お隣さんちの健ちゃん
〜2度目の〜


 「はぁ〜…。もったいない…」

夏も終わりに近づいた夜、私は、今年買ったばっかりの浴衣を目の前に、
溜息を吐いた。

 「結局、1回も着なかったよ…」

このまま、来年の夏まで着られないのは、さすがにもったいないと思い、
私は、ちょっとだけ袖を通してみることにした。

 「よしっ。こんなもんかな」

浴衣に着替え終わったちょうどそのとき、いつものあの合図があった。
ベランダの窓に、消しゴムがあたる音がした。
お隣さんちの健ちゃんだ。

 「〜!」

隣の家から、私を呼ぶ声がする。

 「何?」

私は、浴衣のまま顔を出した。

 「今からさ〜、あっ……」

健ちゃんは、そう言いかけて、私を見たまま驚いていた。

 「な、何よ」
 「お前の浴衣姿……なかなかかーいいじゃん!」

そんなこと言われるなんて、全然思ってもいなかった。
どうせ、浴衣がかわいいだとか、馬子にも衣装だとか言われるんだって思ってた。
私は、自分の顔がだんだん赤くなっていくのがわかった。

 「け、健ちゃんっ、何か用事があったんじゃないの!?」
 「あ、そうそう。コレ!」

そう言って、健ちゃんが笑顔で差し出したモノとは、線香花火だった。

 「あっ、線香花火だ!」
 「そう。おふくろが買い物に行ったとき、もらってきたんだって。
  なぁ、これから公園行って、ふたりでやろうよ。
  もちょうど浴衣着てることだし!ねっ!」
 「う、うん…」

健ちゃんが柄にでもないこと(?)言うから、なんだか緊張してきちゃった……。
公園までの道のりを、私はずっとうつむき加減で歩いた。



 「こんなふうに花火すんの、俺久しぶりだよ〜」
 「私もだよ」
 「昔、夏になると、いつもと花火してたよね」

健ちゃんが昔話を切り出した。

 「あ〜、そうだよね〜」
 「夏祭りの帰りとかさっ。
  あ、そーいえばさ、って、ふたりで買ってもらったわたあめとか、
  俺のほうが多いとかってよくわめいてたよな!」
 「え?そうだっけ」
 「って、あの頃から食い意地が張ってたんだ」
 「うるさいよ」

そう言って、健ちゃんはニヤニヤして、花火を見つめている。
私は、そんな健ちゃんの顔を見つめていた。
大好きな人が隣にいる幸せ…。
こんなふとしたとき、改めてその幸せをかみしめる。



そんなひとときもあっという間。
線香花火もあと残り一本になってしまった。

 「これで終わり!」

健ちゃんが最後のその一本の線香花火に、火をつけてくれた。
私は、夏の終わりを惜しむかのように、線香花火を眺めていた。

 「

すると突然、健ちゃんに名前を呼ばれた。

 「ん?」

返事をして、健ちゃんのほうを向くと、健ちゃんは、いきなり私にキスをしてきた。
その瞬間、線香花火の先の部分が地面へ落ちる。

 「………」

私が、驚いて目を丸くさせていると、健ちゃんは微笑んだ。

 「2度目だね」

健ちゃんは、そう言った。
そう。私たちは、小さい頃、この公園でキスをしたことがあった。
ふたりで遊んでいたとき、いきなり健ちゃんがキスをしてきたのだ。
私は、そのことをはっきりと覚えていたけど、
まさか、健ちゃんも覚えているとは、思ってもみなかった。

 「あんときさぁ、家でテレビ見てるときに、テレビでキスシーンが流れてたんだよね。
  んで、俺が『これなぁに?』っておふくろに聞いたら、
  それは、『大好きな人にするものよ』って教えてくれたんだ。
  …だから、俺はあのときにキスした…」

いつの間にか、健ちゃんは真剣な表情に変わっている。

 「…だから、俺は今もにキスした」

私が、顔を真っ赤にして、言葉を出せずにいると、健ちゃんは微笑んで、

 「そろそろ帰ろっか!」

と言って、立ち上がって歩き始めた。


健ちゃんは、歩きながら手を後ろに差し伸べてくれた。
そして、私は、この温かい健ちゃんの手を握りしめて歩いた。


−−−E N D−−−

最後の言い訳っ。

秋も深まる頃だとゆうのに、こんな季節ハズレなお話でごめんなさいぃぃ。
しかも無理矢理ちゃんに浴衣着せちゃったし。
だって、健ちゃんにどーしても「かーいいじゃん!」て言わせたかったから!(笑)by FILM V6
ちなみに。
花火の後始末は、ちゃんとふたりともしてったよ!(笑)
健ちゃんがゴミをそのままにして帰るなんて、
そんなことするわけないじゃな〜い!!(笑)
2002.9.20


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