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「“愛してる”…って言われたことある?」 唐突に、私は友人に質問を投げかけた。 「何、突然」 「いいから。言われたこと、ある?」 「う〜ん、ないこともないけど……」 「じゃあ、“好き”は?」 「彼氏いたら、普通なんじゃないの?」 「あるんだ……」 「何なのよ、いきなり」 「実はさ……」 私には一応、彼氏がいる。 名前は、井ノ原快彦。 付き合って一応、半年−。 私には、ずっと不安なことがひとつだけある。 それは……。 「えぇ!?付き合おうって言われてない!?」 友人の声が部屋に響き渡る。 「うん……それどころか、好きだとかも言われたこともない……」 「そんなんで恋人同士って言えるの?」 「だから不安なの!」 「それで、その半年ってのは、何が基準になってんの?」 「快彦に……キス……された」 「それだけ?」 「……その夜、朝までずっと一緒にいた」 「はぁー」 友人の溜息が、私をさらに不安にさせる。 快彦とは、以前から友だちとして、付き合いがあった。 最も気の合う男友達として、付き合っていた。 ふたりだけで遊びに行ったり、一緒にいることは珍しくもないことで、 そんなときの私たちの間には、色気なんてものは、存在していなかった。 ただ、あのときだけは違った。 一瞬、気まずい雰囲気が流れた。 不意に、快彦が唇を寄せてきたのだ。 そのとき、私が見た快彦の目は、いつもとは違う、今まで見たことのないような優しい目をしていた。 思わず、その快彦の目に引き込まれ、内心驚いていると、快彦の手が私の背中へ回った。 私は、拒むこともせず、快彦を受け入れた……。 それから、半年。 友だちから変化した今の関係は、恋人同士の関係だ……と思う。 「とりあえず、お互いの部屋の合い鍵持ってるし……」 「だけど、自分が彼の彼女だって、自信がないんだ」 友人の言葉に、私は黙って頷いた。 私も快彦も、お互いに気持ちを伝え合うことのタイミングを完全に失っていた。 普段、仲良く一緒にいるだけに過ぎない。 「だったら、彼に直接聞けばいいじゃない」 「今更?完璧、タイミング失ってるよ……」 「でも、これからもずっとそんな微妙な関係を続けてくほうが辛いと思うけどな」 友人の言ったことは、最もだと思った。 これ以上、快彦の彼女だって、自信を持って言えない自分も嫌だった。 『 愛してる 』 今夜こそ、快彦の口から、直接聞こう。 私は、 そう思った。 その夜。 快彦は、また私にキスをしてきた。 そして、快彦の手が私の背中に回ろうとしていた。 だけど、私はそれを初めて拒んだ。 「快彦…ちょ、ちょっと…待って……」 「何」 「こんなときに言うことじゃないと思うんだけど……」 快彦の体勢が元へと戻る。 「……………」 「何だよ」 私は、今まで言い逃していたことを思い切って口にした。 「好きだって言って」 「は?」 「私、一度も快彦に言われたことない」 「……………」 「それどころか、付き合おうとか、そういう言葉もなかった。だから、私…」 「はぁー、もう台無し」 私の言葉を遮って、快彦は寝室を出ていった。 予想外の快彦の言動に、私はショックを受けた。 いつもみたいに、笑い飛ばしてくれるのかと思ってた。 何も言わずにこのまま一緒にいればよかった。 でも……それじゃ、何も変わらない。 私の不安は、積もりに積もっていたはずだろう。 そのまま、快彦と一緒にいることが虚しくなっていたと思う。 私は、自分のバッグを持った。 「……快彦と私が付き合ってるって思ってたの、私だけだったみたいだね」 ソファーにひとり座っていた快彦に向かって、私は言葉を吐いた。 そして、快彦の反応も待たずに、私は快彦の部屋を出た。 「ばかやろー……」 通行人に泣いていることを悟られないように、 夜空を見上げながら、私は、必死に涙をこらえた。 気づけば、窓の外は朝だった。 昨日、自分の部屋に帰ってきた途端、涙が溢れだした。 やがて泣き疲れて、いつの間にか寝てしまったらしい。 なんとなく、携帯のメールをチェックする。 快彦からのメールは………なかった。 今日が日曜日でよかったと思った。 こんな腫れ上がった目、誰にも見せられない。 とりあえず、私は冷たい水で顔を洗った。 失恋をすると、自分が食事も喉を通らない人間だったってことを初めて知った。 食事どころか、何もする気になれなかった。 飽きもせず、ずっとソファーに座っていた。 何をするわけでもなく、ただぼんやりと。 そして、時々、昨日のことを思い出したかのように、涙が頬を伝った。 もし、半年前、私が快彦を拒んでいれば…。 それまでと同じように、友だちとして付き合っていれば…。 自分の快彦に対する恋愛感情を押し殺していれば………。 何度も、何度も、そう思った。 あの日から1週間後。 ようやく、快彦からの着信があった。 だけど、私は電話に出ようとはしなかった。 何度も送られてくるメールにも、一切返事を返さなかった。 居留守を使ったこともあった。 決して、快彦を嫌いになったわけじゃない。 会いたくないわけじゃない。 ただ……。 半年前のあのときのことを、酷く恨んでやまない。 快彦に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 そんなことの繰り返しがさらに1週間続いたある日。 仕事からの帰り、自分の部屋の電気が点いていることに気がついた。 扉を開けると、快彦がいた。 「快彦……」 そうだ、私たちはお互いの部屋の合い鍵を持っていた。 その鍵を使って、快彦は今いる場所に入ってきたんだ。 快彦の顔を見た瞬間、私は、その鍵を返しにきたんだと思った。 だけど…。 「」 2週間ぶりの快彦の声。 無意識のうちに私は、その声のする快彦の元へ歩み寄っていた。 「お前、何泣いてんだよ……」 気づけば、私は泣いていた。 そう言う快彦も、今にも泣き出しそうな顔をしている。 「……なんでいるの……?」 「が、電話にも出てくれないし、メールの返事もくれないし、ここに来てみても、 居留守使われるし……」 私は、快彦の腕の中にいた。 相変わらず、快彦の腕は温かかった。 「よかった……」 快彦がそう呟いた。 「俺……完全にに嫌われたかと思った……」 私は、快彦の腕の中で必死に首を振る。 声が出ない。 「が、俺の部屋を出ていってからの1週間、俺、ずっと後悔してた。 半年前のあのとき、にキスしなきゃよかったって…。友だちのままでいればよかったって…。 だけど、俺は自分の気持ちに嘘はつきたくなかった。だから、ホントはあのときに言ってればよかったんだ……」 快彦の腕が一層強く、私を抱きしめる。 「ずっと言えなかったけど……俺は……のことが好きだ。……愛してる……」 それは、私がずっと快彦の口から聞きたかった言葉。 私は、ようやく耳にすることができた。 「半年前、が俺を受け入れてくれて、すげー嬉しかった。だけど、俺、に甘えてた……。ずっと不安にさせてて、ごめん……」 そして、快彦は、私の体を引き離し、 再び、半年前と同じ、あの優しい目で言った。 「改めて言います……。俺と付き合ってください」 私は、涙でボロボロだった顔を手で拭い、快彦の目を見つめて答えた。 「はい」 私のその返事を聞くと、快彦はいつものあの笑顔になった。 私も快彦の笑顔につられて、涙目のまま、思わず微笑んだ。 そして、お互いの気持ちを再確認するように、 私と快彦は、2週間ぶりに唇を重ねた。 私は、もう一度、快彦の胸に顔をうずめ、呟いた。 「私も好きだよ……」 すると、快彦は……。 「あれっ。のその言葉、俺、今初めて聞いた!」 ニヤつきながら、私の顔を見てきた。 いつものように、反発してこいと言わんばかりのニヤつきよう。 だけど、私も今日ばかりは……。 「快彦のことが、ずーっと好きだった……」 「……」 私たちに足りなかった大切なコトバ。 今、ここに十分な程に、満ちあふれている。 最後の言い訳っ。 なんだか、いのがいのじゃないお話(笑) てゆうか、ぶっちゃけ、自分でこれ書いてて、ワケわかんなくなってきちゃったんだよね(爆) たぶん、どっかしらに矛盾があると思ふ…(どきどき) もしそれを見つけちゃったときは、お手柔らかにご連絡をお願いしますぅ(笑)
2002.10.6
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