カノジョのウソ


「お疲れさまでしたー!」

やった!
今日は、思っていたよりも早く仕事が終わった。
時計を見ると、まだ夜8時を少し回ったところだ。
充分に行ける!
確か明日は彼女の仕事は、休みだったはずだから。
携帯電話を手に取り、リダイヤルで彼女のメモリーを探して急いで電話をかけた。

「あっ、もしもし?俺」
『快彦!?な、何、どうしたの、急に?』
「お前明日仕事休みだよな?今仕事終わったんだけど、今からん家行ってもいいかな?」
『えっ…?今日はちょっと……。友達と約束しちゃって今から出かけなきゃいけないんだ』
「そうなんだ。あ、じゃあさ、俺明日仕事午後からだから、が帰ってくるまで待ってるから、ん家泊まってもいいかな?」
『えっ…?……ごめん、快彦。そ、そのあとその友達の家へ泊まりに行くことになってるの。
ごめん、ほんとにごめん』

は、そう言って急いで電話を切ってしまった。
夜8時を回っているというのに、これから外で友達と待ち合わせ?


怪しい。
それに、いつになくの慌てたあの態度。
しばらく会えなかった間に、俺の他に男ができたというのだろうか?
ふとそんな想いが胸を過ぎる。
のこと、信じていないわけではないけれど、
突然そんな態度をとられると、なんとなく疑ってしまう。

そういえば、このところ、の俺に対する態度が素っ気ないかもしれない。
メールを入れても、二言、三言しか返事が返ってこないし、
電話をかけるのは、もっぱら俺のほうからだけ。
最近、の名前が通知された着信がないことに、ふと気が付いた。

考えれば考えるほど、を疑ってしまう。
そう思ってしまう自分も嫌だけど、
かといって、気が付けば、このところの俺に対するの態度は、そう思わざるを得ない。
俺たちが今ケンカをしている最中で、そのことを俺が忘れているわけでもないし、
を怒らせるようなことも俺はしていない。
もしかしたら、本当に友達との約束があるのかもしれないけど、
いろいろな不安が過ぎり、俺は、居ても立ってもいられなくなって、
コートもきちんと着ないまま、急いでの部屋に向かった。



しばらくして、俺はの部屋に到着した。
部屋の明かりは、点いている。
ってことは、はまだ部屋にいるんだ。
なんとなくドアの前でひとつ深呼吸。
人差し指で、そっとインターフォンを鳴らした。

「どちら様ですか?」

中からの声が聞こえた。
やっぱり部屋にいるんじゃないか……。
扉がほんの少し開いて、その隙間からが顔を覗かせた。

「なんだよ、、お前いるんじゃん」
「よっ、快彦!?」

俺と目が合った瞬間、は急いでドアを閉めようとした。

「ちょっ、ちょっと何閉めようとしてんだよ!」
「今日はダメって言ったでしょ!」
「だからって何で俺を中に入れさせようとしないんだよ!」
「と、友達が来てるから!」
「あっ、お前もしかして男とか連れ込んでんのかよ!」
「そんなんじゃないってば!」

ドアノブをお互いに外と中から引っ張り合い、扉を挟んで言い争いになってしまった。
がどうしてこんなにも頑固なのか、
意地でもドアを開けようとしないに、いい加減、俺はそろそろ頭にきていた。
そして、思いっきりドアノブを引っ張ってやろうとしたとき、思わず手がすべり、
その途端、ドアの下に挟んでいた俺の足が勢いよくドアに挟まってしまった。

「いてーっ!」
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」

その瞬間、ドアノブを握るの力が弛んだ。
今がチャンスだと思い、俺は、足の痛みをこらえながら、
その一瞬のスキをついて、扉の向こうへ自分の体をすべらせ、の部屋の中へ入り込んだ。
そして、背中で扉を閉め、鍵を掛ける。
そんな俺が恐ろしく見えたのか、は少し後ずさりをした。

「友達なんていないじゃん」

部屋の中を見回しても、誰もいなかった。
靴を脱ぎ、俺は、勝手に上がり込んで、
お風呂やトイレの中を覗いても、誰かがいた形跡は見当たらなかった。

、どういうことだよ?俺にウソまでついて。
俺を部屋の中へ入れさせようとしないし、第一お前出かけるんじゃなかったのかよ」
「それは……」

俺と目を合わせようともせず、俯きながらは動揺していた。

「それとも本当に俺以外の男がいるとか…」
「違う、それは絶対に違う!本当は……!」
「本当は……?」

俺は、玄関の前に部屋着姿で立ち尽くすを部屋の奥へ促し、ソファーへ座らせた。
俺もその隣へと腰を下ろす。

「本当は、何?」
「ごめん、快彦……。実は私、こないだから風邪ひいちゃって、それが今もずっと治らなくって……。
だから、快彦に風邪をうつしちゃいけないと思って……」

え?風邪?
俺は、思わず拍子抜けしてしまった。

「そんなことかよ」
「そんなことって…!」

そういえば、電話では気が付かなかったけれど、少し鼻声だし、さっきから鼻もすすっている。

「熱は?」
「微熱が続いてる……」

俺は、のおでこに手を添えた。
確かに、微かに温かかった。

「なんで今までずっと俺に言わなかったんだよ。遠慮なんかしやがって……。
俺にあんなウソつかなくたっていいのに」
「だって、変な心配かけたくなかったんだもん……。
それに、私と一緒にいたら、快彦に風邪をうつしちゃいそうで、だか……」
「とりあえず横になって」

必死に俺に何かを伝えようとするを遮り、とりあえず先にをベッドに寝かせた。
風邪のせいなのか、俺にウソをついてしまったという後ろめたさがあるのか、は悲しげな表情をする。
ベッドに横になり、布団の中から俺を見つめるその顔も、いつもとは違うだった。

「だから、あんなウソをついてしまった…?」
「風邪を引いたって言っても、快彦来ちゃいそうだし、友達と会うって言えば、大丈夫かなって……。
でも今日は、遅くまで仕事だって言ってたから、まさか電話かかってくるとは思わなくて……」
「お前、仕事は?」
「最初の1日休んじゃったけど、あとはなんとか行ってた。もうだいぶ症状も治まってきてたし」

そう言っているそばから、はかわいらしいくしゃみをひとつした。

、風邪引いてる割には、さっきはすごい力だったぜ」
「そ、そんなことにないよ!」
「てゆうか、別に俺はが風邪を引いてたって全然大丈夫なのにー」
「だって、快彦すぐ風邪引くじゃん」
「うるせーよ!」

思わずムキになった俺を、がくすくすと笑う。

「私は仕事を休んでも、代わりにやってくれる人がいるけど、快彦は、代わってくれる人がいないもんね。
V6の井ノ原快彦は、快彦にしかできない仕事だもんね」
……」
「私、本当は快彦に逢いたいの、ずっと我慢してた。メールも。
来てくれてありがとう。ウソなんかついてゴメンね」

俺を見て、がまた少し笑った。

「早く風邪治せよ。俺はずっとのそばにいてやるからさ」

そう言って、俺は、の手をそっと握った。

、さっきは他に男がいるだなんて疑ってごめん。
の風邪が俺にうつってしまうくらい、仲良くずっと一緒にいような。



−−−E N D−−−

最後の言い訳っ。

だっはー!最後が特に恥ずかスィ!(笑)
これって何?あたしがいのファンだから照れんの?(笑)←自分で書いておきながら。
風邪系のお話は、けっこうありがちだし、実際あたしも2,3コ書いてるんだけど、
これは、某友人とのメールのやりとりでふと思いついた話です(笑)。
でも、そのときパッと思い浮かんだ感じに書けなかった…!(無念)
最初は、他のメンバーで考えてたんだけど、風邪を引いてても行っちゃう〜って感じは、いのかなって(笑)。
2004.1.15


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