上時国家、下時国家、南惣美術館

奥能登に残る平家ゆかりの屋敷

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 奥能登は東京から見れば現代でも遠隔地の印象を受ける。それは距離ばかりではなく、冬に波の花が舞う荒海と曇天の続く厳しい風景を連想するからに違いない。まして約千年昔の京都から想像した感じはなおさらだっただろう。

 ところが夏に訪れれば、水田と森の緑に穏やかな海が広がっている。暖流の影響で冬の積雪は北陸地方としては少ない。その日本海に面した国定公園曾々木(そそぎ)海岸の近くに、権大納言・平時忠(1128-89)ゆかりの「上時国(かみときくに)家」がある。

 時忠は二位の尼君といわれた平清盛の妻・時子の弟で、また後白河院の女御・滋子(しげこ)の兄だった。当時の最高権力者二人と義兄弟に当たる彼は平関白と呼ばれて大きな権力を振るい、平氏にあらざる人は皆、人にあらずとまで豪語した。

 だが機を見るに敏な彼は平家滅亡の直前に平氏とたもとを別ち、神鏡の返還を行って京都へ返り咲いた。源義経とは義経が幼少時に命を救った縁もあり、また娘を嫁がせるなどで親密だった。これは後白河院の対頼朝政策に沿ったものであっただろうが、それが頼朝の不快感を増大させ、やがて彼は奥能登へ流され、そこで亡くなった。

 彼は能登半島先端の大谷へ初冬に着いたという。その荒々しい風景を「白波のうちおどろかす岩の上に 寝いらで松の幾世経ぬらん」と詠み、また晩年にその望郷の念を「能登の国聞くもいやなる珠州の海 また吹きもどせ伊勢の神風」と詠じている。跡継ぎの時国は奥能登で帰農し子孫は大地主となり、江戸時代には天領の大庄屋として勢威を保った。

 今見られる上時国家は幕末の1831年の建物だが、茅葺き入母屋造りの大きな屋敷だ。内部には見事な金折上格天井を持つ御前の間や、太い梁や梁に吊された複数のかごが在りし日の当家の権威を示している。このかごは昭和の初期まで使われたという。また屋敷内には関係資料や使われた調度品が展示されている。

 上時国家の近くに分家の「下時国家(しもときくに)(挿絵参照)がある。正式には能登安徳合祀時国家というのだそうだが、当家は加賀藩領に属し、村々の支配をすると共に、山林・田畑・製塩の管理をする役人として力を持っていた。

 こちらも大きな茅葺き入母屋造りの農家だが、内部は書院様式を採り入れている。約400年前に鎌倉時代の様式で建てられた建物で、重要文化財に指定されている。用材は現在のカンナがない時代で、チョウナ(手斧)で削っている。中世様式を残した庭園も見事だ。

 さらに両時国家と小さな川を隔てた対岸には「南惣美術館」がある。当館には歴代当主が収集した日本と東洋の美術品・民俗資料・民具などを米蔵で公開している。南家は江戸時代には山林(アテヒノキアスナロすなわちアテの林業)や田畑の大地主として天領の庄屋を勤めた。

同時に南惣という屋号で製塩・製茶・養蚕・製炭・売薬などを手広く手掛け、さらに曾々木湊から北前船を使って諸国物産の取引を行った。当家は1960年代まで家札(かさつ)と呼ばれる手形札の自家用交換手段を発行していたそうだ。

これはその当時の当家の経済力と信用を示している。ここを初めて訪れた時、都会から遠く離れた気候の厳しいこの土地へ、なぜこのように質の高い美術品が集められたのかと、正直なところ不思議に思えた。それほど首都圏からは距離感もあったが、その由来を知って納得できた。

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(作成日: 01/12/17、 更新日:)

 

(施設情報参考)名称_住所_電話番号_駅からの概算路線距離(駅からの概略方位と直線距離)・所要時間・バス_展示規模_対象_開館時間(受付終了時刻)_休館日_備考_{施設情報確認日}開館時間と休館日はよく変るし臨時休館もある。事前確認が賢明

 

本家 上時国家_石川県輪島市町野町南時国13-4_TEL 0768-32-0171_

a)のと鉄道穴水駅から能登中央バス輪島行きで約30分「輪島ふらっと訪夢」 (バスターミナル)で下車し、そこから約20km(73degE 18km)、北鉄バス宇出津行きに乗り換え約35分「上時国」下車後徒歩3分。

b)金沢駅から奥能登特急バス曾々木行きで約二時間半終点から徒歩8分_

駐車場 無料30台_小_大人_

8:30-17:00(ただし79月は8:30-17:30まで)_年中無休_{16/12/01}

 

能登安徳合祀時国家(下時国家)_石川県輪島市町野町西時国2-1_TEL 0768-32-0075_

のと鉄道穴水駅から能登中央バスを利用して約30分、終点の「輪島ふらっと訪夢(バスターミナル)」で下車し(そこから約19.5km(72degE 18km))、北鉄バス宇出津行きバスに乗り換えて約35分「下時国」下車徒歩1分_

駐車場 無料 普通車50台_小_大人_

10:00-16:00

開館日は (411)の土・日曜日と5/345

休館日は (411)の月曜日〜金曜日、5/2828

123(冬期休館)

(冬期休業期間内の平日は事前予約者だけ受付ける、予約の電話番号は上記と異なる0768-32-1175)_{16/12/01}

 

南惣美術館_石川県輪島市町野町東大野7-100_TEL 0768-32-0166_

のと鉄道穴水駅から能登中央バスを利用して約30分、終点の「輪島ふらっと訪夢(バスターミナル)」で下車し、そこから約18km(72degE 18km)、同上バス宇出津駅前行きに乗り換えて約30分「河原」下車後徒歩8分_

駐車場 無料あり_小_大人_

9:00-17:30_年中無休_{17/02/28}

 

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