一人が死亡すると、生存する一人にその権利も相続されます。「ストーンウォールの反乱」からすでに30年以上が経つ現在、「家賃安定法」の元にあるアパートの間借人の名義であったゲイの方もお年を召してお亡くなりになって、残されたパートナーが払いきれないほどの家賃の引き上げになってしまうケースが起こっている、ということなんでしょうね。 さて、キリスト教は聖書に書かれた内容を大切にするものとは思いますが、全てのキリスト教信者や教会がゲイを否定しているわけではなく、ゲイの方々への理解や「愛」を示す宗派あるいは教会、聖職者、信者の方々も多く存在することをここで付け加えておきます。例えば、冒頭の「ヘイト・クライム」の犠牲者となったゲイの方の葬儀場所を提供している教会もチャンと存在しています。また、NYのグリニッジ・ビレッジ周辺では、AIDS問題を含んだゲイの方々への理解を示し、手を差し伸ばそうとする教会が多く存在しているようで、また信仰の拠り所として教会に通っておられるゲイの方々も多いようです。 いわゆる「新約聖書」より、再度以下。
−−− 話題は変わって、ゲイの方々に関する「言葉」です。 NYにいれば、そういう方々と会社で同僚になることも有ろうかと思い、これを機会に少し勉強してみよう、少なくとも侮蔑表現をしないためにはどうしたら良いか、と思った次第でした。 関連の英語サイトを読んでいると、非常に多くの「差別語」、ゲイの方々がお使いの「隠語」そして「哲学・医学用語」?等の英単語に遭遇し、理解するのに一苦労でした(苦笑)。NY等の英語圏に来られる日本の方のために一つ英単語をご紹介します。ゲイで無いことを、英語では「straight ストレート」と言うようです。時々、「normal ノーマル」と表現する日本人がいるようですが、これを使うとゲイの方々は「abnormal アブノーマル」=異常、ということになってしまいます。 そりゃ、ゲイの方々に限らず、私は「正常」あなたは「異常」、と言われりゃ、逆上して危害を加えようとする人もでくるかもしれませんよね(笑)。fujiyanには現在まで経験がありませんが、もしゲイの方に誘惑された場合でも、「Well, actually, I am straght.」と言ってやんわりとお断りするつもりです。 現在では、ゲイの方々は、世間から隠れている?(失礼!)というよりむしろ、積極的に「ゲイ」のことを世の人々に正確に知ってもらおうという段階になっているようです。「ゲイ」は、現在でも不明な部分は多いが脳のホルモンの作用でなるものと推測され、自分で望んでそうなったのではなく生来のものであり、ましてや(精神の)病気でもない、という点から始まり、日本語サイト、英語サイトともに、彼らのタイプなどを述べておられます。例えば「ゲイ」のタイプは一つではなく「外見・肉体の性別」、「心理とそれに派生する行動・しぐさの性別」、そして「愛の対象となる性別」に応じて色々と細分化されたタイプを紹介し、理解を呼びかけています。 簡略化のために、「身体的特徴が男性」の場合で考えてみます。 ![]() 「体が男性」で、「心が女性」の人を、 *「トランスジェンダー Transgender」 というそうです。「trans=向こう側の」+「gender=性」、ですから、「身体と逆の性」ということですね。女性の衣服を着用そして/あるいは女性風の化粧をする、というタイプがその範疇に入り、「trans=向こう側の」+「vestite ベスト、つまり服」で、 *「トランスベスタイト Transvestite」 と呼ぶそうです。日本のメディアにもタレントとして良く登場する方々ですよね。で、「身体が男性」で「心が女性」であることのギャップに悩んだ結果、性転換手術をする人々を、 *「トランスセクシュアル Transsexual」 と呼ぶそうです。また、性転換手術に関係無く身体と心のギャップに悩んでいる、という状態で「トランスセクシュアル」とする広義の定義もあるそうです。 「トランスベスタイト」つまり「体が男性」で女装をする方にも、通常は男性として「愛の対象が女性」であり、時々女装して心に有する「女性」の部分を満足させる気分転換を行うというタイプと、女装して「愛の対象が男性」というタイプの2種類に分けられるそうです。また、「体が男性」で「心が女性」で「愛の対象が男性」の方でも、女装しない方もいらっしゃいます。この場合は、「トランスジェンダー」ですが「トランスベスタイト」ではない、ということになりますね。 「homo-」とは「同一の」ということですから、「身体的に男性」で「心も男性」の方で「愛の対象が男性」の場合を「ホモセクシュアル homosexual」というのは、まあ、しょうがないようです。筋肉隆々同士のゲイのカップルは、多分このタイプなのかもしれませんね。しかし、「心」が女性、つまり「トランスジェンダー」の方々の「愛の対象となる性別」は、「心」の面から考えると「異性」である男性、ということになるので、「ホモセクシュアル」と呼ばれることに相当な抵抗があるようです。気を付けましょうね。いずれにせよ、「ホモセクシュアル」という言葉は使わないようにしたほうが良さそうです。 このように、色々なタイプの方がいらっしゃるので、言葉は非常に難しいように思われます。「ゲイ」という言葉は、フランス語で「そわそわした陽気な」を意味しており、一番問題のない表現のようです。 言葉ではありませんが、以下最後に付け加えます。クリストファー・ストリート(Christopher Street)は、NYでのゲイの方々の中心地ですが、地理的な居住エリアとしては南東に相当し、そこから北の方に広がっているようです。グリニッジビレッジの北西そしてチェルシーと呼ばれるエリアが相当します。その辺りには、虹色の旗や飾りを付けたお店が多く見うけられますが、この虹色はゲイの方々のシンボルです。虹を掲げたお店は、「ゲイのお客様歓迎!」いうメッセージを放っているわけですね。
Greenwich Village(West)の散歩コースに戻る |
「マンハッタンを歩く」 のメニューへ |
トップページへ |