愛してるが言いたくて


「そっか、わかった…」

そう、寂しそうに呟いたの声が俺の耳へと入ってきた。
仕事が延びて、との約束が守れなくなってしまったということを、
俺は電話でに伝えた。

「ごめん……」
「大丈夫だよ。仕事なんだから仕方ないよ」

やっぱり無理してるんだなって。
の声は微かに震えていたから。

「今度、絶対埋め合わせするから」
「わかった、楽しみにしてる。仕事頑張ってね」

俺の耳元からの声が消えた。
俺がこんな仕事をしていれば、スケジュールが変更されるなんてことはしょっちゅうで、
お互いにそれをわかっていて、俺たちはつきあい始めたのだけれど、
それが何度も続けば、気持ちのすれ違いだって生まれてきてしまう。
俺はきっとを不安にさせてる。

“逢いたい”

この4文字の言葉をに飛ばそうとしたけれど、少し迷って削除した。
こんなメール入れたって、余計にを寂しがらせるだけだ。

そう思った瞬間、メールの着信音が鳴った。
からだった。
まさか……“サヨナラ”の4文字なんじゃないかって、不安に襲われた。

“頑張れ”

この4文字だった。
どうすることもできないこの想いを胸に、俺は携帯電話を握り締めた。



「お疲れさまでしたー!」

今日の仕事がやっと終わった。
時計を見ると、午前0時。
日付、変わってるじゃねーか……。
俺はまだのことが気になっていた。

、もう寝ちゃったかな……?
俺はもう一度時計を見た。
たまには……。
お互いの明日(日付は変わってるから今日になるけど)のことなんて忘れてみてもいいんじゃないか……?
俺だって、朝から仕事が入っている。
いつもなら仕事を優先に考えてしまっている俺だけど、
たまには、少しくらい無理をしよう。

だって、俺はを愛しているから。

こんなこと恥ずかしくて口には出したことなんてないけど。
そう決めた途端、俺はの部屋へ向かっていた。
真っ暗な夜は、俺の気持ちをさらに落ち込ませるように、風が冷たかった。



もしかしたら、を起こしてしまうかもしれないという心配を抱え、俺はインターフォンを鳴らした。
1回押しても、反応がなかった。
起きていたとしても、さすがに深夜の訪問客は警戒させてしまっているのかもしれない。
俺はもう1回、丁寧にインターフォンを鳴らす。
すると、しばらくして、鍵を外す音が聞こえ、扉が少し開いた。
中から少々不安げな顔をしたが顔を出す。

……」
「昌行……どうしたの?」
「ごめん、こんな夜中に……」
「ううん。とりあえず上がって」

部屋の中に入って、灯りに照らし出されたの目が赤いということに気が付いた。

「寝てた?」
「ううん、なんだか眠れなくて」

違う、きっと泣いていたんだ。
俺はやっぱりのことを不安にさせていたんだ、そう思うと胸が痛かった。

「それよりどうしたの?昌行がこんな夜中に来るなんて珍しくない?」

は、ソファーにもなっているベッドへ腰を下ろしながら、表情を作って少し笑ってみせた。
俺もの隣へと腰を下ろす。

「……」
「どうしたの?昌行……?」

俺は何も言わずに、の体を自分に引き寄せた。

「いつも約束守れなくてごめん」
「昌行……」
「俺、きっとのこと不安にさせてる。本当にごめん」
「そんなに謝らないでよ。私は大丈夫だから」

そう言っているそばから、の目は少し潤んでいた。
俺は、そんなを優しく抱きしめた。

だけじゃなくて、俺だって辛いんだよ……」
「っ……」

あーあ、俺はもう完全にのこと泣かせてしまっている。
俺は一層優しく包み込んだ。

「なんか、こんなことこっ恥ずかしくて言えないけど……」
「何……?」
「俺はいつも……のこと…………」
「……あ。聞こえた」

俺の胸にいたが、そう言って俺を見上げた。

「え?」
「今、昌行、心の中で“愛してる”って言ったでしょ」
「……え?」
「聞こえちゃった」
「俺は日本人だからね、口に出してなんて言えねーよ」

俺たちは至近距離で笑い合った。
そして、が俺の胸でこう言った。

「私もだよ、昌行」
……」

潤んだ瞳で俺を見上げるに、俺はドキッとした。

「愛してる」

思わずこの言葉を口にしてしまったあと、俺は自分の顔が赤くなったことに気が付いた。



−−−E N D−−−

最後の言い訳っ。

終わり中途半端?(笑)
ま、このあとは一晩仲良く過ごしたってことにでもしておいて(笑)。
今回のお話は、某グループの歌からいただきました。
このタイトルが気に入ってね。
本当は、喧嘩したあとに…って歌詞らしいんだけど、喧嘩すると書いてるあたしが疲れるからさ(笑)、やめました。
2004.3.13


B a c k  H o m e