Thank you.
Hiroshi Nagano


ピンポーン……

玄関のインターホンが鳴る。

「はーい」
「メリークリスマス♪」

私がドアを開けると、そこには、笑顔の博が立っていた。
今日は、クリスマスイブ。
街には、さまざまなイルミネーションが光り、恋人たちが腕を組みながら、嬉しそうに歩いていく。
電話もメールもいつもかかさない私たちだけど、
やっぱりクリスマスになると、特別な感じがする。
だけど、博の笑顔だけは、いつもと変わらない優しい笑顔だった。

「お邪魔しま〜す」
「外、寒かった?」
「うん、今日は特に冷え込んでるよ」

博は、にっこりと微笑んだ。
私は、博のその笑顔に、やっぱりあのことは隠しておこうと、そう誓った。


「「乾杯ー!」」

小さなクリスマスツリーを囲んで、私たちは、ふたりきりの時間を過ごした。
いつもだったら、博が連れて行ってくれるおいしい店に行ったりするけど、
今日は、ゆっくりとふたりっきりで。

『24日は、の部屋にお邪魔させてもらうよ』

って、博が言ってくれた。
私は、密かに料理の練習なんかをしたりして。
部屋もキレイに掃除をした。
そんなふうに、この日を待ちに待ってた私だったけど……。
“あのこと”だけは博にバレてはいけないって、今日まで必死に隠してきた。
もちろん、今日も博が自分の部屋に帰るまで、私の中で戦いは続くのだけど……。

?」
「……え?」
「大丈夫?なんかボーッとしてるけど」
「うん!全然、大丈夫!」
「そう?」

博がそう言って、また微笑む。
私は、必死に笑顔を作って、博に微笑み返した。


食事も終えて、食後のコーヒーを飲みながら、クリスマスケーキを食べようと、
私たちは、テレビの前のテーブルに移動してきた。
テレビでは、ちょうど【学校へ行こう!スペシャル】が放送していた。

「あははっ!井ノ原ってホント、バカだねぇ」

博がテレビに向かって、大声で笑う。

「でも、これ博、収録で1回見てるんでしょう?」
「まぁね。だけど、やっぱり家のテレビで見るのと違うでしょ」

そんなまったりとふたりで過ごす夜。
辛い仕事も、こんな時間の為に私は頑張れる。
博と出会えたことを、ふとこんなときにも感謝してしまうのだ。
そのとき、博が飲み終わったカップをテーブルの上に置いた。

「あっ、紅茶おかわりいる?」
「うん。ありがとう」

博のカップを持って、立ち上がろうとした瞬間、
突然、くらっとめまいがした。
あっ!と思ったときにはもう、意識が遠のき始めていた。

『ヤバイ……!博にバレちゃう……』
!?………」

博の私の名前を呼ぶ声が次第に小さくなっていった。



「あっ、!気がついた!?」

私が目を開けると、私を上から覗き込む博の顔があった。
そして、私は、ベッドの上へ寝かされていた。

「よかったー」
「私、倒れちゃったんだ……」
「そうだよ、俺の紅茶のおかわりを持ってきてくれようとして、
立ち上がったら、急に倒れちゃうんだもん。ビックリしたよー」

博は、心からホッとしていたような顔をしていた。

「ごめん、博……。私、博に風邪をひいてることがバレちゃいけないって思って、頑張って隠してたんだけど……」
「俺のほうこそ、ごめん。、相当無理してたんだろ?気づかなくて、ごめん……」
「私が悪いの!ごめんね」
「いや、俺だよ!」
「私だって!」
「俺が悪いんだよ!」
「「……」」

お互い一歩も譲らずに言い合ってるうちに、私たちは、思わず笑ってしまった。

「何やってんだか、俺たち」

目の前には、また博の笑顔が広がった。

「……ホントにごめんね。風邪のことを博に言うと、ゆっくり休んで風邪治してねとかって、
今日の約束を延期にされるんじゃないかって思って……」
……」
「でも、私、自分のことしか考えてなかった。
風邪ひいてる私なんかと逢ってたら、博に風邪をうつしちゃうのにね……」

私のおでこには、意識を失ってる間に、博が置いてくれた濡れタオルがあった。
博は、そのタオルを取り上げ、

「大丈夫だよ!俺、体丈夫だから!
でも、俺は、が俺のことをそういうふうに考えてくれたっていうほうが嬉しいよ」

と、にっこり微笑み、

「タオル、濡らしてくるね」

と、キッチンへ歩いていった。
私は、その博の優しさに思わず涙目になった。
しばらくして、博は、濯ぎ直した新しいタオルと、薬を私の元へ持ってきた。

、薬飲もうか」
「あ、うん」

博は、私の体を抱え起こしてくれた。
そして、私は、薬を飲みながら、ふと時計を見ると、時計の針は、もうすでにAM3時を回っていた。

「え!?もうこんな時間だったの!?博、明日も仕事でしょ!?家に帰らなくてもいいの!?」
「帰れるわけないでしょ、こんな状態のを残して」
「私はもう大丈夫だから、家帰って休んで!」
「大丈夫。今日一晩は、の看病するよ」

そんな博の優しさに、私は、また泣きそうになった。

「薬、ちゃんと飲んだ?じゃあ、温かくして寝ないと!」

私は、まるで子供のように、ベッドにまた寝かしつけられた。

「ねぇ、博……」
「ん?」
「博ってなんでそんなに優しいの?」

私は、涙を浮かべてる顔を見られたくなくて、布団にうずくまって、そんな疑問を博に投げかけてみた。

「それはね……ウルトラマンだから」
「何それぇ……」

布団を少し下げて見た博は、また笑っていた。
涙目の私に気づいたのか、博は、また私を子供のように、頭を撫でた。
その博の手のあたたかさに、また私は、涙がこぼれた。

「ありがとう……」

博には、聞こえないほどの小さな声で私は、もう一度うずくまった布団の中で呟いた。



カーテンから差し込む太陽の光で私は目覚めた。
博がくれた薬が効いたようで、風邪もすっかりよくなっていた。
はっと起きると、そこにはもう博の姿はなく、枕元に一枚のメモが残っていた。

へ。
 ごめん。仕事の時間になってしまったので、俺はもう行くね。
 が目覚めるまでいたかったけど、気持ちよさそうに眠っていたので、起こさないで行きます。
 仕事が終わったら、またすぐの部屋に帰ってくるから、それまで温かくして寝てること!
 あと、それと、昨日、渡しそびれちゃったけど…。
 メリークリスマス!”

メモが置いてあったそばに、キレイにラッピングされた小さな箱が置いてあった。

「何コレ?」

その箱の中を開けてみると、その中身は、以前私がかわいいと言って、欲しがっていた指輪だった。

「コレ……」

私があのとき、この指輪がかわいいって言ってたの、博覚えてたんだ。
私は、また胸がいっぱいになった。
そういえば、私ってば、博に迷惑をかけてばっかりで、お礼も言ってない。
だから、今日、博がまたここへ戻ってきたとき、
次こそは、心を込めて伝えよう。

“ありがとう”

そして、“博のことが大好きだよ”……って。


−−− E N D −−−

最後の言い訳っ。

書き終えてみたら、全然クリスマスに関係ないじゃんっ(笑)。
しかも、剛ちゃんの「今日は何の日?」に似がちだし。
ついにネタ切れかっ!?
今回の博さんは、“優しさ”がポイント。
そして、最後の博さんのメモは、もちろんあの弱々しい字で書き残したと思われます!(笑)
2002.12.21
* D r e a m e r  * B a c k  * H o m e *