星屑のクリスマスツリー
Yoshihiko Inohara


ん家まで、車で送ってくよ」

快彦がそう言ってくれて、私が快彦の運転する車の助手席に乗っていた12月24日の夜。
クリスマスイブとは言っても、いつもとそうたいして変わらなく過ごしたふたりの時間。
一緒にご飯を食べて、一緒にテレビを見て、たわいのない会話をして……。
クリスマスツリーさえないクリスマスイブだったけれど、私は、快彦が隣にいてくれただけで満足だった。



帰りの車の中で、

「お前さぁ、ひとりでケーキ食い過ぎだよ」

窓の外をボーッと見ていた私に、快彦が話しかけてきた。

「え?」
「太るぞ」
「うるさいなぁ」
「その肉、少しは坂本くんに分けてやれよ」
「できることならそうしてあげたいよねー」
「そうだよなぁ。ホント、世の中不公平だよねー」
「うるさいよ」

私が言い返すと、快彦がいつも以上に目を細めて笑った。
そんな快彦に、私もフッと笑い、再び窓の外へ目線を向けたとき、
コンビニの看板が目に飛び込んできた。

「あっ、快彦!私、コンビニでちょっと買いたいモノがあるんだけど、ちょっと寄って!」
「えっ!?」

快彦の車に、急ブレーキがかかった。

「お前、もうちょっと早く言えよ〜」
「ごめん、ごめん。ちょっと行ってくるね」

私は、そそくさと店の中へと走る。
素早く用事を済ませて、快彦の待つ車へ戻ろうとしたとき、快彦が誰か女の人としゃべっているのが見えた。
マズイ……。
今、車へは戻れない。
そう思って、私は、しばらく本を立ち読みしながら、快彦たちの様子を窺ってた。
すると……。
快彦がしゃべっている女の人は、私の全然知らない人だったけど、
快彦は、その女の人から、何かプレゼントを受け取っているようだった。
おまけに、快彦は、デレデレしちゃって。
私は、その女の人が帰るのを見届けてから、快彦の車へ戻った。

「…誰?今の」
「おわっ!!」
「快彦、今、あの女の人から何かもらってたでしょ!?」
「お、お前、声デカイって!とりあえず、車の中入れよ!」

せっかくいい気分で帰れると思ったのに。
私は、助手席に座ってもふてくされていた。

「誰!あの女!?」
「誰って言われても…。俺も知らねぇよ。さっき、が戻ってくるの待ってたら、いきなり話かけられて、いのっちですよね!?とかって言われてさぁ」
「じゃあ、なんでプレゼントなんか受け取ってんのよ!?」
「向こうは、忘年会の帰りだっつって、酔っぱらってたんだよ!」

私の怒鳴り口調に、快彦も次第に口調が強くなってきた。

「その割には、快彦ってば、デレデレしてたよね!」
「んなことねぇよ!そんなの、お前の思い込みだろ!?」
「絶対、デレデレしてたもん!」
「してねぇよ!」
「絶対、してた!」

頑固な私に、ついに快彦がキレた。

「頭きた。、お前、お仕置きな」
「はぁっ!?」

そう言って、快彦は、エンジンをかけ、アクセルをめいっぱいふかして、車をスタートさせた。
しかも、私の部屋まで送ってくれるはずだったのに、私の部屋を通り越して、快彦の車は、なんと、高速道路へ乗ってしまった。

「ちょっと!快彦、どこ行くの!?」

私の問いかけに、快彦は、一切無視。
こんなわけのわからない状況に、私は、またふれくされて、ずっと窓の外を見つめた。



そうしてしばらく走ったあと、快彦の車は、ようやく山の中の高台の上で止まった。
快彦は、エンジンを切ったかと思うと、黙って車を降りて、外へ出ていってしまった。

「ちょっと!?」

私も急いで車を降りる。

「ねぇ、快彦ってば!ここ、どこ!?私の部屋まで送ってくれるんじゃなかったの!?」
、ここでしばらく頭冷やせ」
「はぁ!?何言ってんのよ、あれは快彦が……」
「あれ、見ろよ」

私が反抗してる言葉を遮って、快彦がそう言った。
そして、快彦が指した指の先には、夜空一面に輝く星が広がっていた。

「うっわ〜!何コレ、チョーキレー!!」
「だろ?」

快彦は、予想通りの私の反応を得られたのか、得意気な笑みを浮かべている。
寒く冷え込んだ今夜は、空気がよく澄んでいて、小さな星までがよく見えた。
しかも、私たちのいる場所は、木々に囲まれて、周りに電灯も何もなかったから、余計によく見えたんだと思う。

「快彦、こんなとこどうやって見つけたの?」
「ん〜、まぁね〜」
「何、その曖昧な反応は〜?」

と、私がケラケラ笑っていると、突然、快彦は、私の背後に回り、抱きしめてきた。
不意なことで、私も思わずドキッとする。

「……、頭冷えた?」
「……うん」
「“ごめんなさい”は?」
「な、なんで私が謝んなくちゃいけないの!?謝るのは、快彦のほうでしょ!?」
「あれって、俺に話しかけてきたあの女の人に、、ヤキモチ妬いたんだろ?」
「え……?」

快彦が私の背後でそう言った。
そうか……。
あれってヤキモチなんだ。
私は、今、気がついた。
すぐうしろを見上げれば、快彦がニヤニヤしている。
それがなんだか口惜しくて、私はまた言い返した。

「違うもん!あれは、快彦がデレデレなんてしてるから、私は快彦に怒ってるの!」
「だから、デレデレなんてしてないって言ってんだろ!?」
「絶対、そうだってば!」
「お前も頑固だねぇ」
「快彦もね!」

笑い合うお互いが見つめる先には、すぐ側にお互いの顔がある。
そんな状況で、私たちは、唇を重ねた。

「実はさ……」

快彦がまた、私のすぐうしろで口を開いた。

「何?」
「今日あんなことがあったのは、偶然だったけど、送り際に、をここに連れてこようと思ってたんだ」
「送り際って……そんな距離じゃなかったじゃん」
「そうだけどさ!クリスマスプレゼントがあるとか言って、強引に」
「この星がプレゼント?快彦ってば、くっさ〜」
「うるせーよ!素直に喜べ!」
「はいはい、ありがとう」
「かわいくないねー、お前も」

クリスマスイブに、こんな色気のない会話もないか、と思って、私は、珍しく素直に口を開いてみた。

「快彦の部屋にクリスマスツリーなかったでしょ?やっぱり、クリスマスには、ツリーは付き物って感じで寂しかったりしたんだけど、やっと今見れたよ」
「クリスマスツリーなんかどこにあんの?」
「上にあるじゃない」
「上?」

見上げれば、私たちの周りにあった背の高い木々が、夜空の星と見事にかぶって、大きなクリスマスツリーと化していたのだ。

「あ、ホントだー」
「私が今まで見てきた中で一番大きなクリスマスツリーだよ。ありがとね、快彦」
……」

こうして、一瞬、どうなることかと思った、クリスマスイブの私たちのケンカは無事に終止符を打った。
こんなくだらないケンカをしょっちゅうやってる私たちだけど、お互いの想いを分かっていながらのケンカだから。
ケンカの先のことなんて、わかっていながら、ふたりともケンカしてるから。

のヤキモチ、嬉しかった……」

って、快彦が囁いた。
そして、私は、体の向きを変え、快彦と向き合い、もう一度快彦とキスを交わした。
見事に輝いた星屑のクリスマスツリーの下で……。


−−− E N D −−−

最後の言い訳っ。

なんだかロマンチック風に仕上げてみたんだけど、
果たして、クリスマスツリーくらいに光る星が見られるのかっつー話だよね(笑)。
ふたりはどこまで行ったんだ!?ってゆう(笑)。
まぁ、そんな細かいことは気にせずに(オイ)、いのと仲良くケンカしててください(笑)。

最後に。
フットルースマニアの方へ。
途中のいののセリフ、「頭きた」と、のセリフ、「こんなとこどうやって見つけたの?」のあとに、
「いいぞぉ〜」と「さすが牧師の娘…かな?」と勝手に続けないでください(笑)。
この物語は、フィクションであり、フットルースとは全く関係ございません。
2002.12.22
* D r e a m e r  * B a c k  * H o m e *